良作要素の塊であり、完成された一品
・シナリオ
プレイ時間は25~30時間ほど。
いたって普通のSF(すこしふしぎな)学園モノと言うべき内容……ではあるが、設定もストーリーも良く練られており飽きない。
伏線の使い方やミスリードの用い方の巧みさは、学園モノとして高いレベルにあると思う。
ストーリー重視のシリアスな内容ながら、コメディー性も萌えもきっちり意識され、全てが高いバランスでまとまっている。
キャラの性格や振る舞いもしっかりシナリオに絡めており、設定の無駄は非常に少ないと思う。
構成としてはKeyの作品群を思わせる、王道の泣きゲー的な部分を持つが、感動させるための流れは、ある意味Key的なものを否定しているように感じたり。
主題は「家族になるために必要なこと」もしくは「約束の先にある絆」といったものだろうか。全ての個別ルートでテーマが貫かれているのは、見ていて気持ちが良い。
ほとんどの攻略ヒロインに対して家族であるキャラ、そして新しく家族になろうとするキャラがいるという、登場人物の使い方も上手い。
衣鈴に対しての鈴葉、そして千波と主人公。こさめに対するこもも、そして主人公。などなど。家族を表現しようとする熱意を感じる。
衣鈴ルート、隠しヒロインルートは泣きゲーとしても十分な性能があるかと。
キャラには主人公をはじめ癖のある性格をした人物が多いので、それが欠点にもなりえるとは思う。
特に千波は人によって非常に評価の分かれそうなキャラ。この娘をウザいと思うかウザ可愛いと思うかで、大きく評価が変わりそう。
個人的にはメアと、隠しヒロイン、千波の三人の破壊力は素晴らしいものだったと思う。
特に「めっ!」は萌えながら笑った。
また、ルート制限があるので、好きなキャラを真っ先に攻略したいという人には欠点だと思う。ただ、ルート制限はストーリー上では上手く機能しており一長一短。
テキストは重さと軽さの緩急を上手くつけた、読みやすいものとなっており、ギャグも繰り返しネタが多いが、面白く感じた。
ギャグは好みがあると思うので、合うかどうか体験版で確認することを勧める。
エロシーンは多くないのでそこは減点要素。
・絵
一枚絵の非常に高い完成度はこのゲームの一番の魅力だと思う。
ズーム機能で最大に拡大しても、隙の出ない塗りの出来は特に素晴らしい。
デザインにそれほどお魅力を感じなかった千波でも、完成度の高さで可愛く見える立ち絵であり、絵師の魅力による部分の非常に多いゲームだと感じた。
特に夜に関する一枚絵は塗りに迫力があり印象に残るものだったと思う。「星空のメモリア」と言うタイトルから想起されるものを象徴しているようでもある。
男性陣の作画はヒロイン勢の完成度に比べたら随分劣るが、違和感を覚えるほどではないので、優先順位上仕方のないものだと思う。
背景絵は普通といったところだろうか、無難だが必要十分ではあると思う。
演出による絵の見せ方が上手いので、こちらもプラスポイント。
・音楽
OPテーマの完成度は素晴らしい。イントロとアウトロがプリマ☆ステラのテーマに似てるように感じた。EDテーマは二つとも目新しさはないが好感の持てる曲。
BGM総数はこの手のエロゲにしてはかなり数が多く、雰囲気に合った印象の良いものである。BGMの音量差があるように感じるのは欠点な気がする。
・システム
戯画システムに似た、非常に充実したシステムではあるが、環境によっては不具合が起きる部分もある模様。
CGを拡大して見ることの出来るシステムはあまり見ないものだが、かなり嬉しい。
選択肢ごとのスキップ機能が実装されてはいるようなのだが、機能していないのが残念。
・演出
間を意識した演出も所々に見られたり、一枚絵や立ち絵の見せ方も注力されており、非常に上質だと思う。雰囲気作りに一役買っているのは間違いない。
絵、シナリオ、萌え、音楽、ボイス、システム、全てのバランスが非常に高い位置でとれており、エロ以外の不満は少ない内容だと思う。
シナリオの好みが合えば、まず間違いなく良作以上と捉えていいと思う。
良くも悪くも癖のあるキャラとシナリオではあるので、体験版のプレイは勧める。
無駄も少なく、非常によく作りこまれた内容であり、自分は名作と捉えても良い完成度だと感じた。
定番の学園モノが好きであれば、一度は手にとってほしい。
人によってはかなり心に残る、テーマの暖かいゲームだと思う。