その他枠。『かにしの』が琴線に触れたので遡ってみました。断片的に散りばめられた情報が物語に深みを与える構造が分校ルートと共通だと思いました。わかばと穂波はなかなか丁寧に描かれていると思います。が、穂波の同類である僕としては、主人公の性格が耐え難くて…あと、ヘンリー3世は一体何者!?以下、わかばと穂波に関する追記(ネタバレ)
わかば
(ゆのはな町の)外の世界を無意識的に排除していた姿と
外の世界を受け入れた後の姿の対比が
良い感じに描写されていると思います。
穂波。
schizotypalの特徴が巧みに描かれています。
(回りくどい言い回し、奇抜な美的センス、など)
特筆すべきは、『下位文化的規範に合わない奇異な信念』が
(その成立過程も含めて)丁寧に描写されている点。秀逸です。
↑『死』にまつわるものに対する関心、忘れ去られたものは『死』んでしまうという信念、
それらが、亡き父親と関連付けて描写されています。
これほど的を射ていて、かつ簡潔なものは、専門書にもそうは無いと思います。
また、schizoidの性質も併せ持っており
『そこに存在しないもの』を常に追い求める傾向が良く描かれています。
(純血schizoidの描写としては『かにしの』の殿子に劣ると思いますが。)
終盤、父親との関係にもう一歩踏み込んで描写されていれば、
さらに評価が上がったのですが…
ちなみに、最大の不満点は、『神』と『人』との交わり、そして
『神』であるゆのはの哀愁と苦悩の描写が中途半端に思える点です。
言いたいことを、敢えて皆まで言わないのは悪いことでは無いのですが、
にしても、前振りがあっさりしすぎではないかと。