良作になりきれなかった凡作という印象。何かパンチがあれば一気に良作になれそうな感じがするだけに惜しい。涼香、桜、まなみ辺りは可愛かったし、シーンも実用的、音楽も何気に良く、光る部分もある。
以下、各ルートクリア時にそれぞれ感想を記載
攻略順:桜→若菜→涼香→美月→まなみ→祐里
〇共通
ensemble乙女シリーズ第三弾。個人的にはプレイ5本目の乙女シリーズ。
今までプレイした中でも、かなり女装する意味が無いと思う今作。身体が弱い妹のために一緒に転校ということだが、少なくとも共通部ではさほど身体が弱いようには見えず、少なくとも女装で無理やり一緒にいなければならないほどとは思わない。
桜花会に入る流れもそうだが、本作は展開に対する理由付けが弱い。
桜花会に入る下りは、ヒロインと主人公を全員桜花会にまとめたいから何とか理由を付けたようにしか見えず、印象は良くなかった。
祐里もいきなりあんなに強い意志を持って桜花会入りたい!ってなるのも違和感あったし。
とはいえ作中の雰囲気は悪くない。会話のテンポも割と良いし、みんなで居る時の空気感は決して悪くなく何か癒される。
葵も腹ペコキャラが邪魔になることもなく、男の性欲等もあまり出さず、適度に人当たりがいいので、ストレスなく眺めていられる。
今のところは、味は薄いがお腹には良いような、そんな印象の作品。
今のところ全く生きていない、男子校にも通っている設定は今後生きてくるのだろうか。
〇桜
共通の雰囲気そのままに、特に何も無く終わった。
すごく面白いところは全くなかったが、つまらない箇所も無かった。かなりストレスなく読み進められたのは間違いないが、続きが気になるようなことも無かった。
桜が葵を女の子だと思っているまま好きになり、告白まで行ってしまうところが、最大の盛り上がりだろうか。
その展開はあまり予想していなかったので、ここは結構楽しめた。ただ、葵のことを好きになる理由は弱く、そこは気になる。
桜自体は理想の女の子という感じで、大和撫子だけれど人当たりは普通に良く丁寧過ぎない。それでいて気配りも出来て、自分から求める肉食でもある…彼女にしたい女の子第一位だろう。素直に可愛かった。
とにかく花壇を整えることに終始し、肝心の桜花際を熱で回ることが出来なかったため、よりイベント事が無いなあと感じるルートだったのだと思う。桜がトイレでも求めてくるくらい肉食だったことが一番印象に残ってしまったかも。
ちなみにこのルートだと一度も菊花に行った様子が無いのだけれど、大丈夫なんですかね?
〇若菜
桜ルートよりは大分起伏があり、良い部分も悪い部分も桜ルートより多かった印象。
菊花に通っている描写や、祐里の身体が弱い描写も申し訳程度ではあるが、存在していたのも良かった。生かしているとは言い難いが、設定を忘れている訳では無いことは安心できる。
聖様や、沙那子が積極的に関わってくるので、若菜の色んな姿が見られるのは良かったと思う。聖、沙那子、葵全員と若菜は仲が良いけれど、関係性は全員違うので、それぞれ違う中の良さが見られた。若菜の魅力を上げる一因になっていたと思う。
逆に、わがままで悪戯好きな面はかなり後半まで表に出ており、反省していると言ってもまた繰り返すみたいなことが、後半しっかりしていくまで続くのでそれは少しイラっとしてしまった。変な悪戯いっぱいすることに、何かありそうでそこまで理由も無かったし。
葵と若菜がイチャイチャする様子が何か妙に可愛くて、周りのやっぱりあの二人って…!みたいな反応含めて好きだった。
他の部分で少し重苦しい雰囲気が出ていたので、少なくとも若菜の男バレに関しては軽い雰囲気で終わってよかった。
桜ルートは自然だったけれど、若菜ルートはえっちするの早すぎない?とは思ったけれど。
基本的に葵さん、男バレするかも…みたいな危機意識が低すぎる。一緒に寝たらまあバレるよ。簡単にあそこ触られ過ぎだけれども。
途中まで軽くイラっとしつつも、最終的には若菜もわかりやすく成長し、聖様や沙那子も良いキャラだったしでそれなりに楽しかった。
正直一番期待していないルートだったので、若菜ルートがこの出来ならば、この先も期待してしまう。
〇涼香
面白かった!やっぱり疎遠系幼馴染は最高なんだよ!
女装状態で仲良くなるも、幼馴染であることを言い出すことも出来ず、それでもずっと一緒にいてあげたい。
でもやっぱりそんなの破綻していて…みたいな、情けなくも必死で涼香と一緒にいてあげたい、一緒にいたい葵がとても良かった。
涼香もとんでもなく可愛くて、どんどん葵に懐いていって、ベタベタし始める涼香様だけでも凄かったのに、後半少しだけだけど、葵君にはデレデレで、葵には強気な涼香が本当に可愛くて、恋人になってからももっと見ていたかった。このゲームにアフターシナリオあって良かった。
正直ここまでのルートだと、ED後がもうアフターみたいな感じだからアフターわざわざ作る必要あったかな?と思っていたけれど、涼香ルートでは必要でした。ありがとうございます。
男の姿で迎えに行く葵は、ensembleの女装バレの中でもかなりの名シーンなのでは。突っ込みどころもあるけれど、そんなのいいんだよ!と思えるくらいには葵君がカッコよかった。初恋の男の子にあんなんされたらもう…。
ちなみに不知火さんもただただ良い人で、カッコよかった。葵目線でも涼香を巡る相手でなければ普通に尊敬する素晴らしい人だったろうに。
完璧超人みたいに言われている高嶺の花が、表情コロコロ変えて、テンション上がったりしているのがわかりやすい様は本当に可愛い。
葵が悩んで、失敗等もするのが人間臭くて良いルートでもあり、涼香を愛でることの出来るルートでもあり、かなり満足。
マリみてのメイン二人のイチャイチャ回を見ているような気持ちだった。
〇美月
正直、イマイチだった。色んな要素が盛り上がりに繋がりそうで繋がらなかった印象。
また、個人的に男の状態を先に好きになるヒロインルートは、昔プレイしたエッセンスや、月夜の煌めきで大好きだったので、美月が葵君に惚れた時点で期待しすぎた感もある。
ハッピーちゃんのお話が軸になるが、そもそもハッピーちゃんの内容にそこまで興味が持てなかったので、これを長々やられることが結構苦痛だった。それでいて、結末はぼんやりと、何か仲直り出来たらしいことしかわからないのもモヤっとする。あそこまで中身やるなら最後まで見せて欲しい。
文学少女がハッピーちゃんにお熱なのは良いが、それ以外の本について触れないのもなあという気持ち。ただのラノベ好きやんけ!
そのせいで前半、まるで仕事していないのも気になる。他のルートだと最初から結構みんな大変そうにしているのに。
若菜ルートでは良かった聖様がこのルートだと結構うざいのも良くなかった。嫌がっていることをいじり過ぎて普通に嫌な人になっている。
美月が葵君に惚れる理由もあまりに薄い。流石に惚れやすすぎると思ってしまう。まあ顔は良いのか。
男バレ、仲直りの展開も、まあ悪いという程では無いのだけれど、もっと盛り上がれたよね?という気持ちになってしまった。
くっついたら終わったことでイチャイチャを楽しむこともあまり出来ないし…。涼香ルートはギリギリまでくっつかないことに意味があったけれど、美月ルートではそれも薄いので…。
そんな感じでなんだかずっとモヤモヤ、なんかずっと面白くない。そんな印象になってしまったルートだった。
〇まなみ
えっちシーンしていないどころか、付き合う前にED迎えることなんてあるんですね…!
恋愛面はまなみちゃんがぐいぐい来るのが可愛くて良かったが、本筋のお話はもう少し桜花会側から働きかけが欲しかったなあという印象。
基本的にはナンパ行為が問題になったが、それでも菊花生も来られる桜花会にしたい、というお話だが、桜花会側からは何も建設的な意見が出てこないのに、菊花を排除するのは待ってくださいばかりで、そりゃあ反対派も納得しないよ。という気持ちでいっぱいだった。
結局は菊花側で何とかしたことが桜花の生徒にも広まって、それをまなみさんが伝えただけなので、実質桜花会はほぼ何もしていない。なので、まなみさん凄い!みたいになっても、そうかなあという気持ちでいっぱいだった。
それはそれとして、ナンパから助けてくれた男の子に惚れてしまい、探しに来てみたり、見つけたらぐいぐい関わろうとするまなみさんが、正しく恋する女の子で、凄く良かった。風紀乱れるとか若菜ルートで言っていたまなみさんでも、恋をするとこうなってしまう。
最終的には大好きだったお兄さんと、好きになった男の子と、ずっと支えてくれた友達が同一人物で一石三鳥みたいな感じに。じんわりと正体に気付いていて、最後に穏やかに、やっぱりそうだったんだねってなる男バレは珍しいし、何か良かった。
浩一がきちんと菊花会会長として働くことが出来ていたのは良かった。葵に一目ぼれしたりしなければちゃんと出来るじゃねえか!
後、祐里とまなみの幼馴染設定は正直生きていなかった。なんか特別仲良くも見えなかったし。昔好きだったお兄さんという設定のためだったのかもしれないけれど、それも凄く生きていた訳では無いし。もう少しこの要素は使っても良かったと思う。
お話としては読み進めやすかったし、まなみもかなり可愛かったけれど、まなみ含め桜花会にもっとしっかりして欲しかったという気持ちが強くなってしまったルートだった。まあどちらかといえば面白かったのだけれど。惜しいなあ。
〇祐里
おまけルート。Ensembleのおまけにしてはそれなりに文章量があったように思う。
個人的には大きく理由もなく妹とくっつくお話は苦手なので、おまけ妹ルートで満足できるはずも無く…という感じにはなってしまった。
ただ、明らかに他ルートでも葵のことが好きだった祐里が、きちんと葵と添い遂げることが出来るルートがあるということが大事。
妹ルートだと、どうしても主人公側が妹を好きになる理由が無いと気になってしまうのだが、このルートだと始まった時から何故か葵がずっと祐里に発情しているのが何か笑えてしまった。君全然祐里にそんな感情無かったじゃん…。
告白の時も、ずっと前から女の子として好きだったとか言うけれども、本当か…?とどうしても思ってしまう。
祐里の身体が弱い設定をあまり生かすお話も無かったので、そういう意味ではかなり生きていたので、そこは良かったのかもしれない。
〇全体の感想
一番好きなキャラ:涼香
共通含めて、基本的にはそこそこ面白かったという感じ。美月、祐里ルートが少しつまらなくて、涼香ルートは一個抜けて面白かった。
癖は少なく、大きなストレスも無いと思うので、キャラを愛でると割り切ってプレイするには悪くないかもしれない。
本当に基本そこそこ面白いのだが、涼香ルート以外は特に印象に残る出来事が起こるわけでもなく、とにかくパンチが足りない印象。
女装は当然として、男子校にも通っている設定だったり、個別でいくと若菜のいたずらとか美月の文学少女とか、生かせていない設定が多すぎるので、素材はいっぱい用意したけれど、料理完成させてみたら程々においしい料理が出来たけれど、いっぱい材料余っていたみたいな感じ。
乙女シリーズの中でも語られない印象はあったけれど、まあそうなるか…という感想になってしまった。
決してつまらなくないのも、印象に残りづらい一因になってしまっている。いや、つまらないよりいいのだけれど。
涼香ルートや、積極的なまなみさん、肉食な桜さんなど、光る部分もある。意外とシーンは実用的だったり、何気に音楽も良かったり。
良作になり切れなかった凡作かな。何か抜けて良い部分があれば途端に良作になれそうなポテンシャルは感じただけに惜しい。