BGMゲー
まだまだ過小評価の作品です。ただの、キャラゲーではありません。確かに、CGは並外れて素晴らしいです。しかし、シナリオ自体は、特筆して素晴らしいというものはなく、よく言えば、まとまっていて、悪く言えば、無難すぎという出来栄えです。ここまでであれば、総合的に見て、平均よりまあまあ良くできたギャルゲーくらいの評価しかできません。それで十分なのかもしれませんが、本作の特筆事項は、音楽、とりわけBGMにあります。正直、この部分はあまり点数に含まれていない気がします。キャラの可愛さやシナリオ以上に、BGMはこの作品において、非常に重要な役割を果たしているのです。
ギャルゲーというのは、往往にして、シナリオが固定化されてしまいます。それは、当然と言えば、当然の話です。付き合って、紆余曲折あって、結局、幸せという様式美のような展開のことを指します。プレイヤー自体、この展開を強く望んでいるので、問題ないはずですが、やはり物足りなさが見え隠れするのもまた事実に思われます。付き合ってからの消化試合感は誰しもが少なからず感じているのではないでしょうか。個人的に、アニメなどで、付き合った後を描かない作品が多い理由がわかった気がします。
しかし、本作は、その消化試合感がほとんどありません。というのも、これはBGMが大きく力を発揮している所以です。言葉で説明するのは容易ではありませんが、簡単に言うと、作品の世界観にマッチしている+一生聞いていられる優しさの合わせ技が炸裂、と言う印象です。本作は、本当に優しさに満ち溢れた作品で、ヒロイン全員から、ピンク色の湯気でも出ているのではと思わせるくらい、ポワポワしています。マスコット的な可愛さがあります。そのポワポワした、春の陽気のような雰囲気は、休みの日の二度寝くらいの開放的な気持ち良さがあります。そんな世界観に、BGMが物の見事にはまっているのです。優しい曲とは何なのか?と言う話ですが、本作のBGMを聞くと音楽にも優しさというものがあるということが如実に実感できるはずです。特に、「野牡丹の紫」は本作を代表する名曲です。個人的に、「夜の向日葵」と双璧をなしていいレベルの曲と考えていますが、あまり知名度はないようです。それはそれで、いいのかもしれません。優しいヒロインに優しい世界観に優しいBGM。まさに鬼に金棒です。つまり、シナリオ自体は平坦であっても、曲が作品に没頭させる契機になっているわけです。その分、少々眠気を誘発したりもしますが。
本作は、BGMという二義的な要素で、評価されるべき作品だと思います。この点を評価しなければ、少し出来のいいギャルゲー止まりです。BGMはいいけど、シナリオが~ではなく、BGMが素晴らしいから、シナリオもいい感じに見える点が素晴らしいのです。この作品のBGMに関して、タイマン張れる作品はほとんどありません。ギャルゲーの陰に隠れた、BGMゲー?です。BGMマニアとしては、たまらない一品でした。