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h510さんの真かまいたちの夜 11人目の訪問者の長文感想

ユーザー
h510
ゲーム
真かまいたちの夜 11人目の訪問者
ブランド
スパイク・チュンソフト
得点
67
参照数
70

一言コメント

シナリオのクオリティが低い。全然面白くないというわけではないが相応の期待とお金をかけてまでプレイする作品ではない。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

全編通してシナリオのクオリティが低い。

まずミステリー編について。
最大の不満点は「まず発生しない出来事が複数件発生すること」。
例を挙げると以下の通り。

・雪乃が「自分が従業員だ」と言い出せない
・雪乃が食堂で気を失う
・神林が注射器タイプの鎮静剤を所持している
・医者でもない神林が雪乃に注射をする
・サングラスとマスクをつけた男(黒井)がペンションに宿泊しにくる

上で上げた事例は普通に生活していたらまず身近で起こることはない。
もちろん"絶対に発生しない出来事"ではないので
一つだけなら"たまたま珍しい場面に遭遇した"で済ませられる。
ただそんな出来事が複数回発生したら「いや流石におかしいでしょ」って普通に思う。
何かの偶然が犯人にとって有利(または不利)に働くという仕掛けはあってもいいが
複数の偶然やたまたまがほぼ全て犯人にとって有利に働くというのはただのご都合主義でしかない。
なんか"ライターが描きたい話の流れにするため無理やりキャラや話を動かしてる"感が伝わってきてしまう。
例えば雪乃が気絶したのはそうしないと犯人がすぐ分かってしまうから。
神林が注射したのは雪乃を目覚めさせてしまうと犯人が分かってしまうから。
黒井があの恰好なのはプレイヤーをミスリードさせたかったから。
そういった制作陣の意図がシナリオに出てしまっている。
ただそれでもアッと驚くトリックや絶望的な恐怖を描けているならまだ許せる。
だが本エピソードはそれもできていない。
トリック的なモノは一切使われておらず、犯人はただ衝動的に犯罪を犯し
必死にオーナーのふりをしてるだけ。

後はシリアス路線のはずのシナリオが無意味なギャグのせいで台無しになっている。
例えばスパイ編。
・ガラスのひっかく音が苦手な凄腕スパイ
・「兄は夏が好きだから」という理由で兄が戦っている部屋に火を放つヒロイン
一応真面目な対決シーンのはずなのに何をやっているんだと。
更にギャグとまではいかないが
・解放された人質がいる場所で自身や組織のことをペラペラ話すヒロイン
・身バレのリスクを冒し中学生時代のあだ名をコードネームにするスパイ
等々、シリアル路線とは思えないユルユルな描写も話の知的レベルを下げている。

だいぶボロクソな評価をしてしまったが全く楽しめないというわけではない。
もし本作がSIMPLE2000あたりで発売していれば「まぁ暇つぶしとしては楽しめたかな」
程度の評価にはなっていた。
ただ名作である『かまいたちの夜』の名前を冠している以上、
厳しい評価になってしまうのは仕方ない。