なによりも演出が心地よく素晴らしい。褒めるべきはシナリオそれ自体よりも、それらを支える珠玉の演出にあると思います。もちろんシナリオも素晴らしいものでしたが、それ以上に私の場合に目に付いたのはニクイ演出の数々でした。このゲームの場合、とくに気をつけないとならないのが攻略順。「オールクリアに価値あり」タイプのADVなのですが、なんとトゥルーエンドに攻略規制がかかっていないために初回プレイから突入できてしまいます。各ルートはトゥルールートの伏線やタイムトラベルによる悲劇性の演出を兼ねていて、これをプレイしておかないとトゥルーでの感動も半減。初回プレイ時にはうっかりトゥルールートに突入してしまわないように注意してプレイしてください。先にトゥルーにいってしまうと素晴らしい演出の数々が台無しになりかねません。
素晴らしい作品でした。ほんと面白かった。ADVと限定しないでもミステリーとしても、ここまで物語の先が気になりドキドキワクワクしながら読み進めたのは久しぶり。丁寧に練りこまれた物語と、その世界観を構成する数々の魅力的な設定、それを盛り上げる一癖も二癖もある個性的なキャラクター達。主にオカリンの特異な邪気眼っぷりや、ダルの通常会話で飛び交うネットスラングなどがあまりにも酷く、最初はやや癪に障るものの、この登場人物達の設定の数々や、飛び交う時代を感じさせるカルチャーの数々が舞台の背景が「現代」であり、それは「今」なのであると錯覚させてくれた。ダルみたいなのはそこかしこに居るし、フェイリスみたいな子も一時期秋葉原に溢れていたよね。メイド喫茶だって流行りましたわ。これらが舞台設定の解釈に非常に良い作用をしており、プレイヤーである私自身にとって非常に近い世界での話という形に収束する。これら設定のおかげもあり、世界さん…もとい世界線がズレた時のオカリンの感じる違和感などがプレイヤー側もリニアに認識できる。それら設定の妙と声優陣の名演も手伝い物語を登場人物達がものすごい勢いで牽引する。初期の岡部の変人っぷりにやや閉口しましたが、そのオカリンにも様々な葛藤があり、キャラ付けについても物語上で説明されきっており最後までプレイすると逆に好感を持てるようになるほど。奥行きの深い壮大な物語は読み応え十分でした。タイムトラベルなんて腐りネタでここまで世界観やその設定の完成度の高いゲームというのも珍しい。タイムトラベルに関する造詣も深く実際にある科学理論などで武装していて設定自体になかなか隙がないため妙にリアリティがあったりもする。ゲームとしての難易度もわりと高く攻略見ずにプレイするとかなり骨が折れました(360なんてマイナーハードのマイナーADVを攻略しているサイトがあるのか知りませんが)。かなりの回数のセーブ&ロードを繰り返しましたがなんとかクリア。
なによりもすごいなと感じたのが素晴らしい演出の数々。思わず何度も唸らされてしまった。とくに紅莉栖エンド後に見たトゥルーへの流れ。これが素晴らしい。表現その見せ方が実にいやらしい。
無常にも流れだすスタッフロール。救いの無さに頭を抱えていると…何か変だぞ?。突然猛スピードで○○○をはじめるスタッフロール。え、なんだこれ?そして突然○り出す○○。その○○の相手はいったい誰だ…?そして○○を取るオカリン、○○の向こうに居たのは…。…そして物語の感動のフィナーレ。
ネタバレ感想とはなっていますが、この驚きはぜひ実際にプレイしてみて味わってみて欲しい。
確かにどこかで見た演出ではあるのですが、実際にやられてみると、本気で驚き、フィナーレには本気で感動してしまいました。いや~面白かった。一般的なPCゲームに比べシナリオの総ボリュームに対してややCG数は少なめかな?とは感じました。総プレイ時間は36時間。ギャルゲーとしては長い方だとは思いますが終わってみると実にあっという間でした。むしろ終わってしまいションボリとしてしまった。濃厚濃い口、夢や希望や子供心を忘れつつある大人のオタクに贈る最高のADV。…ううっ、腕にある○○○が疼きやがる…。○○を○○○しちまいそうだ…。
シナリオは全6ルート
・不可逆のリブート(鈴羽エンド)
・分離喪失のジャメヴュ(フェイリスエンド)
・背徳と再生のリンク(ルカエンド)
・透明のスターダスト(まゆりエンド)
・因果律のメルト(紅莉栖エンド)
・境界面上のシュタインズゲート(トゥルーエンド)
一言でも書きましたが、これからプレイするという人で、このネタバレレビューを先に読んでしまったという人は攻略順序に規制をかけてくれていないので、いきなりトゥルーから行けてしまいますので注意してください。さらに紅莉栖エンドそのものがトゥルーへの前振りになっており演出的に紅莉栖エンドを見ておいた方が楽しめるため紅莉栖以外のヒロインを先に攻略し、その後に紅莉栖をクリア、最後にトゥルールートを見るが理想的だと思います。最低限、紅莉栖ルートはトゥルーの前に見ておかないと紅莉栖ルートのラストが出オチです。この部分だけは本当に気を付けた方がいい。あと特典の設定資料集もプレイ前に熟読してしまうと、わりと盛大なネタバレが紛れていたりするので注意して読むようにしてください。OPムービーですが、全ルートをクリアした後にOPムービーを見るとまた違った感想を持てると思います。この先プレイする予定ならばこのレビューは以降は読まずに閉じましょう。読んでおいて良い事は何もありません。
最初は「どこかにハッピーエンドがあるに違いない!」とか思ってましたが個別は全部バッドエンドのような終わり方をします。バッドっぽくないのはフェイリスくらいだろうか。個人的にラボメンとの繋がりが消えてしまうのが辛すぎましたが。どのルートも結局は面白半分にタイムトラベルに手を出してみたら悲惨な事になったという結果に行き着いてしまいます。直接関係ない人たちに軽い気持ちと実験気分でDメールを使わせてしまって 、そしてその結果他人の人生を潰し、そしてそれをもとの生活に戻すためにDメールキャンセルの送信ボタンを押さなくちゃいけなくなり、結局タイムマシンなんて悲劇を生むだけで何も生まなかったという結論に収束するのが個別のエンドになります。しかもどれもこれもなかなかに壮絶なラスト。
物語の導入は発明した電話レンジと呼ばれる過去にメールを送れる装置を使って過去を変えてしまった事でヒロインのまゆりが死んでしまう。それを岡部が記憶を過去に送るタイムリープ装置を使って救うことができるかもしれないという希望を見出す、というものなのですが。実際に実行してみるとこの手段でまゆりを救うためにはアトラクタフィールドによる収束のために他の「犠牲」が出てしまうという事態に。バタフライ効果、映画「バタフライ・エフェクト」等でも有名な、いわゆる「蝶の羽ばたきで起きた風が、いつか遠く離れた地で大きな風になる」ような話。過去に普通では気が付かないような小さな改変を加える事により、その瑣末な変化が波及的に広がり、結果未来ではそれがとても大きな変化に繋がっていってしまう。何度も犠牲者を出しながら、これをなんとかしようとタイムリープを繰り返すというのが各ルートでのゲームの骨子の部分になります。
この「犠牲」の部分が非常に上手に物語に作用していて、かならず他ヒロインのルートで選択することにより結果まゆりを救わないという事になる選択肢が選べ、さらにその選択肢を選ぶことにより物語はルートエンドに向けて進行するという、プレイヤーに積極的に「選択」迫ってくる。この「まゆりを救わない」という選択はすなわち「まゆりを見殺しにする」。それは流石にないだろう。それは救わないとダメだろう。という使命感に似たような感覚がオカリンに感情移入していると常に邪魔し、見殺しにするのが非常に辛い。その「犠牲」の扱いにおいて主人公のオカリンの内葛藤や内省が非常に優れており読ませる。実体験として何度も何度もまゆりの死や他のヒロイン達の死に遭遇する事になるボロボロになって行く様が良く伝わってくる。何が正しくて、何が間違えているのか。それを誰もまったく保証してくれない中で、何を犠牲にして、そして何を守るのか、それをプレイヤーの分身であるオカリンに選択させなければならない。その選択が選べずに何もしないと、このゲームはバッドエンドにいってしまいます。その選択肢も「フォーントリガー」という独特のシステムを使っており、物語を進行する上でかなり積極的に自分から選択する必要が出てきます。
物語の骨子として「まゆりの死の救済」が置かれていますが、究極の選択とか、生命の救済とか、物語のメインはそんな事ではなくて「いつまでも過去の事でくよくよしてんなよ」って事なんじゃないかな。結局過去なんて変えてもいい事ないよ。今を必死に生きようという。「死」による圧倒的な「喪失」からいかにして立ちなおろうかという。そういう物語だったのだと思う。なんというか後ろを見ているとかなり色々と救われません。プレイ中は、感動はすれど、とくに涙を流すような事もなく、わりと淡々と楽しみましたが、終わってしばらく経ち、ふと物語を思い返しゲームの世界に立ち返ると、とても空しく悲しくなる。オカリンがα世界線→β世界線→α世界線と世界線を転々と移動してきたことは無駄ではなかったし全てが繋がっていた。そう全てが必要なことだったし無駄な事なんて無かった。「時間は可逆だが、因果律は不可逆」。ただ終えてみて心に残った物は空しさでした。
うっかりフラグをきちんと回収しちゃって、うっかり先にトゥルールートに入ってしまうと面白さ的な意味合いで酷い事になると思うのでここでちょっと減点ポイントですが、この面白いゲームを作り上げたメーカーとスタッフの人たちへの感謝の気持ちと、現状考えられる上で自分でプレイしたADVの中ではもっとも面白いと感じたので、自身初であり過去最高の100点を付けてみます。今後このSteins;Gateに付けた100点という点数が自分の基準点になるのではないかなと思います。
公式の設定で「中二病」とか書かれてしまう主人公や(これがまた相当「気持ち悪い」)、一般的な2ちゃんねらー(作中では@ちゃんねる)といういうよりも、生粋の隠れVIPerのツンデレヒロインだの、様々な著名なネットスラングを通常会話に織り交ぜてくるスーパーハカーだの、なかなか毒やアクや雑味の強い本作ですが、私の今までプレイしたADVの中では間違いなく私にとって「一番」面白かった。萌えと燃え。そしてオタクの知識欲に訴える膨大な情報量を誇るデータベースと、ウンチク脳をちょいちょいと刺激してくれる現実にも出てくる本格的な科学理論の数々やその考察。SF好きの心理をコチョコチョとくすぐる様々なニクイ設定や大胆な考察やその解説。ボリューム満点のシナリオに珠玉の演出の数々と声優陣の名演。数々の要素が最高のレベルでまとまっていた。物語のフィナーレにおける最高のカタルシス。多少の粗や矛盾点など気にならない程に流れとして物語が面白かった。システムも『CHAOS;HEAD NOAH』からさらなる進化を遂げており、コンシュマー機のADVとは思えないほどに快適なプレイ環境を実現していた。プレイしていると時間を忘れてしまうほどに実に面白かった。しかし余韻が残りすぎて辛い。胸がいっぱいすぎて色々と物を考えるのが辛い。なんかすごくつらい。なんとも捉えどころの無い「時間」というものを扱った物語としてギャルゲー史に残る一本というのは流石に言いすぎかも知れませんが、新しいエネルギーに溢れる優れたADVであったと感じました。膨大なテキスト量を誇り、物語上に散りばめられた星の数ほどある伏線の数々を、納得の行く形で回収し終える事に成功したライター陣に最高の喝采を贈りたい。素晴らしかったです。SFなどだと最早付き物ですが、やはり物理学的な物の考え方というのは、とても面白く興味深いですね。虚数とか量子コンピューターとか反物質とかエヴェレットの多世界解釈とか文字を見ただけで14歳の心が疼き思わず胸が熱くなる……。
5pbはシューターに酷い事したよね。ごめんなさいしないとダメだよね。とか思ってましたが。もうケツイはいいや。諦めよう。黒往生のパッチもいいや。諦める。もう全部許そう。シューティングはCAVEとグレフに任せておいて、もうニトロと一緒にADVだけ作ってりゃいい。
これはまったくレビューとは関係ないんですけど、設定資料集は最高のアイテムだが、ウソ発見器みたいなもんは誰が得するんだこれ。いやデザインがレトロでサイズもちっこくて可愛いいんで思わず使ってみたり遊んでみたりしちゃう不思議な魅力はあるのですが。