掛け合いの上手さはずば抜けてる。ギャグは一流のものを持ってる人。物語の収束の下手さはそういうものと期待しなければ会話と展開だけで十分楽しめる。衣笠さんを活かすも殺すも読み手の接し方次第であることを心掛けるように。
恋エピソードで恭一の過去に触れなかったことだが、これは恭一が過去を思い出す手掛かりを与えられながらもそれを選ばなかったことで、その道が閉ざされてしまうこともあるというエクスキューズを示したんだと思う。大河内からもらったデータを見ずに潰したこと、恋を抱かずに頭痛が強くなり続ければその先で記憶が戻る可能性があったにも関わらず恋を抱くことを選んだこと、この二点から恭一の過去（暁の護衛からレミニセンスに至るまでの謎）は作品上で明かされることはないという意味が示される。
考えようによってはこれは非常にポジティブなメッセージ。なぜなら過去を振り返らず今を生きよう、というテーマは多くの作品で提示される普遍的なもので、『暁の護衛』三部作の中でもテーマとして掲げられたルートはある。この暗喩とシリーズの歴史を理解できれば明かされない秘密に対してストレスを抱くのは仕方ないとしても怒りや過度な批判を持つことは少ないと思う。その点、個人的には非常に好意的に思ってる。今を生きるというテーマの視座から見ることが出来たならば、恭一の話に関しては納得してもらえるだろう。