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h510さんの紅月ゆれる恋あかりの長文感想

ユーザー
h510
ゲーム
紅月ゆれる恋あかり
ブランド
CRYSTALiA
得点
78
参照数
371

一言コメント

熱い友情&部活モノ。各々の戦う理由が丁寧に描かれており、そんな彼女たちが意地とプライドを賭けて刀を振るう姿は胸を打つ。過去作を知っていると盛り上がる仕込みもあり"KATANA"シリーズの集大成として会心の出来。一本道については良い面と悪い面の両方あり。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

本作は過去作で描かれていた[和風ファンタジー]要素をほぼ除外し
[部活&バトルモノ]を前面に押し出してきたが、個人的にはこの判断は正しいと思う。
過去作をプレイしていて一番面白いと思ったのはやはり部活要素だったので。
(もっと詳しく言えばめくいろの椿&シア√がお気に入り)

ちなみに本作の特徴である一本道についてだが、
良い面もあれば悪い面もあり・・・といった印象。

良い面としては、やはり本筋のストーリーを長尺で丁寧に描くことができたこと。
各キャラのバックグラウンドをしっかりと描いていたので、みんなに感情移入できたし
そんな彼女たちが意地とプライドを賭けて戦う姿はめちゃくちゃ熱いし心に響くものがあった。
またきちんと負けを描いていたのもとてもよかった。
今回、梨々夢が予選敗退し旭も本戦で敗北し悔しがる姿がしっかりと描かれていた。
必死に頑張ってても結果が出ず、時には勝者や周りから侮辱的な言葉を投げかけられる。
残酷だが、これも部活モノや勝負事の魅力の一つ。
そしてこれは一本道だからこそその重さや残酷さが伝わるものだと思う。
もし√分岐があって、梨々夢と旭がそれぞれの√で刀仕禰宜になってたら正直白けていたと思う。

悪い面としては、まず中盤やや中だるみした感はあった。
生徒全員が揃ってから予選が始まるまでの間はやや退屈と
感じてしまう部分があったというのが正直なところ。
後はやはり恋愛面。
通常の作品だと個別√に入ってから主人公がヒロインを好きになる過程が描かれる。
だが本作は本編後、個別√を選択すると主人公はヒロインへの恋心を自覚しており
さくっと即恋人同士になるので主人公がヒロインを好きになったことへの説得力がない。
なんか「エロゲだから無理やりくっつけさせましたよ」感というか、
「制作の都合で恋人同士になりましたよ」的な空気を感じてしまう。
しかもメイン4人だけでなくサブ3人にも手を出しているので余計にそう感じる。

またキャラも一部除いてみな魅力的に思えた。
一番のお気に入りは旭。
主人公にゾッコンでメンヘラ一歩手前なくらいだけど、
強くなりたい・刀仕禰宜になりたいという思いは本物で
影で努力する姿も、園美に啖呵切るところも、
勝つために必死に戦う姿もとても美しく魅力的に見えた。
次点は紅葉。
普段は朱雀院の仮面を被っているけど実はグータラで、
けど朱雀院を背負うことをからは決して逃げず
刃道に全てを賭けて戦う姿は胸を打つ。
こういったギャップや二面性が本作ヒロインの魅力だと思う。
ただ梨々夢は正直あまり好印象を抱けなかった。
嫌いまではいかないけどタダのワガママ娘の粋を出なかったなと。
後、園美は単純に不快。こいつはただ逆恨みしてるだけ。
敗者に対する敬意すらないとか最悪。
まぁ悪役だからそれでいいのかもしれないけど...。
ヴィクトリアと雫はともかく、園美と(オマケとはいえ)
恋人になる√はいらなかった。不快になるだけ。

総評だが、本作の特徴である一本道はデメリットもあるが
メリットも多かったので個人的には正解だと思うし英断だと思ってる。
"KATANA"シリーズの魅力である戦うヒロインを存分に描き切った、
本シリーズの集大成として会心の出来だと思う。