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hidebupanさんの天結いキャッスルマイスターの長文感想

ユーザー
hidebupan
ゲーム
天結いキャッスルマイスター
ブランド
エウシュリー
得点
83
参照数
805

一言コメント

なぜ人間族は神に抗い、ガイダルは復讐の化身となったのか

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

やってみる前と後だと評価が違うゲームでした

このゲームのテーマとして、神の作る世界とそれに対する抵抗を外すことはできないと思います
この物語の重要人物としてアヴァロやらフィアが上がってきますが、ガイダルもまた、一人の主軸となる人物となります。
なぜ彼は、ここまで復讐の化身となったのか?
残念ながらゲーム上では多くは語られてません。エウシュリー自体は縁を結ぶという素晴らしさを伝えたかった作品にしたのでしょう。それ自体はすごく伝わってきたし、良さを感じ取ることができた。
しかし、一時はガイダルとも縁を結ばせようと歩み寄りますが、結局ガイダルは裏切り、利用、目標遵守を優先させ、力で屈服させてしまいます。

この背景は、かつてパライアが地上を治めていた頃、人間族は神の作ったルールを強制され、自由も何もなく、苦行を強いられたような背景があったとあります。ガイダルがまだ若かった頃に、魔シキ封錬ノ匠という組織が神からの支配を逃れるために結成され、最終的にパライアを封じ込める装置を作り出し、人間族の勝利を治め、神のいない自由な世界を作り上げました。それで求めていたものが達成されたのか?疑問が残ります

パライアは現神の中でも非常に良心的な存在とそして語られています。ただそれは種族にとって良心的に見えたのであり、人間族視点からするといろいろと制限された環境でしょうから、不都合な場面もあったのかもしれません。

魔シキ封錬ノ匠は毒の蔓延る環境に、行きたくないのに無理やり行かされたという背景もガイダルの口から語られます。しかし、パライアがそのようなことを強いるような神には思えません。そこら編はどういった経緯で人間族が過酷な環境に置かれたのか、このゲームでは語られませんでした。

現代風に考えると、学校という強制教育機関に入れられ、社会という国を運営する奴隷という歯車を作るために量産される。会社という組織に属し、わずかな報酬とそれに見合わない労働や、思想の植え付けをさせられ、そういう生き方が普通の人生という洗脳に抗うために、学校や会社という”神”に抵抗する。そういったものを感じました。


ストーリーについては思ったよりも壮大な設定があり、意表をつかれました。フィアシアは存在せず、あくまで象徴として信仰させていた。それは世界が良くなるためだから仕方がない。武田信玄は存在せず、武田信玄の甲冑をかぶった部下が、相手に圧を与えるためだけに偽装し、存在していたという流れを思い出しました。

また、クードヴァンスが大司教という立場の上で、実の孫でありながらも、自分の与えられた使命のためならば、刃を向ける。己の意志を通したければ儂を倒してみよ、というふうにたちはだかり、しかし負けてもどこか清々しく、その後は敵に急襲された本陣を援軍という形で、自分の孫を助ける、というのは見事な演出でした。あっぱれ

総じて見ると、ストーリーの風呂敷の広げ方は良かったと思います。ただ主軸はあくまで縁を結ぶことの良さを伝えたかったという点。これは良い面もありますが、なぜそもそも良心的な現神に反抗しようとしたのか?ここをもっと掘り下げるべきだった。結果としてみるとガイダルはただの悪人としてしか演出できず、フィアの言う通り、怪しいという理由だけで悪人と決めつけるのはちょっと、というところ。最初から悪人なんておらず、環境が悪にさせるという考え方もあります。なぜガイダルは一族の思いを背負い、悪道を進み続け、狂気に落ちたのか、ここが記されていればもっと良い作品になった。



ゲームパートですが、見方によっては素材集めがめんどくさく、早く先に進みたい人にとっては、なかなか億劫なシステムだったと思います。ただ非常にやりこみ要素に優れており、各ユニットごと差別化がされてあり、ゲームバランスも良かったと思います。ただ終盤ステージの敵のHPの高さは難易度ノーマルでもかなりめんどくさかった。まあやり込めば楽ですよってことで、ゲームシステムは良かったと思います。

エウの良さってつくづく思うけど、やりこみ要素だなって思います。アリスソフトはゲーム性があるけど、近年あまりやりこみ要素がなかったので、そういう面ではエウの良さの一つだなと思いました。