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gripeさんのWhite ~blanche comme la lune~の長文感想

ユーザー
gripe
ゲーム
White ~blanche comme la lune~
ブランド
ねこねこソフト
得点
83
参照数
64

一言コメント

ここの中央値とおしっこくらいしか事前情報なしでプレイしたので、想像よりも大分面白くびっくりした。プレイしたことあるねこねこソフトの中でも上位。 妹ルートの賛否は理解できるのでそこは仕方ないにしても、もっと点数高くて良いゲームだと思う。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

各ルートクリア時にそれぞれ感想を記載

攻略順:ほたる→ブリジット→ミサ→カナン→クレア→マリカ


〇共通

島で過ごすプロローグと、現代日本で過ごす本編に分かれている共通ルート。
マリカもブリジットも純真無垢なので、すぐに主人公に懐き、やり取りもほほえましいものに。
二人とも、特にマリカはポンコツ過ぎるけれど…。おしっこ言われてるのもこれかーとなった。
ただおしっこも含めて、ギャグは面白く、テンポ重視でとても良かったと思う。

話の本筋は以外とシリアスで、狙われる二人、年を取るのが遅い一族など謎もいっぱい。
シリアスパートはscarletの1章を彷彿とさせる。正直whiteの方が好みかもしれない。
一般人寄りの主人公が不思議な連中に巻き込まれ、それでもここまで関わったら放っておけない。
裏家業に片足突っ込んでたのが、ずぶずぶハマっていきそうな、気になる共通になっていたと思う。

マリカとブリジットはもちろん、他のキャラも魅力的で、主人公が絡まないやり取りも面白い。
特に学校でほたるが、マリカ、ブリジット、レンに振り回されている姿を見るのが好き。
もうほたるはレンくんとくっついてもいいのよ?と思うくらいこの二人のやり取りが好きだった。

ここまでは今までプレイしたねこねこソフトの作品の中でもかなり上位レベルに好きなので、
このままいい感じにまとめてくれると嬉しいなと思う。


〇ほたる

共通の方で書いた、ほたるとレンくんでくっついてもいいのよ?が本当になるとは思わなかった。
個人的には大好きだが、妹好きにはきつそうですね。
そもそも私は全然妹属性が好みではないので、結構理想の妹ルートだったかもしれない。
最後にお兄ちゃんらしいところも見せてくれるので、妹である意味もあったし。

急に一緒に住むことになった二人が、お嬢様二人に振り回されていくなかでお互いを頼りにして、
レン君からは優しくフォローしてくれる女の子でもあり、順当に惹かれ合う二人で良かった。
付き合うまでは青春な初々しい二人を。付き合ってからは女心がわからないレン君の成長を描いている。
レン君の成長と呼ぶには大分ほたるから歩み寄ってくれたけれど。
家事も出来るし普通にほたるちゃんハイスペックで良い女なのでレン君はまじで幸せ者だと思う。

コメディかつ場を動かす要員としての委員長は大活躍だったし、カナンとサイガの保護者コンビの
掛け合いもとても面白くて、登場人物にも無駄がなかった。
本編のお話とは何も関係ないストーリーだったと思うけれど、若い二人のラブコメとして
普通に面白い出来だった。新しい妹ルートを見せて貰った。


〇ブリジット

特筆するところも無いのだけれど、普通に面白かったという印象。
王子様探しを通じて順当に仲良くなっていき、そのままお付き合いすることになるが、
サイガ側から好きになった理由はもう少し明確に欲しかった。
というのも、ブリジットのことを子供だとずっと思っているし、向こうからの恋愛感情を理解しても、
いや、でも恋に恋しているだけで本気じゃないみたいな思考でもあったので、俺も恋愛感情かもみたいに、
すぐなるのは、正直ちょっと違和感があった。

とはいえ二人のやり取りはずっと面白く、からかって、怒られて、謝ってみたいな基本パターンが、
付き合ってからも続いていたのは良かった。
お話がブリジットは依存体質だという話に変わっていってからはあまり見せなかったが、
最終的には付き合う前の延長線上にあるような関係性に落ち着いたみたいで良かった。

ねこねこソフトらしく終わりは綺麗で、カナンの言った通り王子様を見つけたら元通りになったね。は、
ちょっとうるっと来てしまった。
今後もカナンとは仲良くやってくれ。
寿命まで生きたやつなんかいないから寿命の差は心配いらないは、ちょっと強引な締めだなと思ったけど。
なんか絶妙に悲しい未来が待ち受けていそうな…そうでもないような…。


〇ミサ

ブリジットをクリアしたら解禁されたのでこちらをプレイ。
つまらなくはないけれど…面白くもない…という印象。まあおまけだしいいか…。
カナン曰く敵である二人が昔は恋仲だったよというお話。とはいえどうしてブリジットとマリカの監視を
することになったのかはわからずじまい。あくまでミサとフォレストの人となりを知れるシナリオ。

いきなり訪ねてきたフォレストに振り回されながらも、フォレストを好きになっていくミサ。
それに伴い、会社のお局様とも仲良くなっていく。
会社でのみんなに陰口言われる描写なんかは、変に私もダメージを負ってしまった。リアルで嫌だ…。
それでも会社に味方が出来ていく様子は何か嬉しかった。これが一番楽しかったかもしれない。
正直あまりフォレストが好きになれなかったので、ダメ男にずぶずぶになっていくミサを見ているのが
ちょっと嫌だったかも。

二人が一緒になれない理由がこの先のルートで明らかになれば、少し評価は上がるかもしれないが、
最後二人が別れた意味もよくわからなかったのも良くない。
青山ゆかりさんの演技で日常のやり取りが少し面白さ増しているのが救いか。
まあつまらないというほどではないのだけれど。


〇カナン

一気にお話が動いた感。やはり選べるヒロインの中で最後にしておいて正解だった。
正直序盤はレン君が主人公なことに少しがっかり。保護者二人組が大好きだったのでサイガとくっついて
欲しかった。なので前半戦は正直あまりテンションが上がらないでプレイをしていた。

セトが出てきたあたりから物語の緊張感が一変し、カナンの襲来から一気に引き込まれた。
レンは天涯孤独の身なのがわかっていたのでカナンへの執着はわかるが、カナン側からは何でそんなに
レンに執着するのかわからなかった。
それがカナンの昔話から一気に納得へ持ってかれた。カナンの母への複雑な想いも含め、カナンの過去話は
魅せ方が上手く、話す相手がサイガなのも、相棒感があってよかった。

当然だが、父親とレンの取捨選択を迫られたときにレンを選んでしまうくらい、レンのことが好きで、
そしてレンの家族を殺してしまったことがトラウマなんだなと。
トラウマを刺激しちゃだめだよお父様…。
また、ブリジットルートの二人が親友であったことにも軽く触れたのは良かった。
ブリジットの声援で頑張れるカナンは正直すごくテンションが上がった。あれは良い。

本編ではカナンに対してあまり何かをしてあげることが出来なかったレンくんだけれど、
カナンの想いを汲んで離れることを決意し、その後カナンを助けることの出来る将来へ進むのは、
サイガみたいな立派な男になりたいと言っていたレン君の本気が伺えてとても良かった。

にしてもカナンさんはお辛い人生すぎますね…母とは離れ離れ、父とも滅多に会えず。
あの事件があり、ブリジットとも立場を弁えて接し、最後は父も失い、レンとも離れ…
幸せになってくれー!


〇クレア

セトとヨシュアの昔話。少しだけ出てきた地下の謎の女性や、抗争の理由などがわかるお話。
ねこねこソフトさんはこういう辛いけど、何か少し綺麗みたいなお話が上手。
愛した人が長寿のせいで植物状態になっていき、そこから長寿の意味とは…となっていくのが上手い。

明るく元気なクレアがおかしくなっていくのは本当に辛く、そのためにクレアに傷を付けなければ
いけないセトのことを思うとより辛い。最後のクレアの決断もしょうがない。
序盤の3人のやり取りがほほえましいので、余計に辛い。

結局二人とも本気で争う気は無かったということになるので、レンの家族は本当にやっちゃいけない事故
だった。だからこそ余計にセト側もヨシュア側も重く見ていたんだろう。
そして管理人としてしっかりやっていて、セトが島の人を普通の人間と変わらないようにしていってること
に抗議していたヨシュアが、本当は一番自分たちは存在しちゃいけないとなっていたのは、やはりクレアの
存在が大きいんだろう。
カナンルートのラストの悲しさがまだ増すとは思わなかった。恐れ入る。


〇マリカ

クレアルートの辛さをマシマシでお届けされた感じ。後半は涙腺ぼろぼろでした。
案の定マリカも穢れに侵され、どんどん目が覚めなくなっていくお話。

穢れに侵される前も、外では生きられないお花を無邪気に外へ植えるマリカや、猫が保健所へ送られて
しまう展開でこちらの心を辛くさせてくる。辛いだけではなくて、最後のお話へつながるように、
箱庭に留まっていた方が良いのかという問題提起や、純粋ゆえに外の辛さに耐えられないことの表現を
していて、構成も綺麗だと思う。

マリカがおかしくなってからのブリジットとサイガの対比も面白く、どちらもマリカを愛しているが、
愛している故に見ていられないブリジットと、愛している故に一緒にいると決めたサイガの違い。
どちらも深い愛情が伝わってくることが、面白いなと。
血はつながらなくても、お姉ちゃんとして頑張るブリジットの姿が本当に愛おしい。
また、何年もマリカが起きなくても、それでもマリカと一緒にいて、約束も守り続けるサイガが凄い。
心は折れかかっていたようだが、それでも10年近くあんな生活を続けていたことが凄すぎる。

スタッフルームで片岡ともさんがおっしゃっていたように、最後はご都合感は強めではあるが、
それでも無垢な女の子が辛い外の世界にも目を向けて立ち上がれば愛する人といられるという
そんなエンドだと解釈しているが、物語のテーマにもきちんと沿っていていいエンドだったと思う。


〇全体の感想

一番好きなキャラ:ブリジット

いや、面白かった。中央値だけ見て、正直期待していなかったので、本当にいい意味で驚かされた。
ほたるルートが妹ルート詐欺なのは間違いないので、そこが嫌いな人多いのは理解できるのだが。
個人的にはほたるルートは問題なく、むしろ子供たちの背伸びした恋愛感が好きだったので、
ネックなのはミサルートくらいのものだった。

ねこねこソフトの中でもタイトルと内容の一致させ方は分かりやすく、しかもきちんと出来ていると感じる
ので、その点も良かった。
どのルートも純粋ゆえに問題が発生し、無垢なままではいられないことを感じさせた。
それは辛くもあるけれど成長でもあり、最終的なレン君の進路なんかは成長を特に感じさせる。

カナンルート、クレアルート、マリカルートの後半戦はどれも辛いお話ではあったが、
どれも強く愛情を感じるお話になっており、特に支える側のセト、サイガ、ブリジットの愛情に
心が打たれ、後半はもう泣きまくりだった。

個人的にはマリカルートのブリジットにMVPをあげたい。本当は甘えん坊で依存気質なのに、
お姉ちゃんとして頑張る、大人になろうとするブリジットには本当に心が揺さぶられた。

scarletの後だからそれと比べるとね…みたいな評価みたいだが、個人的にはscarletより全然面白かった。
私みたいなscarletは世間で言われるほど…みたいに思っている人には刺さるのかもしれない。
やはり中央値は判断材料にはなるけれど、それだけで自分が面白いと思うかどうかはわからないですね。