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henahenaさんの水平線まで何マイル? - Deep Blue Sky & Pure White Wings -の長文感想

ユーザー
henahena
ゲーム
水平線まで何マイル? - Deep Blue Sky & Pure White Wings -
ブランド
ABHAR
得点
75
参照数
1899

一言コメント

若者たちのライトモーターグライダーにかける熱い青春の日々――みたいなのを期待するとがっかりします。

長文感想

「大空を飛べ! 青春&純愛アドベンチャー」と紹介されていますが、青春も純愛も中途半端です。
ライトモーターグライダーの知識は作中でちょこちょこ紹介されていてプレイヤーが置いてけぼりになることはないのですが、実際の制作風景は圧倒的に描写不足で臨場感がありません。
青春というわりには「悩んでもがいて苦しんで解決」みたいなドラマ性に乏しく、さして苦労もなく機体を完成させコンテストに出場しているように見えます。
また、主人公の所属している宇宙科学会以外の団体の活動が全く取り上げられておらず、宇宙科学会の成功がご都合主義のようにも取れてしまいます。
ドラマ性を強くするためにも群像劇やドキュメンタリーの要素も含ませた上で作品を仕上げてみても良かったんではないかと。
恋愛という点でも主人公とヒロインの関係を劇的に変化させて、かつ、説得力のあるイベントがあるわけでもなく、成り行きで付き合い始めた印象が強いです。
個人的にはこういう形で自然に付き合い始めるのもありかと思いますが、上述したようにドラマ性を考慮に入れると評価が厳しくなってしまいます。


そして何より一番の問題は、空を飛んでいる描写がないこと。
空を飛ぶことの爽快感・怖さ・中毒性etc...というように、パイロットから見える情景・その時の心情などが全くないせいで、ライトモーターグライダーの本来の魅力である空を飛ぶことがいかに素晴らしいかが伝わってきません。
こういう作品をすると普通は「俺もライトモーターグライダーを始めてみたい」と多少思い始めるはずなんですが……。

雰囲気とキャラが良かったですしプレイ前に期待を全くしていなかったのでそれなりの点数を付けていますが、何じゃこりゃと怒る人たちの気持ちは分かります。