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heniさんのコドモノアソビの長文感想

ユーザー
heni
ゲーム
コドモノアソビ
ブランド
Lump of Sugar
得点
65
参照数
748

一言コメント

 7人の男女の推理と駆け引きが光るゲーム……ではなく普通の萌えゲー。でもセーラとの日常生活を求める人にはオススメしたいゲームです。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

 項目はあらすじ、システム、CG、Hシーン、BGM、シナリオ、まとめの順番で書いていきます。あらすじは、製品版か体験版をプレイされた方には周知のことしか書いてませんので飛ばしちゃってください。



【適当なあらすじ】
 何か選択を迫られる場面になると周囲の時間が止まり、頭の中の二択のどちらかを選ばないと元に戻らない「二択の呪い」を持つ主人公。日常のささやかなことでも発動する呪いにうんざりしている主人公の前に、この世界の住人ではないセーラが現れます。
 セーラによるとその呪いは7年前、主人公たちが行った儀式によって各々が恋心を代償に得た能力、「ロール」だと言います。セーラはその恋心を糧とする存在ですが、何故か儀式で最初に差し出された、主人公への恋心がセーラの中でくすぶり続けていました。それに耐え切れなくなったセーラはその恋心を元の持ち主に返すべくこの世界に舞い戻ってきました。ですが、主人公はセーラのことも儀式のことも覚えていません。
 それはともかく、恋心を返還する儀式を行えば契約がなかったことになり、ロールもなくなるとセーラは言います。それを知った主人公はセーラに協力することを決意します。ついでに、行くところのなかったセーラと同居することになりました。



【システム】
 システムは、共通パートの選択肢でヒロイン達の好感度を上げて、一番好感度の高いキャラのルートに突入するという、一般的なADVになっています。選択肢はそれほど多くありませんし、攻略は簡単な部類に入ります。ですがスキップが遅く、一つ前の選択肢へ戻るジャンプ機能が全く使えないので、セーブデータをこまめに取っておくことをお勧めします。

 ルートはセーラ、みちる、楪、佳津美の4つのみでルート突入後に分岐は一切ありません。ルートロックはなく、初回プレイ時からどのルートにも進むことが出来ます。
 なお、このゲームは3回目の儀式の終了後個別ルートに突入するわけですが、実際は2回目の儀式の後、誕生日イベント直前に誰と過ごすか、の時点でルートが確定します。この時点で1番好感度の高いヒロインが選ばれ、同列1位のヒロインが2人いる場合は選択肢が出ます。これからプレイされる方はこのタイミングに注目してみるといいかも知れません。

 このゲームでは主人公の設定上、選択肢は演出の一つとして使われています。普通のゲームだと画面の真ん中に選択肢が表示されますが、本作では画面いっぱいを使っています。最初はその派手な演出に結構驚きました。同時に、選択肢を選ぶ時にセーブ出来ない仕様にガッカリしましたが。



【CG】
 枚数はヒロイン4名に各22枚、共通で使われるCGが2枚の計90枚です。その他SD絵が12枚です。
 枚数は多いんですが、差分がやや少なく、状況と合ってないことが割とあるのが難点ですね。私が特に酷いと感じたのは、挿入してるはずなのにおらず、射精してるはずなのにしてない、というCG。しかもこれ、佳津美ルートの最後のHCGです。最後の最後で力尽きたんでしょうか。

 メインの4名はそれぞれ別の原画家さんが担当しており、それぞれ違った味わい、可愛さのある絵だと思います。絵柄が大分異なり統一感はないため、最初は違和感を覚えるかも知れませんが、プレイしているうちに慣れてきます。

 みちると佳津美はCGの出来に少々バラつきがあるのが気になりますね。みちるはHCGの体つき、佳津美は通常シーンの顔に結構な違和感があります。また、佳津美は立ち絵も不安定で、特に顔を真っ赤にする立ち絵では突如のっぺらぼうになるという非常に怖い立ち絵になってしまっています。
 主人公の顔は基本的に描かれていませんが、楪ルートのみバッチリ描かれているCGがあるので苦手な方は注意してください。



【Hシーン】
 全体的に前戯の尺が長めに設定されており、挿入後も佳津美以外は比較的長いです。テキストが特別エロいというわけではありませんが、キャラが気に入れば実用性はそれなりという感じでしょうか。
 ちなみに、全員にパイズリシーンがあります。「佳津美ロリだよ?マジであるの?」と思われるかも知れませんが、あります。
 Hシーンの回数はみちるが5回、セーラ、楪、佳津美は各4回です。それ以外のキャラには一切ありません。佳津美と理路のいわゆる百合なHシーンやそれに主人公を交えた3Pがあることを期待or不安に思っていた方もおられるかも知れませんが、ありません。
 みちるが最多ですが、最初の1回はフェラのみで、CGも2回目の前半と同じなので実質他キャラと同じ4回だと思っていいでしょう。
 BGVやHシーン中の効果音はありません。



【音楽】
 BGMは正直言って全く印象に残りません。良く言えば邪魔しない音楽といった感じでしょうか。その一方で主題歌やED曲は非常に素晴らしい出来となっています。OPムービーから漂う名作感は概ね主題歌のお陰と言っても過言ではないでしょう。まあ、歌詞が一見ゲーム内容に沿ってるように見えて微妙に合ってなかったりしますが。



【シナリオ】

・共通① 萌えゲーとして
 本作の共通パートは、儀式の合間にヒロインたちと交流を深めるのがメインと私は思っています。分量的には同居しているセーラが明らかに多く、他3名はイベントが中盤に集中しているイメージです。

 セーラはとにかく共同生活が楽しいキャラになっています。セーラはとにかく素直で、思ったことを全部口にし、表情がコロコロ変わるのが小動物的でとても可愛らしい。また、この世界の住人ではないセーラは、この世界のあらゆるものに対して新鮮なリアクションをしてくれます。そんなセーラとの共同生活が楽しくないわけがありません。また、部屋着は主人公のYシャツ一枚というのもポイント高いです。
 他三人についても、ただのギャルに見えて実際は非常に気遣いが出来て誰にも負けない優しさを持つみちる、のらりくらりしているだけのように見えてその奥に主人公にも通ずる葛藤と弱さを持つ楪、無表情で冷たいのではなく本当は単に甘えるのに不器用なだけの佳津美と、段々魅力的な面が見えてきて、どんどん好きになっていきます。この辺は非常に萌えゲーとして理想的だと思いますね。

 ただ、先述の通りセーラの出番が非常に多いので、セーラが合わない、という人には厳しいゲームとなると思います。セーラは男っぽい口調もあわせて結構アクの強いキャラですからね。なので、買おうか検討している人にはまず体験版をプレイされることをお勧めします。


・共通② 儀式について
 共通パートでは恋心を返還するための儀式が行われます。この儀式にはルールがあります。セーラも儀式の参加者も、最初に恋心を差し出したのが誰か覚えていません。そこで、多数決の投票を行い、得票の最も多かった者に恋心が返還されます。それがセーラを悩ませている恋心の主だったら儀式は終結、違ったら返還された者を除いたメンバーで再度投票、恋心の主が見つかるまでそれを続けていきます。
 さて、上の文章を見て思った方も多いと思いますが、「女性キャラを順番に皆で選んでいく」という手段が真っ先に思い浮かびます。しかし、何故か誰もそれを提案することなく駆け引きや推理が進んでいきます。そもそも、恋心の主さえ自分がそうであるとわからないのに駆け引きが成立するはずがなく、また恋心の主が判明するまで儀式は行われ続けるのですから返還の押し付け合いも無駄です。故に、作中では皆真面目に取り組んでいますがプレイヤー的には完全に茶番です。こういうのは期限なりペナルティなりがなければ迫真性が生まれないと思うんですけどね。
 また、儀式は個別ルートではストーリーに関わってきません。しかもとあるルートでは「もう儀式とかやらなくてよくね?」と当初の目的を全力でぶん投げていきます。
 そういうことなので、儀式はヒロイン達と仲良くなるためのきっかけくらいに思っておきましょう。高度な駆け引きや推理を期待するとガッカリします。ソースは私です。


・セーラ
 セーラルートは儀式の意図やセーラとウェルギィの正体、主人公や楪の持つロールの本質が明らかになるという点で、真ルート的な意味合いが強いルートになっています。

 個別ルートに入ると、セーラはとある理由で主人公の家を出ます。そうすると主人公は1人になるわけで、主人公も、そしてプレイヤーも何とも言えない寂しさに襲われます。セーラもまた、主人公に会いたくて身悶えるようになります。つまり、お互いに2人で生活していた喜びを再確認したわけです。
 後に2人は恋人として結ばれ、同居……というよりは同棲と言うべき生活が始まります。やってることはHする以外は共通と同じく、セーラが作ったご飯を食べたり、ゲームしたり、他愛もない話をしたりと言う感じなのですが、お互いの好きな気持ちがストレートに伝わってくるし、とても素直な感じで大変微笑ましいです。

 そういう意味で、セーラルートはセーラとの何気ない日常を大切にしていくルートだと言えましょう。デートなどの恋人らしいイベントはありませんが、その分日常が素晴らしいものとして描かれています。ヒロインとの日常生活が好きな人にオススメなルートです。また、H後のピロートークも力が入っています。

 他3ルートと比べてもかなり出来がよく、満足度が高いのですが、セーラルートでは致命的な欠点が一つ存在します。それはルート序、中盤での引き延ばしが激しいことです。
 本ルートではルート突入直後にメインヒロイン4人による主人公争奪戦が始まります。これが結構長いのですが、主人公とセーラがお互い好きな気持ちを確認し、セーラ以外のヒロイン3名が争奪戦を終わりにしようとすると、セーラが「納得してないのにそれでいいのか」と延長戦に持ち込んでいきます。「主人公を諦めきれるまでかかってこい」ということですね。何言ってるんでしょうね。
 「それは死体に鞭打つような行為かも知れないけど」と作中で言われますが、わかってるのならやめてください。セーラのこの主張に明確な意図があるものの、自己満足の域を出ておらず、また延長戦も結構長いのでダレます。セーラ含めヒロイン4人を同時に長期間出しつつもそれぞれを見事に差別化し、魅力的に描く手腕は評価せざるを得ませんが、その手腕を争奪戦短縮に使って欲しかったものです。
 

・みちる
 ルート序盤の、仲の良い幼馴染から好きな人へと変わる気持ちの変遷、お互いの気持ちのすり合わせは学生らしい甘酸っぱさに満ちていて、派手さはなく展開も早くはありませんが、好感の持てる流れでした。
ですがデートイベントの後半で、急に下着選びに主人公が参加させられたあたりから妙に展開が早くなり、ルート後半に至ってはHをしていた印象しかありません。また、みちるのキャラが他キャラと比べてかなり弱いことも終始気になりました。

 みちるは儀式参加者の中で唯一ロールの正体が明確に明かされず、ストーリーにも一切関わって来ません。基本的にロールは、自分の願いのために備わった能力と作中で言われており、他3ルートは何かしらの形でそれが反映されていたのに、みちるルートにはそれがありません。それ故、本作特有の設定が全く活かされない、普通の「幼馴染の恋」としてまとまってしまった感じがします。
 更に言うと、チャレンジャーという設定があるにもかかわらずそういう素振りはゲーム開始直後しか見せない、料理が得意だが他ヒロインと理路も主人公に料理を振る舞うため結果没個性化している、などキャラ立ちが怪しいものになってしまっています。言動も至って普通ですし、結果残ったのは、周りをとても気遣う人、という印象だけです。もちろんそれもみちるの魅力なのですが、それだけではちょっと……と。


・楪
 楪ルートは全ルートの中でも群を抜いて出来がよろしくありません。
 最大の問題は、キャラが全体的におかしいことです。みちるとセーラは、他のルートでは人の恋心に敏感でそれを尊重する性格です。ですが楪ルートでは、その2人、特にみちるが絶望的に空気を読めなくなっています。

 楪ルートではセーラルート同様に主人公争奪戦が勃発します。その際の構図が主人公は楪を追う、楪はそれを避ける、セーラとみちるは主人公の気を引こうとして付きまとう、と完全に固定されています。その中で、セーラとみちるはどう考えても楪狙いの主人公を邪魔しているようにしか見えず、共通パートや他ルートの2人の言動と比較すると「こういうことはしないだろう」と首を傾げてしまいます。少なくとも、嫌がってる主人公に無理やりキスしようとするキャラではないと思うんですが、ライターさんは何考えてたんでしょう。
 そもそも楪ルートでは、主人公が最初から楪を意識しており、争奪戦の結果が最初から見えています。また争奪戦中、ルートヒロインたる楪の出番は少なく、2人の関係の進展にはあまり関係してこず、展開もワンパターンなことからセーラとみちるの株とプレイヤーのモチベーションを落とすだけの、完全なる誰得展開となってしまっています。
 主人公もまた、楪がいつも身に着けているかんざしの送り主が自分かもしれないという電波な理由で楪に送り主が誰かをしつこく聞き、誘いを断られ続けても嫌われてはいないはずと思ってまた誘うという立派なストーカーぶりを見せつけてくれます。

 それ以外も楪が主人公と付き合う中で一番懸念してることがただの勘違いだったり、主要キャラ全員を無理やり喋らせようとして著しくテンポを悪化させている、世界の違うお嬢様と言われてる割に実家の凄さがあまり伝わってこないなど、マイナス要素が非常に多くなっています。

 共通等では本音を隠し続けていた楪が、見つめ合うだけで顔を真っ赤にするくらい素直にデレまくる姿は最高なんですけどね。それ以外は本当になにもないのが残念です。正直言って楪目当てで買うと結構ガッカリします。ソースは私です。
 ちなみに、楪の想いについてはセーラルートの方が丁寧に描かれています。


・佳津美
  佳津美ルートは、序、中盤は接し方がわからないなりに頑張って仲の良い兄妹になろうと模索し、絆を深め、その中でお互いに異性として惹かれあう、という展開です。

 佳津美は、不器用なりに全力で主人公に甘え、気を引こうとする姿がとても可愛いです。デートでも、佳津美は張り切ってデートプランを考えるものの完全に失敗し、しょぼくれてる所を主人公に手を引っ張ってもらう。こういうのは恋人でありつつ妹な感じを醸し出していて好感が持てます。
 後半になるとお互いに接し方がわかってきて、イチャイチャ度が更に増します。佳津美が作ったお弁当を食べるシーンのなでなで&あーんのコンボは至高の1シーンと言えるでしょう。

 妹であることを作中で何度も言う割に、付き合う上でそれを気にする素振りはなく、周囲も2人の告白や思いの丈を聞いてもそのことには触れないので、とにかくイチャイチャするルートなんだと思っていました。
 ですが後半になると、イチャイチャしてるところでモブが「兄妹なのに仲良すぎない?」と言ってるのを聞いて唐突に兄妹であることに悩むようになります。また、同時期にそれまで気にしてなかった楪とみちるまでもが兄妹で恋愛することが難しいという話をします。モブが言った直後に、まるで何かのスイッチが入ったかのように葛藤しだす姿は正直言ってギャグかと思いました。

 また、その解決方法が……ネタバレになるので言いませんが、本当に酷い。兄妹カップルの葛藤は世間からの逆風にも耐えんとする、2人の愛の結びつきや決意の強さを表すためのものだと考えているのですが、それをご都合主義な展開と度を越した利己的な思考で解決するのはあまりに無意味です。
 これに限らず、シリアス面での主人公と佳津美の考え方は自己中心的で印象が良くありません。周りの人に迷惑をかけても謝らないのがデフォルトです。

 余談ですが、佳津美は自身のルートでは普通に料理をしているのに対し、セーラルートでは料理が一切できないという設定の齟齬があります。複数ライターの弊害でしょうか。

・サブキャラ
サブキャラはあくまでサブキャラとして扱われており、割と空気です。女性キャラはヒロイン的な言動はせず、個別ルートではストーリー上で何の役割も担っていません。というのも、個別ルートでは基本的に主人公とヒロイン4名の間で話が進むため、サブキャラが入る余地がないのです。理路のみ佳津美ルートで多少目立ちますが、それくらいです。
 男性キャラの中で唯一立ち絵ありの篤郎は、更に空気です。駄菓子を配ってる印象しかありません。特にみちるルートでは序盤出てきた後、終盤まで一切出てこないという凄まじい空気ぶりを発揮しています。

 どのルートもヒロイン4名で回すのではなく、サブキャラも関わってくるようになってきたらよかったと思います。それぞれポテンシャルを感じるキャラだとは思うので残念ですね。
 ちなみに理路は共通中盤までの立ち回りで印象があまり良くない方もいらっしゃるかも知れませんが、すごく一生懸命だし、何気に空気は読めるので私は結構好きなキャラです。




【まとめ】
 どのヒロインも可愛いと思える瞬間は存在しますし、萌えゲーとして最低限の要素は押さえられています。ですがどの個別ルートも途中で急激に失速することや展開の雑さ、共通であった儀式や主人公の二択の呪いが個別ではほとんど無関係と言った、致命的ではないものの小さな欠点が積み重なった結果、個人的な評価はかなり落ちてしまいました。
 ですが、セーラとの日常の楽しさは紛れも無く本物であり、そういうものを求める人にとっては良作たりえるゲームになると思います。
 最後になりますが、こんな無駄に長い文を最後まで読んで下さった方がいらっしゃいましたら、ありがとうございます。少しでも参考にしていただけたら、または共感を得られたら私としては嬉しい限りです。