萌えのツボも抑えてないし考察げーとしてもつまらん、というのが第一印象でしたが...
点数はプレイ直後の印象でつけています。
萌えげーとしてはつまらない
哲学書としては薄っぺらい(自分の理解が足りていない可能性あり)
科学モノとしては穴がある
発売前から人を選ぶ作品だとは分かっていましたが、自分が選ばれなかったのは予想外でした。
プレイ時間は共通パートが5時間程度、結衣、琴子、柚、ギズモが1時間程度、式子が3時間程度、全部で12時間程度でした。
以下勢い半分です。表現が本文と一致してない場合あり。後から間違っていましたごめんなさいする可能性も大いにあり。
式子,結衣,琴子はあらかじめ設計された存在でした。
式子:有機的。変化を肯定することで永遠を得る
結衣:無機的。変化を否定することで永遠を得る
琴子:どちらでもない量子的存在
式子
Wish: Don't end
Ideal symbol: Eternity
式子ルートは変化し続ける永遠、終わりのない永続性を手に入れるお話です。家族という集合は死の概念すら内包し、時間や物質をも超越した存在となります。式子ルートは他のシナリオの3倍程度のボリュームがあり、本来ならば対になっているであろう結衣シナリオとのインバランスが少し樹になりました。
結衣
Wish: Don't break
Ideal symbol: Eternal
エントロピーが0の世界、そこで不変の永遠、決して壊れることのないモノとなるお話です。式子ルートの永遠が観念的であったのに対し、結衣ルートの永遠は物理学的に定義されるものです。
しかし残念ながら、考証が甘いと思われます。一例ですが
・一つの世界がエネルギーを得たら、他の世界がその分のエネルギーを負担しなければならない
つまり世界同士のエネルギーの移動が可能であり、多世界全体でのエネルギー保存則が成り立つということです。
・マクスウェルの悪魔が低温の分子を世界の中に残し、高温の分子を外の世界へ、より分ける。すると世界のエネルギーが減少するが、エネルギー保存則により失われたエントロピーを補う為に情報の散逸が行われる
エネルギー保存則は多世界間で成り立つはずでした。世界間でエネルギーのやり取りがなされているのにも関わらず、一つの世界についてエネルギー保存則を適応するのはおかしいでしょう。
琴子
Wish: in qualia
Ideal symbol: Sense
琴子ルートでは、人間という存在は物質的に縛られているのではなく、あくまで記憶や感覚に依存するものである、という結論に至ります。
量子的存在とは、一義には生きている状態と死んでいる状態が重ね合わさった存在ということでしょう。これは元々病弱であった琴子に対して主人公たち家族が不確かな見方をしていたこと、そして発生した歪みが過去に対しても影響を及ぼしたこと、によって生じたと考えられます。琴子の存在は量子的であり、歪みが解消されると、いくつかの世界には存在し続けますが、他の世界では消滅してしまいます。
以上の3人に対し、ギズモと柚はイレギュラーな存在でした。
柚
Ideal symbol: Vagueness
式子・結衣ルートが永遠の、完成された究極の家族の形を描く物語ならば、柚ルートは自然な、不確かな家族を描く物語です。家族といっても所詮は他人、互いが完全に理解しあうことはできません。時に迷ったり、互いを傷つけてしまうことになるかもしれません。けれども、だからこそ互いを理解しあう過程が家族という繋がりをつくり、大きな喜びを生むこともあるでしょう。
物語の序盤において柚は、主人公をあやふやで滅茶苦茶な七枷家から確かな現実世界へと引き戻そうとします。それはある意味で”曖昧さ”から最も遠い立ち居振る舞いでした。
しかしその過程で、なぜ出鱈目な七枷家が生まれてしまったのか、ということを考えた柚は曖昧さを肯定する家族の形を目指すようになります。
柚は世界の修復機能により呼び寄せられたのかもしれない、という描写からも読み取れるように、柚は外の世界の象徴であり、歪められた世界の対極に配置されています。エンディングでは夢すなわち歪んだ世界との決別、現実に正面から向かってゆく主人公と柚が描かれます。
ギズモ
ゲーム本編における主人公の世界(世界0)、この世界では1月1日の午前0時に巨大な質量が出現します。その影響で客観的に(世界の外側から)観測すると、世界0は消滅します。しかし主観的には1月1日の午前0時に向かって永遠に引き伸ばされた時の中に留まっています。
ギズモルートの終盤に突如出現するのが世界0の隣の世界(世界N)です。世界Nはギズモの観ている世界です。ギズモの観ている世界は、主人公が拾ってきた猫に言葉を語り続けたことによって創られた世界です。世界Nは世界0のギズモが主人公の観測によって人間となった瞬間に生まれました。ですので世界Nの主人公は世界誕生の直前までの世界0の主人公の記憶をそのまま引き継いでいます。世界Nに登場するギズモはギズモであってギズモではありません。世界Nの神たるギズモが世界N内部に現出している状態です。ですので、このギズモは猫語ではなく人語を雄弁に語ります。しかしこの神であるギズモは新年を迎えることが出来ません。なぜならば世界の観測者たるギズモが属している世界0が消滅してしまうからです。
「もしよかったら、いつものように撫でてください」
「この『歪み』が終わる、あと少しの間だけ」
てっぺんに大きな流れ星が光ります。この描写は、キリストの誕生を示唆するものであり
そして新年を迎える瞬間、世界Nの存在が確定し(生まれ)、歪みは消滅します。世界0のギズモは確率として霧散し、夜空の、猫耳メイドのギズモが別の存在となって確定した、つまり生まれ変わった事を意味しています。もちろんそれはエピローグに登場する彼女です。この時の因果関係は過去に遡って影響を与えて構いません。ですので猫として3年しか生きていなかったギズモが、より長い時を生きている少女として生まれ変わることに問題はありません。
そして視点は再び世界0に戻ります。世界0は1月1日を迎えることは決してありませんが、1月1日以降の外の世界を観測することはできるのです。新しい時を歩んでゆく確定後の世界と時間軸上に取り残された世界。現実と夢。二つの世界は決別し、それぞれの物語は続いてゆきます。ゲーム開始時の世界と歪められた世界の両方で主人公が家族の形を見つけるのはギズモルートだけです。
プレイ直後には、このルートにおける問題は何故世界0において巨大質量が出現するのかが全く語られていないことであると思っていました。世界0が消滅する必然性や合理性が感じられなければ、このエンディングは茶番にしか感じられません。
しかし後から思い返してみると、巨大質量とはギズモが生み出した新しい世界だったのではないかと解釈することが出来ます。基軸となる世界で巨大質量が出現するのはギズモが人となった世界のみです。そしてタイミングもギズモが人となった時機と一致します。ちなみに他に巨大質量の話が出てくるのは世界間でエネルギーのやり取りをしている結衣ルートです。
なぜ琴子ルートが最終ルートなのか
メインヒロインはギズモであると公式サイトで明言されているのにもかかわらず、なぜ琴子が最終ルートなのでしょうか。琴子ルートが世界の謎について最も多く言及しているシナリオであるから、という事情は当然あるでしょう。しかしながら最大の要因は、琴子ルートのエピローグで最後に登場する主人公が実験を行った研究者の電卓が存在している世界の主人公だからではないでしょうか。エピローグに於いて主人公は実験の結果が過去に影響を及ぼし、日記という形で歪め重ね合わせられた世界の物語を俯瞰している主人公。彼が存在しうる世界は全てを俯瞰できる場所、実験の行われた”現実世界”ではないでしょうか。ならば最終ルートであることは必然と言えるでしょう。そして最後に登場するギズモは歪んだ世界の象徴です。ギズモが主人公の前に現れることによって琴子ルートのイデオロギーが目の前で形となり、物語は幕を閉じます。