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gripeさんのあなたをオトコにしてあげる!の長文感想

ユーザー
gripe
ゲーム
あなたをオトコにしてあげる!
ブランド
Chuablesoft
得点
68
参照数
52

一言コメント

つまらないゲームではなかったが、面白いゲームでもなかった。いつもの面子での日常会話は好きだったが、ルート入ってからのシリアスパートが楽しめず、結果的に微妙な感じに。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

以下、各ルートクリア時にそれぞれ感想を記載

攻略順:こがね→紅雪→璃火→射月


〇共通
部活の先輩の思い出作りのためトロフィーを飾ろう!という想いから毎年開かれているカップルコンテストで優勝しようというお話。

ヒロインとの関係性が最初から深いというか、全員と仲が良い状態から始まる。ここまで知り合った経緯とかわからないのは珍しい気がする。個別でわかるかもしれないけれど。仲良し部活メンバーからカプコンの相手を決めようとすると、最初から仲いい方が都合が良いのか。

水曜クラブの活動は、意外と見ていて面白い。とにかく妄想を膨らませるだけの部活というのは、それを発表する恥ずかしささえ何とかなれば実際に入部しても楽しそう。
特訓が始まってからも水曜クラブが挟まるのは、いいアクセントになっていたかなと思う。
カプコンに向けての特訓も、先輩の特訓だと普通にためになる話だったり、そうでなくとも一番ヒロインの可愛さがアピールされているポイントであり、きちんと可愛さを表現出来ているので、これも面白い。
最初はみんなの関係性がいまいちわからず、仲の良さにもついていけてない感じがあったが、慣れたころに特訓が始まり、ヒロインがどんどんかわいく思えていつの間にか普通に楽しめていた。

とはいえ、面白いのは面白いのだが、普通よりもちょっと面白いくらいの位置をずっと走っている感じ。
ものすごく面白い場面というのは特にない。面白いというか楽しめているのは間違い無いのだが。
今のところサブキャラは好きになれていないので、今後どんどん登場するであろう敵のカップルが嫌いだったりしないかどうかは正直不安。
是非ともこの先もヒロインをより可愛く思えるようなストーリーになっていて欲しい。


〇こがね
部活に体験入部して周る辺りは正直、迷惑かけ過ぎて不快だったのでどうなるかと思ったけれど、最終的には結構面白くなったし、締め方も綺麗で良かった。

大剣入部の辺りは、こがねがちょっと間違っているよね、という話の作りにはなっているのだが、トーシロがソフト部で言った、ちゃんとやって無いのは事実ですよね?みたいなやつが正直一番不快だったので、後に謝ったとはいえ、作品としてはトーシロの意見は間違っていませんという雰囲気なのがもう嫌だ。
部活外の、しかも運動部でも無い人にちゃんとやっていないとか、私は絶対学生時代に言われたらキレてた。

それと、トーシロとこがねの喧嘩で、こがねが誰も引き留めてくれない!みたいなことを言っていたが、流石に夢とまで言われたら、誰もチーム競技やろうとすること止めないよ…。こがねがどのくらい馬鹿なのかは正直最後まで掴めなかった。結構鋭い時もあるし。

と、前半戦は正直読んでいて辛かったのだが、喧嘩以降のいちゃいちゃ、特訓はきちんと反省して頑張っており、だんだん優しい気持ちで見られるようになってくると、あれ、これ普通に面白いな…となっていた。
後は璃火が本当に良い。最終的にはトーシロが一番こがねのために動けるようになったと思うけれど、璃火が一番ずっとこがねのために動けていて、こがねが最終的に一番懐くのもやむなし。

こがねの成長も、トーシロの成長も感じられたし、みんなで取ったトロフィーだから、ここからみんなの一歩が始まったと思えばまたみんなといつでも会える気がする。みたいな言葉も結構いい言葉だなと。
そんな締めだったのでこのゲームの雰囲気の割には読後感がすごく良かった。


〇紅雪
特訓パートはかなり面白かった。トーシロがどんどん勉強の仕方を学んでいくのは見ていてわかりやすく成長を感じられたし、タグ付け等は普通にためになる。先輩の教え方が上手だし、トーシロも先輩大好きなので素直に聞き入れるので気持ちがいい。

恐らく最初から一番お互い好き同士なカップルなので、こがねルートよりも好きになる過程が楽しい!みたいなことは無かったが、それでもお互い好きだという感情を徐々に開けっぴろげにしていくのは甘酸っぱい感じがして良かった。お互い好きだし後はわかりやすいイベントが起きればいいだけと、当人同士も思っていそうな感じが〇。
紅雪が綺麗な状態で無くても、トーシロは先輩のことが普通に好きなのも良い。綺麗な状態を見て驚きはしたし、そっちの方が可愛いとは思っているものの、元々好きだから見た目も良くなってより好きに、でも元の見た目も普通に好きですよって感じがきちんと伝わってくる。

ただ、話の本筋とも言える部分はどうにも中途半端だったかなという印象。
紅雪が進路を決められないこと、それをトーシロが手助けすることがこのルートの肝だと思っていたのだけれど、やりたい進路を半分受け持つという結論も正直よくわからないし、芸術の道もそんな感じで大丈夫?と思ってしまうような最後だったし、トーシロが医療への道に順風満帆に進めるとも思えない。
正直将来が不安になるエンドではあった。普通に紅雪が医療、トーシロは普通のサラリーマンとかでいいと思う。

カプコンパートは、全部紅雪の苦手分野だけれど、それでも特訓の成果で勝ち上がっていくという道筋は良かった。
体力も最後多少のサポートは出来ていたし、料理の役にも立ったし、ホラーにも強くなった。
ただ、決勝は特になんかあっさりで、いまいち盛り上がらなかったなあと思ってしまった。最後の話が圧倒的に怖いとも思わなかったし。
結構因縁を積み重ねてきた決勝の相手だっただけに、もっと直接対決感は欲しかったかも。
何なら前日に隣の部屋でお互いに致していたことが一番カップル対決感あったまである。

過程は普通に楽しかったけれど、カプコンも話全体の締めも何かぼんやりしちゃったなと感じたルートだった。


〇璃火
ツンツンしていてわかりづらいけれど、実は最初から一貫してトーシロのことが好きな璃火。カプコン特訓に付き合ったのもトーシロに好きになってもらうためだったらしいので、共通からずっと、実は璃火に攻略されるお話だったらしい。
実際付き合う前からトーシロが好きなことはかなり漏れ出ており、結構水曜クラブの面々には嫉妬していたのだと思う。
だからこがねルート等、トーシロに相手が出来たときはもう切り替えて、ただただいい奴になれたのかもしれない。

付き合って以降のお話は正直うーん…という感じ。
まずトーシロの性格が結構違っており、付き合う前も少し感じていたが、付き合って以降は特に璃火に対して好きとは言っているものの、気遣ったりしている様子は全然感じられず、むしろ大切にしていないように思えてしまった。好きとは言っているDV彼氏のノリ。からかい方等に愛が感じられない。

カプコンに対し、公営ギャンブルがあって1000万円手に入れられるくらいお金が動いているという設定にも無理があると思う。あまり詳しくないけれど、カプコンのために法律変わったりしてるってことですよね多分。そんなばかな。
また、その1000万稼ぐために璃火とトーシロがあまりにも何も出来ておらず、流石に気になった。先輩から元手借りてる場合じゃねーぞ!
かと思えば、特訓も全然やっておらず、最終的に役に立ったものの主にいちゃいちゃと特撮を見ていただけ。共通では頑張ってたじゃん…。

晶二は他ルートだと璃火と組むくらいの男なのだから、このルートでもっと絡んでほしかった。結局他ルート同様の活躍しか見られず、少し残念。ただ、このルートだと天馬ペトラペアはかなり良く、他ルートで一番のライバルだったカップルよりも良い奴で良いキャラだったと思う。

ストーカー問題についても展開が適当だと感じる。実はストーカーでもなんでも無くて…みたいな展開の方がまだ良かった。
ガチガチにやばいやつなのに、父は全く見抜けず、トーシロ達もヤバいと言いつつ全然対策しない。一緒に暮らしはしたけれど、正直いちゃつきたい口実のようだったし。警察待たずに突撃したり、色んな認識が甘すぎて気になるし、その後も適当に捕まえて終わり。
ピアノ連弾で勝つための布石だったのだろうけれど、必要だった?このストーカー話、という気持ちにまでなってしまった。

唯一、浮島での璃火の告白だけは良いシーンだったと思う。あそこは璃火のずっと好きだった想いが溢れた名シーン。
ただそれ以外の展開は正直褒められたものじゃないルートだった。璃火が一番好きだっただけに、本当に残念。


〇射月
一番真っ当に面白かったルートかなと思います。射月は正直人から嫌われるかどうかギリギリくらいの脅しとか普通にするので、それが気になる人はちょっときついかも?個人的には悪い女は好きなので、全然ありでした。
トーシロと射月の距離感、日常会話が心地よくて、日常パートが普通に面白かったのも良い。基本は飄々としている射月だけれど、恋愛面に関しては不慣れだからかタジタジになるのは、王道だが可愛い。共通とライターさん同じだろうか、共通からも含めて射月が一番キャラが一貫していたなという印象もある。

璃火と同じく、最初からトーシロが好きで、何なら恋人になるために色々画策していたということだが、他ルートでは全然上手く出来ていなかった(射月ルートでも上手くやれてないが)のはちょっと笑ってしまった。やっぱり考え巡らせすぎて変な失敗してしまうタイプですよね。
想定通りにいかなかったことに対して、水曜クラブは机上の空論を語るクラブ。実際は想定通りいかないのは当たり前みたいな話は、水曜クラブという存在を上手く絡めることが出来ていて良かった。正直水曜クラブの活動はあまり作品に盛り込めていないと感じていたので。

そして最終的に策謀を巡らせて勝ち、策謀だけでなく時にはストレートに行くことも学んだ射月は引っ越ししないという勝利ももぎ取る。
この流れもなかなかに綺麗だった。
特に目立つ場面も少ないルートではあったが、常にまあまあ面白い、共通ルートと同じような感覚でプレイ出来たルートだった。

手帳を盗んだ先生との、いつかぎゃふんと言わせてやる→ぎゃふん、もうこないで下さい!のやり取りが何か大好き。


〇全体の感想

一番好きなキャラ:璃火

ひとつの目標に向かって、いつもの面子で頑張る!という点については光るものがあったゲームだと思う。実際、部室でいつもの面子で会話しているのが一番楽しかった気がする。
射月ルートの手帳盗まれ話だったり、璃火ルートのストーカー話だったり、個別ルートごとのカプコン以外の解決しなければならない問題が軒並み面白くなかったのがこのゲームの一番良くないところかなと思う。
なので、もっとカプコンに焦点を絞ってくれたら、まだまだ楽しいゲームになったのではと思ってしまう。
もしくは、もっと徹底的にストレスフリーなキャラゲーの方が良かったのかなとも思う。楽しくなかったのはストレスがかかる部分に集中していたので。

個人的には璃火が一番好きだったのに璃火ルートが一番楽しめなかったことが結構苦しかった。璃火自体も自分のルートよりも他のルートの方が明らかに輝いていた。こがね、射月ルートの璃火は本当に好き。

こがねルートのこがねの成長以外は正直印象に残ることが無く、すぐ記憶から薄れてしまいそうな感じがあるゲームだと思ってしまう。全く面白くないわけでは無いのがまたそう思わせる。
つまらないゲームではないし、面白いゲームでもなかった。これに尽きる。