バトルものがやりたくてこの作品が気になる人は悪いことは言わないからこれをやらずにChuSinguraをやって欲しい。
インレなので歴史の勉強パート、キャラクター同士の掛け合いは贔屓目抜きに面白い。
道中、様々なフラストレーションが溜まったが、
走り抜けてみれば最終決戦後の清々しい終わり方は好みだった。
良い点はあるが、それ以上に駄目な点が多いので、良い作品とは思えなかった。
以下、気になった部分を列挙していきます。
・今までのインレはあくまで史実には踏み込まないで「こういうことがあったかも」というif、
史実で語られ偉人たちが亡き者とされた後のパラレル展開で話を進めてきたにも関わらず、
今作は史実の義経の出自にまで改変を加え始めて呆れてしまった。
・このブランドの処女作であるChusinguraのラストでも、
”史実に介入してトンデモ展開からのトンデモバトルを繰り広げる”ファンタジー路線な
話が披露されたせいで件の5章の扱いに関しては賛否両論な意見が飛び交い物議を醸しだしていました。
そんな中でも、自分はChusinguraの5章に関してはこじつけが強く感じられるものの、肯定派でした。
そんな自分でも今作の3章でのファンタジー展開はダメでした。
「史実でも物の怪が現れていて、義経は物の怪討伐の為に奥州に向かった……??????????」
3章中盤あたりで、史実上の義経も物の怪と化した鬼一を封じ込めて水脈を
見守る役目に就いていたって話が語られ出してから
ずっと頭が痛いのに、メジャーな義経の史実を否定して、
「壇ノ浦の戦い以降は後世の人による創作だったんじゃないか」なんて言葉が
飛んできた時にはもう読むのを投げ出したくなりました。
それ以降は登場人物たちが「史実は違っていた、こういう可能性もあったんじゃ」と
討論して語り合っているのではなく、ライターがひたすら
「ぼくがかんがえたさいきょうのみなものとよしつね」
像を展開しているようにしか見えなくて辛かったです。
ここまでの話を読むと誤解されそうですが、自分としては物語を読む以上、
if展開を否定するつもりは全くないし、
むしろ斬新な切り口で歴史にメスを入れて新しい話を生み出した
Chusinguraの5章なんかは「ありえねー」と思わされながらもちゃんと燃える展開で、
話もスッキリ終わったので自分は評価しています。
そんな自分を以てしても、このGIKEIの3章の展開だけは受け入れられなかったです。
これより以下はこの作品の駄目な部分と良い部分です。
~駄目だった点~
・冒頭で紫都香が、会話が展開されるたびに突っ込んできて、
不要極まりない薀蓄を語り出して非常にテンポが悪い点。
(紫都香は歴女という設定があるため、平安時代に飛べて喜んでいるという
描写を入れるための演出だったのかもしれませんが、やりすぎです…。)
・1章で世志常一行が平泉に入るまでひたすらつまらない展開が続く点。
・インレ最大の持ち味であるはずの熱く燃え滾るバトル展開が全く燃えない点。
・道中、フラストレーションが溜まりまくる点。
(義経の史実をなぞっているから仕方ない点ではあるが、ひたすら我慢して逃亡生活を続けるテキストを
読まされるのが続くせいで、煮え湯を飲まされる思いをしていた義経一行と同様に
プレイヤーにもフラストレーションが溜まって非常に楽しくないです。)
・面白い2章すらも最後に要らない演出を入れて台無しにしている点。
(自分は落人村に行き着いて帝たちと平和な日々を過ごす2章は好きです。物の怪たちが出てくるまでは。)
物の怪たちの登場は2章エンディング後に、
「北海道に渡った世志常たちの下に、死んだはずの継信が現れて世志常たちを襲ってきた!?」
みたいな感じの演出をサラっと入れて、3章に続く!みたいな感じで引きを入れて話の展開できたでしょ。
Chusinguraでは出来ていた、「平和が訪れたと思いきや、判明した新事実があり~→次の章に続く!」
この一連の引き、何故これができなくなってしまったのでしょうか。
この引きがあったから、次の章も気になって読み続けられるという効果が感じられた構成だったのに、
今作で引きの書き方下手くそになっていたのが非常に残念です。というか引きすら入ってない。
「何で普通に面白かった2章の最後に要らん所付け足して2章の完成度まで落とすんですか?」
声を大にしてこう言いたいです。
・物の怪たちが弱い点。
(当初は圧倒的な戦力を持って平泉、鎌倉を制圧した物の怪たちが、
いくら伝説上で彼らを討伐した武器相手だからって、
一瞬で倒されてしまうのは如何なものかと思いました。)
・ラスボスがあっけない点。
(最終決戦までの盛り上げは良かったものの、
本当に一瞬で決着が着いてしまうのでまったくカタルシスを感じない。)
~良かった点~
・2章は普通に面白い点。
(落人村での生活はこの作品屈指の癒やしであるとともに読んでて楽しい部分である。
2章はラストで物の怪どもが出てくるまでは面白かったので、
例えばの話、2章は北方伝説をなぞって北海道まで一行が渡るところまで描いて、
そこで話を閉じて清々しい気持ちのまま読了させてほしかった。)
・本編よりも歴女同士の掛け合いが楽しい点。
(この作品は戦闘が絡まなければ面白いので)
・最終決戦に向けての戦闘準備”だけ”はさすがに面白い点。
(圧倒的な武力で主人公一行に対抗してくるラスボス率いる物の怪軍を迎え撃つために、
いままでの話でチラッと語られてきた、現人神に等しい平安時代最強の武人に、
助力を乞う展開は素直に燃えました。
ここは見事に歴史を調べ尽くしているライターの手腕が光った瞬間だと思います。
ただ、最終決戦に至るまでひたすら敗北、闘争を繰り返すのでフラストレーションが溜まります。)
・戦闘中の挿入歌として主題歌が使われるが、まったく燃えない点
(今作も戦闘を盛り上げるために挿入歌が使われますが、肝心の戦闘が一瞬で終わるので、
挿入歌が戦闘を盛り上げる前にフェードアウトしてしまい、まったく印象に残りません。)
ここまで、時にはChuSinguraとの比較も交えて今作の駄目な部分を挙げましたが、
そもそも今作はChuSinguraと比べるまでもなく普通に読み物として面白くないです。
「盛り上がりに欠けるシナリオ」
「熱くなれないバトル」
「目立った成長をしない主人公」
「好きになれない主題歌」
バトルものなのに、上記のような重大な欠点を抱えているため面白くなれるわけがないです。
次回作を作る際は、製作に入る前に今一度ChuSinguraを読み直してから作って欲しいと切に願います。
インレさんの次回作に期待しています。
~最後に~
ここまで読んでくれた奇特な方がいましたら、悪いことは言わないからこのGIKEIをやる前に
ChuSinguraをやってください。GIKEIをやるのはその後で十分です。