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gyuunyu280さんのアルテミスブルーの長文感想

ユーザー
gyuunyu280
ゲーム
アルテミスブルー
ブランド
あっぷりけ -妹-
得点
75
参照数
299

一言コメント

ホームドラマのようなエロゲで良い話ではあるがエロゲで読みたいものではない。それと最終章が……

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

●エロゲなのにまるでホームドラマを見せられているように錯覚する作品。
単調で、且つ日常パートでのギャグが面白いわけでもなく、話が淡々と進む。
航空機が関わってくる展開や「誰かの人生にスポットライトを当てている」
展開に入るとそこだけは瞬間的に面白くなるが、あとは基本的に単調な話が続く。
ゲームを読んでいるうちの9割の時間くらいは眠気との戦い。
3章だけはわりと最初から最後まで眠くならずに面白かったかな。
いろいろと辛口なことを言っているが、決してつまらない作品ではない。
光るところはちゃんとあるし、本当に惜しい作品だと思う。


▼以下、備忘録メモ
1章
最初は退屈だが、拓哉くんが出てきて、心臓病を患った拓哉くんを大阪へと
届けるためのミッションを背負い、それに失敗したハルがパイロットとしての
自覚を持ち始めてからは面白くなり出す。

2章
桂馬との距離を縮めるためのお話。青島へ黒マグロを運ぶ仕事が
きっかけで、彼の人となりを知ったハルは桂馬との距離が近づく。
ペリカンの上でのバカンスを通じて桂馬とハルの距離が近づいていくのが良かった。


3章
アリーがハルの元へ来たことで始まる「家族ごっこ」
家族ごっこ展開は好きなので読んでいて楽しかった。
成人を迎えたハルが身寄りのないアリーを引き取るのか、
という分岐点に立った時に、「無責任に他人の一生を預かることは
できない」「でも、アリーと暮らしたい気持ちはある」と葛藤するのがいい。
二十歳を迎えたばかりなのに立派にママやってるやんけ…。

今まで決してワガママを言う事なく生きてきたアリーは最後の最後に
「江戸湾ズを離れたくない!」と1つだけ駄々をこねる。
この一言によってアリーの人生は変わり、江戸湾ズの人々とともに
”家族”として生きていくことになる。いい話だ。

3章以降も日常パートは
「つまらなくはないがギャグが特段面白いわけでもなく、
刺激のある展開が皆無に等しいため平坦すぎて眠くなってくる」レベル。

疲れてるわけでもないのに読んでいて眠くなるということは
作品の空気に浸れてリラックス出来ていることとも同義なので、
一概に悪いこととは言えないが、それでもやっぱり眠いものは眠い。

ただ、物語の大筋に触れて話が動き出す瞬間はやはり、面白くなり眠気も飛ぶ。


「I NEED YOU」 誰かから必要とされること。

6章から引き続き、7章でもこのテーマを引き摺っている。
自分のことを必要としてくれる人のために生きる人生。

「桂馬への恋心に気づきながら星野さんの下へ行っちゃうの?」
と何人かの方がこのサイト内でもレビューの中で物議を醸しているが、
この章というか、この作品を司るテーマのうちの1つに
「自分を必要とする誰かのために生きる物語」というテーマがあると
自分は思うからそこは仕方ない。そこに文句言うのは物語を読み込めていない証拠。
あなたが読みたい物語と、ライターが書きたい物語は違うと理解しよう。
(とは言ったものの、後に星野さんとハルもよく分からない理由で破局するんだが)


最終章
ハルの古巣、久保航空運輸から舞台は変わり、
建男たち、ダイダロス01チームが活躍する話に。
最終章クライマックスでテロとかが出てきて頭ポカーンになってしまった。
なんだこれ。俺が見たかったアルテミスブルーはこんなんじゃない。
もう一度、桂馬が空に挑む姿が見たかったのに…。

最後の最後に「何故か」生きていた桂馬が、久保航空運輸の倉庫に眠っていた
イカロス13で宇宙へと挑む展開が出てきます。
ただ、それまでの頭ポカーン展開から間髪入れず(禄に解説も入らずに)
このシーンが「常時オートで」再生されるんですけど、読み手である自分の気持ちはこの
(ライターが激アツ展開意識して書いたと思われる)テキストには付いていくが出来ず、
自分とゲームとの間に気持ちの落差が出来てしまい、最後まで真顔で終わりました。

「えっ、これで終わり?」ってなるくらい唐突にエンディングが始まります。えっ、これで終わり?

「次代へと続いていく想いのリレー」というのが作品のテーマになってるのは分かるけど、
最後は明らかに駆け足展開だったし、最後のエロシーン後の
ピロートークで取ってつけたようにこのテーマに触れて語り始めるし、なんだかなあ。

■31時間2分