カルトをテーマにした作品と思いきや…性倒錯・暴力の見本市というべきか。
某教会が未だに世間を賑わす今日この頃、ふとclockupのセールを開催しているところを見て
そういや…と存在は知っていたがなかなか勇気を出せずプレイしてなかったこの作品をチョイス。
プレイ中は度々ぐえええとなってましたが一気に終えてしまった。
【シナリオ・テキスト】
シナリオはとにかく淡々と進んでいく印象が強かった。
悪役に大したカリスマ性もなく、あっさりお薬パワーでヒロインたちが陥落し、警察もマスメディアも機能してないわで細かい部分の整合性はややおざなりになっていた。
つまり怪しい自己啓発セミナーがただの舞台装置に過ぎず、そこを描いて欲しかった私はややガッカリ。
良いと思った点はザッピングによる視点の変更で、プレイしている我々が主人公=大智の分身ではなく
この悪徳を眺めているだけの聴衆の一人=悪趣味な傍観者であることを痛感させられる。
しかし中盤以降のシーンの過激さは過去にやってきたゲーム随一のものであり、良くも悪くもこの作中の最大の特徴となっているのは間違いない。
ようはシナリオがシーンのおまけになっている抜きゲー的な構造であるが、
この絶え間なく見せつけられる性暴力・倒錯と、善性を体現した主人公のシーンの間に挟まる葛藤を通じて、
我々が信じる道徳の欺瞞を嫌でも突き付けられる。この部分については唯一無二の作品ではないか。
グラフィックが規制で表現しきれない部分のテキストはとにかくえぐい。
いじめ、虐待シーンでは普通に気分悪くなったので自分があちら側に行ってないことを確認できたのは幸いだった。
その部分を差し引いても、真エンドがちょっと優しくされただけでヒロインが救われたような形になっているのが
残念で仕方ない!やはりこの作品いえども「真ヒロインと最後は結ばれる」という不文律に従ったのははわからんでもないが、入れるならもうちょっと納得いくような課程を描写すべきで、とってつけたようにしか見えない。
クラブ共同経営エンド(ここのCGの表情好き)のほうがよほどしっくりくる。そこまでの流れが完璧だっただけに非常に勿体無い。
【キャラクター】
各キャラクターごとに異なる性癖を詰め込んでいてある意味凄い。
いきなり普通なはずの女子高生がマゾに目覚めたり、このリアル寄りグラフィックで男の娘(?)が出てきたりと正気かよと思った。
中でも印象的なのは小西さんだろうか。エロゲのヒロインらしからぬ風貌であり、
中盤普通に退会してしまう(そうできた理由も察することができる)
そのことにちょっとほっとしてしまうプレイヤーに「やっぱり見た目の問題なんだろ?」と突き付けてくる
上手い役割のキャラクターだ。
【グラフィック】
実写取り込みの背景、リアルよりのキャラデザ、抑えめの色調(あと各ヒロインの身体があちこち黒ずんでくるよ!)が
等身大の少年少女が巻き込まれているリアリティを演出できていてとても良い。
一貫してエロシーンを綺麗なものとせず、視覚的暴力として描く(真エンド除く)ことはテーマに沿っているといえよう。
しかし肌の塗りだけがやたらテカテカなのはなぜなんだろうか?
ゴア表現が黒塗り多用で逆にマイルドだったのは大人の事情だろうけど。
【音楽・演出】
ムービーの映像と仰げば尊しをチョイスするセンスは最高。
それ以外の音楽は普通だったがそれよりも声優さんの演技凄い…これができるのはプロだわ。
【まとめ】
シナリオはやや期待外れながらも、視覚的にも聴覚的にも強烈な表現で私の心の中に爪痕を残した一本となった。
ただいくら綺麗事書いても心にベッタリした黒い感情が残ったので他人にはおすすめしない。
サド伯爵の『ソドム百二十日』の原本がフランスの国宝なんだし
この作品はもっと評価されるべきではないか?もっとも、内容の過激さはアレには及ばないだろうけど(暴論)
惜しむらくはスタッフコメントの記述や、プロモーション映像では無修正だったところが
本編では黒塗りになっていたことから表現規制で苦労した影響があったであろうことか。
元々のプロットではゴアマシマシだったのかな?ちょっと気になる。いくら規制しても世界で起きている残虐行為がなくなるわけないのにね。