人付き合いというものについて考えさせられる作品。どのルートも良く出来ているうえに、最後の全部繋がっていく感じもとても綺麗。
全体の感想
一言にも書いた通り、人付き合いについて考えさせられる、共感を抱く人も多そうな作品。
上手くなじめないヒロイン3人と主人公の、それでも勇気をもらいながら踏み出していく姿が感動を誘う。
結果として普通の人間になっただけではあるのだろうが、それがいかに難しいかを作中でも散々表現されており、
なんてことの無い理想の姿になっていく様が、本当に頑張ったねと褒めてあげたくなる。
ストーリーはほぼ一本道になっているので、ルートごとに成長している主人公の様子を見ることが出来るのも良い。
キャラもみんな魅力的であり、心情もこれでもかと深堀してくれるので、どんどん感情移入してしまう。
音楽が良いのも一役買っており、OP曲が良すぎて、各所で流れるのでどんどん感情がのってしまう。
人気曲だとは軽く知っていたけれど、これは人気になるわ…。
各ルート深堀も良く出来ている割に、短い尺でまとまっており、文章も読みやすいのでさくさく終わる。
ねこねこ15周年でそのおまけもあること以外は人に勧めやすい良い作品だと思う。
欠点を上げるなら、恋愛面は正直弱い。みんなのこと好きにさせるだけさせといて放置みたいになっているのはどうなんだ。
各ルートの後にきちんと恋人になったENDを用意しても良かったんじゃないかと感じる。もしくは最後に選ぶとか。
まあいちゃいちゃが全然ないのはいつもの昔ながらのねこねこスタイルという気もするが…。
また、システム面も弱い。いつでもセーブ出来ないクイックセーブとは…また文字OFFにも出来ないのは驚いた。
とはいえ、そんな欠点も吹き飛ぶ作品の出来の良さだったのは確か。面白くてさくさく進むからクイックセーブなんかいらんかも。
私は触れていないが、15周年要素もねこねこファンには嬉しい要素だと思う。私ももっともっとねこねこソフト作品に触れたら戻ってこようと思う。
ストーリーについて
攻略順:すみれ→雛姫→あかり
すみれ
共感できる人も多いのではないだろうか。私は出来た。教室で寝たふり、聞き耳立ててる訳では無いけれど、
聞こえてくる周りの楽しそうな声。そして自分のことが話されてるとすごく気になる。
何で自分はこうなんだろう。ずっとこうなのかな。陰キャ寄りの人なら大なり小なり悩んだことありそうな
悩みをしっかりと表現した良いお話だった。
主人公も経験があった結果、不器用ながらも力になろうとするのが良い。それで勇気づけられたのもあり、
好きな人を馬鹿にされたのもあり、最後の啖呵は少し感動してしまった。
アフターでは仲の良い義理兄妹になれたようで、今後も仲良くやっていくのだろう。
雛姫
人付き合いが苦手だけど、すみれとは違い、人付き合いをあきらめていて、それでもいいと思っている。
この対比が面白い。上手くやりたいけど出来ないすみれと、やる気のない雛姫。
それでも幼いころの仲良くなりたい気持ちを忘れきれない雛姫に、あきらめない健ちゃんが効いた感じ。
狙ってはいなかったけれど、とにかく一緒にいることを諦めなかった健ちゃんは結果的に最善だった。
主人公ががむしゃらに頑張った結果、それがヒロインの救いになるという展開が綺麗で感動を誘う。
観覧車のシーンは、こんなの絶対惚れちゃうよ…となるくらい雛姫の心に響いたのがよくわかった。
すみれルートからさらにもう一歩、理想の自分に近づいた感のある健ちゃん。
人の心配をすることが出来るようになったすみれ。
すみれルートからの成長もわかりやすく見えるのがとてもよかった。
このルートだけ片岡ともさんではないようだが、全然遜色ない面白さだった。
あかり
最初は何が始まったのかと思った。別ゲーになるのか?と思ったけど、杞憂でした。
乗り移りとかしている時、立ち絵がみんな一緒なの、立ち絵を用意出来なかったから使いまわし?と思ったが、
これも伏線だったとは。恐れ入った。ねこねこソフトさんすみません。
最終ルートだけあって今までと重みが違った。決して雛姫、すみれがダメという訳では無く。
雛姫とすみれルートでは日常でも起こり得る、共感を得たりできるルートだったが、あかりルートはそうではなく、
物語として、特殊な設定が用意されていたという感じ。
乗り移りを行っている話と、メイのお話と、現代のお話、それぞれどうなるの?どうつながっていくの?というのが、
ずっと楽しみになる、これまでのルートとは違う意味でずっと飽きさせない構成でした。
とはいえ、あかりの気持ち自体は誰でも共感出来得ることで。誰でも親が怖くて寝たふりしたり、
現実が嫌で起きるのが嫌だったりしたことはあるのではないだろうか。それが誰にも咎められず、上手くいってしまったら、
あの状態になっても全然おかしくない。
むしろあんな中で自分が与えた影響を清算しようと行動出来たことがすごいし、偉いと思う。
しかも3年もかかるくらい、必死に頑張ったんだなあと。
幼いころのあかりと健ちゃんの交流が本当にストーリーとしても面白いし、2人が楽しそうで、これが救いだったんだというのが
想像に難くない。そりゃ好きになるよ。かっこいいし。
ひとりENDがつまり、あかりの予定通りに事が済んだ後ってことだろうけど、全然健ちゃんは吹っ切れてないよ…。
真ENDの健ちゃんも本当にかっこよくて良き。愚直に手を差し伸べるさまは、本当に健ちゃんのようで、
あかりのおかげもあってここまでカッコよく帰ってきた感があり、大変良い。
最後の流れだけでCG4種類もあるのも力の入り方を感じて良かった。
あかりルートだけちょっと感想長くなり過ぎたが、それだけ良かった。すみれと雛姫も大変良かったけれど。
キャラについて
一番好きなキャラ:雛姫
主人公(健二)
人付き合いが苦手だけれど、愛想笑いだけは得意になった男。それでもいざという時は1歩踏み出すことが出来る。
それも昔は活発だったこと、健ちゃんのような人間に憧れていたことが、頑張れる性格に説得力を与えている。
みずいろの健ちゃんよりも普段も人に優しいし、行動力もある。あっちよりいい奴だと思う。モテるのも納得。
すみれ
人付き合いが苦手で、本当は上手にやりたいけれど上手くいかない子。それでも健ちゃんやあかりに勇気を貰い、
頑張って踏み出してみて、それでも挫折して、それでもまた踏み出して…。
諦め癖がありつつも、それでも頑張る様は本当に応援したくなる感じだった。
徐々に打ち解けていき、本来の冗談とかも好きな姿が見えていくのがとても良かった。
雛姫
人付き合いが苦手で、あきらめてしまっている子。あきらめているので、健ちゃんが本当に頑張った結果がなければ、
ずっとああして一人過ごしていたんだろうなと思える。健ちゃんまじありがとう…。
最初は本気で煩わしく思っていて、徐々に絆されつつも素直にはなれなくて、最終的には好きになるところまでいく。
正しくツンデレしていて、本当に良き。それも記号的でなく描けているのがすごい。
あかり
世界と関わることをやめようとしている子。恐らく2人のために作った、元気なキャラだけど、それでもおまけHシーンを
見る限り、実際にあの性格に近づくことが出来たのだろう。
でも小さいころのつかみどころないコミュ障みたいな性格も好きでした。
まとめ
ストーリーよし、キャラよし、心情描写よし、音楽よし、絵よし。正直とんでもなく素晴らしい作品でした。
恋愛面も充実していれば100点にしていたかもしれない。
あとねこねこ作品は本当にEDの入り方が抜群に良い。どの作品もここぞってところでEDになる。
最初はねこねこ15周年のが少し煩わしい気持ちになったけれど、クリアした今はもうすみれまでのねこねこソフト作品全部やって、
またすみれに帰ってくるか?という気持ちになっている。それくらい素晴らしい作品。
久しぶりに観覧車に、ちょっと乗ってみたくなっちまったなあ…。