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gyuunyu280さんのCROSS†CHANNEL -FINAL COMPLETE-の長文感想

ユーザー
gyuunyu280
ゲーム
CROSS†CHANNEL -FINAL COMPLETE-
ブランド
CROSS†CHANNEL
得点
90
参照数
457

一言コメント

本編、EX(人は選ぶかも)は面白い。アフターは採点する価値もないゴミ。本編100回読み直して作れ。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

最初に言っておきます。
CROSS†CHANNELという作品に触れたことがない人は
・本編
・エクストラストーリー(本編が好きでもう少しこの世界観に触れていたい人に推奨)

だけ読んでください。アフターストーリーは一切読む必要がないです。
詳しいことは後述してますが、このアフターストーリーは本編が
好きな方なら、好きであるほど嫌悪しちゃうような出来になっています。


話は確かに今読むとあまり目新しさを感じないかもしれない。
しかし、それはあくまで大筋の話についての感想である。
随所に盛り込まれた氏独特の表現と描写により、
数あるリープモノとは違う、この作品だから出せる味が出ていて、
自分はそこに凄く惹き込まれた。

元々2003年に出た作品である本作。
新しい年代の作品から触れてきて今作にたどり着いた自分の視点で見ると、
今まで見てきた数ある作品を想起させるような設定が本編の色んなところに出てきて
そういう部分を確認するという少し違う楽しみ方も出来ました。
終えてみると、本当にこの作品が後年の色んな作品に影響を与えてるんだなあと感じました。

【他の作品の設定を感じた箇所】
・リープしている世界の中で祠の周りだけはタイムリープから逃れることができて、
祠の中には過去にリープしていた自分が、次にリープした際に今まであったことを
忘れないよう、次の自分に引き継ぐための日記が入っている設定。
(景の海のアペイリアに出てくるリープから逃れいてた空間とパソコンを思い出した。)

・親をなくし引き取られた先で太一が女装していて、その空間では一姫と呼ばれていた設定。
(幼少時代に女装していた過去があって、一姫って名前が出てくるって
これまんまグリザイアですよね。車を乗りこなす事が出来て
重火器が扱える曜子ちゃんは姉代わりの存在だし、
太一と曜子ちゃんを混ぜ混ぜしてグリザイアの雄二と一姫産まれてますよねこれ。)

・お嬢様である冬子が極端に人に惚れやすくて、惚れたら惚れたでどこまでも相手に依存し、
時には相手に構ってもらいたいが為に自傷行為に走る設定。
(性格がおとなしいか勝ち気かという点こそ違えど、
共通点が多くスクールデイズの言葉様を思い出しますね。
彼女も誠に好かれてからは肉欲の限りをつくし、どこまでもズブズブと堕ちましたよね。
相手に構ってほしいからって理由で自傷するのは世界のエア妊娠を思い出しました。
公式からの言及がないので詳しいことは分かりませんが、
以上のことから読み解くと今作がもしかすると
スクールデイズに影響を与えていたいのかもしれませんね)



【エクストラストーリー感想】
・冬子の場合→冬子のプライドの高さが分かって面白かったです。
なぜ、食べなきゃ餓死すると分かっていても何も口にしなかったのか。
彼女の葛藤が明かされるのが読んでいてスッキリしました。

・見里の場合→みみ先輩がどうして徹夜でアンテナ修復をしていたのかが分かる。

・霧の場合→霧が太一暗殺に走る過程がコミカルに描かれていて楽しかったです。

・美希の場合→美希がリープを繰り返して強くなるまでの心情の変化が描かれていて
面白かったです。このお話で祠によるタイムリープによる仕組みと、
裏で美希が世界の調律を行い、世界が何事もなく平常運転(リープ)するように
していたことが分かるのが印象的でした。

・曜子の場合→太一を愛しているけど嫌われたくないから近づけない、
そんなハリネズミのジレンマが綺麗に描けていたと思う。
世界の終わりに直面してやっと、かつて太一と『約束』するも、
結局彼1人に押し付けてしまった『約束』を果たすことが出来たのが切ない…。

・友貴の場合→なぜ、誰もいなくなった世界の学食などに
搬入されたカレーパンが置いてあったのか等の細かい疑問が解消されてスッキリした。
友貴が生命維持活動部を起こすまでの過程も描かれていてよかった。

・桜庭の場合→ここで『友貴の場合』でなぜ桜庭が残っていた食料を、
調味料だけを残して処分してしまったのか、その理由が明かされる。
(太一から「所持限界を超えるアイテムは捨てなきゃいけない」と
教え込まれていたせい)
屋上にあったカレーパンの包装の謎が解ける
(本編を読んでいるときは、みみ先輩が自分で食堂にカレーパンを食べに行き、
食べたあとの名残だろうと思っていたが、
実は桜庭が先輩に差し入れしていたことが判明。)
桜庭が本編中なぜ頻繁にいなくなるのかも、
「誰か他にいないか」人を探しに行っていたためと分かってしっくり来た。

・CROSS†'CHANNEL→”ズレ”てしまったせいで
周囲の人々と交信が取れなかった太一の話。
トモダチの塔を建造するくらい狂ってしまい、
その果てに「もう一度やり直したい」と願った彼の願望がきっかけで
不可解なタイムリープが発生していたことが分かった。
本編以上に狂気に包まれていた話で、怖さは感じたがそれ以上に惹き込まれた。


上記にあるエクストラストーリーはトモダチの塔以外の話は
本編で筆を執った田中ロミオ氏ではなく
サブライターの方が書いたお話らしく、
本編と正式な繋がりがあるものではないそうですが、
そこまで本編からの逸脱は感じられなかったし、
本編に残されていた謎や疑問の
補完という役割を果たせていて悪くないものだったと思います。


【アフターストーリー】(僕はギブアップして最後まで読んでないです)
ループ世界に残った太一に思いを馳せる桜庭が、部室で見つけたカメラに
残されいてた太一との思い出を写真に現像し、その写真をきっかけとして
放送部の面々の元へ行き、太一との思い出話に花を咲かせる…

という名目で描かれてはいるけど、
これアフターストーリーという名のIFストーリーですよね?
本編の最後に蝉が鳴いていたから太一は元の世界に戻ってるはずで、
太一が戻ってきてるのにも関わらず、
リープ世界に居残る太一に思いを馳せる必要なんてないわけで……。
そういうことから本編の後日談として機能してないんですよね。

女子の身体計測に参加するために変装した太一が医者として潜り込む話が出てきます。
それを見た美希が「手帳にサインを貰うことで太一のサインだと見抜いて」
変装に気づくシーンが出てくるんですけど、これおかしいですよね?
美希がメイトブックにサインを貰いだしたのは、
美希がループ世界の中で固有の自分を保ったまま生き延びて世界の調律をとる
ことを決意してからのはずなのに(美希アフターで語られてます)
何で身体計測なんて現実世界で行われたイベントの思い出の中に、
「メイトブックへのサイン」の話が出てくるんですかね…。設定矛盾してませんか?
しかも、美希アフターの設定を考えだしたのはこれを書いてるサブライターの方のはずなのに、
自分で作った設定すらも覚えてないんですかね?

エクストラストーリーは思い出の中に食堂のおばちゃんが出てくることから、
これは元の世界での思い出であることも判明します。

ループ世界に残った太一視点で進む話も出てくるんですけど、
ひたすら下らない下ネタとどうでもいい掛け合いが出てくるだけだったので
さすがに自分はそこでギブアップしました。
桜庭のキャラ崩壊が激しくて見てられなくなったのも原因の1つです。
キャラクターの上辺だけをなぞって描かれる出来の悪い
CROSS†CHANNELの同人なんて読みたくなかったので…。

【総評】
・本編    90点
・エクストラ 80点
・アフター   0点

【参考プレイ時間】
・本編       14時間

・冬子の場合     18分
・見里の場合      6分
・霧の場合      21分
・美希の場合      4分
・曜子の場合     15分
・友貴の場合     14分
・桜庭の場合     25分
・CROSS†'CHANNEL 22分

・アフター 1時間8分でギブアップ