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gyuunyu280さんのサクラノ詩 -櫻の森の上を舞う-の長文感想

ユーザー
gyuunyu280
ゲーム
サクラノ詩 -櫻の森の上を舞う-
ブランド
得点
100
参照数
208

一言コメント

人の生というものは快楽と苦痛の連続によって織りなされる連続性を伴ったドラマである

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

人の一生というものは何から何までもが繋がっているものなんだと痛感させられた。
言うまでもなく、本編各所での伏線回収は鮮やかで素晴らしかった。
だが、この作品における「全ての物事が繋がっている」はそれだけにとどまらず、
何かを読み手に伝えようとする強い言伝を、確かに感じた。

例えば「悲嘆があるからこそ生まれる悦楽」のように、人生における全ての事象には意味があり、
そして連続性を持っている。人は決して1人で生きていくことはできない。
人は何かに魅入られるからこそ、アクションを起こす。
その結果として歩みを起こす事が出来る。その歩みの先に成果が生まれる。

その成果に魅せられた別の誰かがまた違う一歩を踏み出す。
そして成果をあげて、多くの人を魅了する。人生というものはこれの連続である。
誰かが行動を起こすからこそ、違う誰かの人生に影響を与えるのだ。

決して歩みを止めない人は強い。立ち止まることなく歩み続けるということは、
歩き続けた分の時間だけ、多くの人を惹きつける場面の多さに繋がるからだ。
人の人生は複雑だ。楽しくきらきらした瞬間があれば、
時には苦しさに押しつぶされそうになり足掻き続ける一瞬も訪れるだろう。

きらきらした瞬間で輝いている人は言うまでもなく、多くの人に影響を与える。
だが、そういう眩しい人にも時として壁にぶつかり苦悩する瞬間は来る。
そして、その苦悩も第三者を魅了する材料となり得るのだ。
人は苦悩にぶつかった際に悩み、現状から抜け出そうとするだろう。そこにもドラマが発生する。

そして、そのドラマを感じ取り、惹きつけられる者も現れるのだ。
惹きつけられた結果、苦悩に悩む人間に自ら手を差し伸べる人も出てくるかもしれない。
その人が差し伸べた手がきっかけで、悩み苦しむ人を現状から救い出すことも出来るだろう。
こういう瞬間に発生するものが人と人を繋ぐ絆だ。

差し伸べられた手により陰鬱なシーンをひっくり返し、
苦悩から抜け出した者はさらに強い一歩を踏み出す。
やがては表舞台に返り咲き、これまでよりも多くの人々に感動を与えるかもしれない。
だからこそ、苦しい場面に立たされても現状から抜け出そうと、
決して歩みを止めない人の生き様は強く眩しい。

草薙直哉という一人のヒーローの半生、見届けてほしい。