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hidarumatさんのlove, VAMPIRE FLOWERSの長文感想

ユーザー
hidarumat
ゲーム
love, VAMPIRE FLOWERS
ブランド
COSMIC CUTE
得点
65
参照数
405

一言コメント

キャラクター設定や関係描写はいいのに、どうして……

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

同様にプレイした友人が評した「経血の匂いのする女性キャラクター」という言葉が頭を離れない。

同級生3人組が主人公について互いに牽制し合うシーンなど、
多くの作品ではあまり描写されない、ヒロイン同士での関係の部分についてマイナス評価をみるが、ここについては寧ろ評価点。
御浜 利枝についてはプレイ前は全くに近しく関心が無かったが、このシーンで内心の評価は大躍進した。
逆に、その手の描写の無い後輩2人の影が少し薄い。

キャラクターによっては主人公への執着に関して凄みのある描写もある。しかし病んでいるワケでは無い。
一般に、妬きもちが描かれても、対立、執着は相応に特殊な立ち位置のヒロインではないと描かれないことが多い。それをきちんと描き、ヒロインの内面描写(ここでは主人公との会話などで見せる外面と乖離のあるもの)についてもきっちりある点でこの作品は評価されるべきだ。

この作品を高評価できない点はその尺の短さもあるが、ヒロイン間の関係を途中まで良く描写していながら個別ではそれをおざなりにしてしまう点だ。メインライターが1人であることの優位点はキャラクターの関係や展開が矛盾する危険性を下げられることにあると考える。自分のルートで病が発覚する少女が別のルートでは元気なままというのは そのヒロインのルートの価値を下げるものだ。特にセンターヒロインでそれをやるのはどうかと思う。

宙ぶらりんとした自分の立ち位置について悩むクリスティナ・カミニスカが推しヒロインとなった。

主人公がその背景から解き放たれるエリザベート・シュナーベルのルートの残念さも少しだけ記しておきたい。番を求める衝動の深刻さについてあまりに共通、他ルートで適当に流したツケがここで回っている。自分にふさわしい相手を探す時期が来たというのがこの物語の導入なワケだが、他の4人のルートでそれについて葛藤する描写、正しい選択なのかの問いはほぼ無いのだ。他ヒロインルートを全て終わらせた上でこのルートに入ると「なんでコイツだけダメなん」という感情が拭い去れない。
吸血鬼同士だから種の繁栄視点から互いは選ばない、と説明はあるが、ユーザを納得させるにはその設定の説得力を十分に作品全体に鏤めるべきだった。

吸血鬼の長命や哲学についての設定が、ヒロインとの展開と少し乖離していた点については惜しく思う。