サナトリュウムという閉鎖された空間で「お前となら本気で死ねる気がする」「私があなただけの天使になって最後まで笑顔で、あなたと一緒にいます」と言い合う男と女の関係性について。そして甦るたびに鈍く光る愛について。
とにかく終始陰鬱で救いのあるエンドはほぼない。強いて言うならハーレムエンド。あとは救われない。本作は何が強みかと言うと心を固く閉ざした男を"女"が解きほぐすというもの。私はこういうものに弱い。何度も酷いことをされても甦る（へこたれない）ならその度に磨かれて石のように重い鈍い愛になる。私は愛フェチです。女が弱者で受け身で何をされても好きだからで受け入れられるヒロイン像が好み。今作の風間愛はそのようなキャラクター造形。弍をプレイした時はそれほどそそられなかったけど今作の風間愛はかなり魅力的で可愛らしい。
主人公に愛玩具だの言われても「いいですよ。ずっと……可愛がってくださいね」と受け入れる。その後に精神改陵が始まる。私が最初にプレイしたのは性心ケアだったけど薬を飲ませて眠る愛を弄る。いやド変態じゃないか！と思ってしまった。よくあるプレイだけど何故かそう思った。そして下着をずらして性器に向かって「いつか、ここに俺の精子臭を沁み付けてやる」と。やっぱりド変態じゃないか！精液を注ぐではなく精子臭を沁み付けてやるだなんて台詞がえっちくさい。ちなみに主人公は包茎だが終始包茎描写がねちっこい。元童貞だからか医療器具を使ってのプレイはとてもフェチ度（想像力）が高い。毎日自殺することしか考えてないのに愛にセクハラしたり困らせたりすると生き生きとする主人公が可愛い。精神改陵をしないで愛達に会いに行くという選択肢も可愛い。
だけどやられっぱなしの愛ではないので「死ぬほど性格悪いですね」なんて言ったりもする。喧嘩するたびに言ってはいけないことを言うのでこの二人は見ていてとても面白い。応援したくなる気持ちになる。「半人前が余計なことするな！」と言われて「はやく一人前になりたい…」と部屋で呟くのも看護師としてより主人公の為にというのが伝わってきてよかった。
そして裏切られたら尚のこと、この人と近付きたい。と愛が思うシーンがある。バカな女、バカな女、バカな女！だと何度も主人公が笑うシーンがある。想いあったら最後。奈落へ落ちるしかないのだと感じた。もっとひどいことをして逆らえないようにしてやるなんて、なんてスキャンダラスな殺し文句だろう。
BGMの質も良い。雰囲気とあっている。全体的に「愛歌」「愛詩」「愛の虜」など愛に因んだものが多い。愛玩具という言葉もそうだろう。BGMは非寛容と非忍耐がとても良い。近死相姦という曲名があるのだがかなり字面が好みだ。主題歌の小夜鳴鳥に背を向けても風間愛にぴったりだ（エロゲというより乙女ゲのEDとかに流れてそう）
他ヒロインの芽優もなんだか病んでいる。閉鎖された空間でみんな自己実現がしたいのだと思った（そんな意図は全く無いと思う）90点じゃないのは途中でちょっと飽きてきてしまって残念ながら終わり方も気に入るものがなかったから。心中エンドがあったら文句なしの90点だった。七瀬恋よりこっちを先にプレイしたけど、多分分かりやすく理解したいなら七瀬恋を先にプレイした方がいいと思う。