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guiltyさんの姉とプリンセスは嫌われたくない。-俺のラブコメ18禁フラグ、またしても管理できず-の長文感想

ユーザー
guilty
ゲーム
姉とプリンセスは嫌われたくない。-俺のラブコメ18禁フラグ、またしても管理できず-
ブランド
Venus_S
得点
100
参照数
2241

一言コメント

敢えて100点を付ける実際は75ほど。しかし、見どころがある作品

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

この作品、ただの抜きゲーかと思いきや、ほかの方が書いているように、非常にメッセージ性の強い作品です。

ハーレムといえば、とにかくかわいいキャラクターとなあなあなエロの連続で、その後幸せになりました・・・・・というものが思い浮かべられますが、このゲームそうはいかない。

ヒロインは主人公に選ばれたいその気持ちは同じでも、一人ひとり個性や愛の在り方に違いがある訳で、物語の仕様とはいえ皆を皆一遍に選ぶことも許されない。

「ハーレムっぽいのに全員仲良くというシナリオでないのは美味しくない!!」という意見もあるだろうが、安直に全員を一緒に愛するという、ヌキゲー的なシナリオ運びではないゆえに、一人ひとりのキャラクターやその思い・内面がプレイしているうちに印象づけられ、また、そのように感じられるようなものもギミックとして入れ込んであり、何とも味がある。

ヒロイン一人一人にそれぞれの魅力があり、どの姫、姉もそれぞれ作りこまれているように感じた。
姫たちはまさに一般人が思い浮かべる姫そのもので、かつ個性もしっかりあるためライターの姫造詣の深さがうかがえる。姉も同様で不快なキャラはいない、強いて言えば主人公が最も不快なキャラだった。

物語としては面白いように後半に行けばいくほど主人公を「クズ野郎」と感じざるを得ないような描写がされているため、ここまでする必要があるのかと少し理解ができなかった。
ここまで強引にウザく見えるようにする描写が必要だったのかと・・・

主人公は失敗と思われるエンドを最終ルートに入るまで迎え続け、特に後半は似たような失態を犯し続けるため怒りが湧くのかもしれない。「お前は前の失敗で何を学んだのだ?」と・・・・
このままいけばハッピーエンドでは?という流れでも強引に主人公がおかしくなる(唐突に横暴で自己中心的な行動をとる)ため主人公への不快感に拍車がかかる。
このような事情から物語を終えれば何故か主人公を意図的に不快に感じるように描いているような作品、という印象が残った。

しかし、ヒロインはそれぞれキャラが立ち主人公が失敗を重ねるも、失敗を糧により良いものも目指す成長モノ感は(特に物語前半)あるため、ストーリーとしては面白いものだと思った。
なので全体的に見ればやはり感じるところのある作品といえ、それなりに「おっ!?」と思える作品である。

主人公に対する不快感から低評価するプレイヤーもいるとは思うが、決して質の低い作品ではないので敢えて百点で平均値を上げられればと考えた。
この作品は高得点は得られないかもしれないが、低評価をするには惜しく、むしろ中より上といえる作品である。

全体としてプレイ時間は短い気もしたが、一つの世界観は形作られていて厚みがある。
主人公がぶつくさナヨナヨウザく描かれていることを承知でも、プレイして損はないと思う。
姫様と姉とのひと時...それを感じられる。

超ショッキングな鬱エンドはないものの、やはりその結末はもやもやするものが大半、ハッピーエンドは最後に個別で用意されていて、徹底して個人を選ぶこととなる。エロの内容は基本的に甘い献身的なプレイが多く、めれんげ姫できっついS攻め来るかと思いきやフェイクで、すべての姫は淑やかな姫として楽しめるので初心者でも安心。

最後にヒロインたちの思いを読むことのできるギミックが解放されるのだが・・・
それを読むだけで一人として同じ思いのヒロインはなく、それぞれが異なる立場、境遇で主人公のことを想っていることが分かり、感慨深い。

人は過ちの上に成功を見る・・そして過ちはなかったことにはできない。しかし過ちが消えないという事実があるからこそ、その上に掴み取る成功は尊いものなのだろう。
まあ、現実の「人生」はやり直しなどはできないのだが・・・・・

完全な大円団は迎えることはできないため、手放しに最後を喜ぶことはできないが、それがこの作品の味である。
最後までクズ(というイメージが描写上どうしても付きまとう)主人公だが、物語のはじめと最後では見えにくいが確実に成長しており、その微妙な成長を認められるか否かで評価が分かれそうでもある。

とにかく主人公に「クズ」である。(そのような描写がされている。

しかし、クリア後はいろいろ考えさせられ感慨深い・・・・主人公は不快(彼も確実に失敗を経て変わりはするのだが)だがそれをどうにか心の中で消化できれば、悪くない作品であったと思う。

なかなか、意表を突く内容の濃さがあったので次回作にも期待したいところです。