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hi-saさんの赫炎のインガノック ~What a beautiful people~ Full voice ReBORNの長文感想

ユーザー
hi-sa
ゲーム
赫炎のインガノック ~What a beautiful people~ Full voice ReBORN
ブランド
Liar-soft(ビジネスパートナー)
得点
92
参照数
975

一言コメント

ネタバレなしです。 これからプレイされる方向け。

長文感想

 スチームパンクシリーズ初プレイ。

 詩的な文章と独特の言い回しが特徴的です。
すぐに馴染める人とそうでない人に分かれるかもしれません。
感覚的には、ノベルゲームをプレイしていると言うよりも
小説を読んでいる時のそれに近いでしょうか。

 序盤がややとっつきにくいと感じられる方もいらっしゃるでしょうが、
予め公式サイトの用語集に目を通した上で始めれば
そこまで問題はないかと。

 また、『心の声』パートをはじめとした心理描写に長けているのもこの作品の大きな特徴。
『心の声』パート以外でも本編のあらゆる場面において
人物の内心が人物ごとの一人称文で描かれており、特に中盤から終盤にかけてはその傾向が強く表れます。
対象となる人物がその心理的文の一部をCV付きで読んでいたのは非常に好感触でした。
リアリティがあります。
特にアティ役の野月まひるさんは一人称文と台詞の演じ分けが上手く、
感情の揺れなどがよく伝わって来ました。


 この物語の主人公を誰か1人決めろと言われれば、それはとても迷うところです。
勿論、登場時間が最も長いのはギー。
ではこの作品の主人公はギーなのか? いや、それは違うでしょう。

 上で述べたようにこの作品は半群像劇的なスタイルをとっています。
観る人によってはキーアが主人公かもしれないし、
自らの感情に揺れるアティが主人公かもしれない。
あるいは死を以って救済とするケルカンが主人公かもしれない。
つまりは、悲劇的な<復活>からの10年間を生きてきた人々
そのひとり一人がこの物語の主人公なのだと、僕は考えます。
『心の声』パートなどから、各々の登場人物の心理をじっくり推察しながら
読み進めてみるのも面白いかもしれません。


 世界観や設定などが多少複雑でありやや人を選ぶ作品ですが
最後までやれば、個人差はあれど何か感じるものがあると思います。
とは言っても、僕自身ライターさんが伝えたかったことの3割すら理解できてはいないでしょう。
(2周目をプレイすれば色々と見えてくる気がします)
自身の人生経験がまだまだ浅いため、狂人ランドルフの台詞を筆頭に分かりにくい部分も幾らかありましたが、それを差し引いても本当に素晴らしいゲームだったと感じます。
年を取ってからもう1度読んでみたいと思うような、そんな物語でした。