テーマに対する好みは評価がわかれそう。
重要なのは、『諦める』ことではなく、『受け止める』ということ。後悔を残すと残さないでは受け止め方が180度変わってきます。
詩乃以外の個別シナリオに関しては内容が劣る点は否めない。
未来で起こる事象は変わらないが、過程を変えることでより良い方向へと導いていることがわかる。
問題となる事象がどれも過程で起こるもので、詩乃のように、明確な終着駅が設定されていない為、”確定された未来”と言う点は御幣がある。
詩乃シナリオについて。
主人公と詩乃は経緯は違えど、互いに”確定した未来”を理解している為、待ち受ける過酷な運命に対して、如何に受け止めるか、覚悟の違いが齟齬を生み綻びが出る、そして悲しい結末を迎える形になる。
時間遡行を行い、何が何でも”未来を変える”と決意した主人公は、更に漣さんから非常な結末を聞かされる。
既に同じ変わることの無い轍を通った漣さんが語る言葉は、何よりも説得力がありすぎです。
主人公が再度詩乃と出会い、海で本音を語るシーン、そして詩乃との別れのシーン。
この一貫した流れが素晴らしく、悲しくも辛い結末ではあるが、現実を受け止め、最後に時計を置き去るシーンは主人公の成長 (判断に難しい部分はあるが…) を描いています。
ただ、時計を持つからこそ、変えて欲しい運命もあります。
未来がわかるからこそ、もがき苦しんで手に入れる未来もあると。
もがき苦しむ事で変えられない未来を知ることもできる。
同じ過程を重視して描くなら、漣さんの言い分を無視して時計がボロボロになるまで人の強い意思を見せて欲しかった、ってのは個人的な願望ですが。
シュタゲのようにタイムリープの果てに出会わなければ、との解釈もありますが、この作品のように未来を強く受け止めることも一つの答えかな。
その過程をしっかりと描いた、この作品は少なからずとも、よくあるタイムリープ物とはまた別のプロセスで描かれた素晴らしい作品だなと感じた。