コレと言った不満が出てこないのだが、若干の物足りなさも同時に感じてしまう。しかしながら、『誰かを残して往くのは、どんな気持ちなんだろう・・・・・・』というこの作品の命題が見事に描写されているのは素晴らしい。とても悲しい物語ですね。
伝奇としてはとても面白い作品だった。この作品の丁寧な作りはとても印象に残る。羽衣伝説をモチーフにした、『誰かを残して往くのは、どんな気持ちなんだろう・・・・・・』というテーマをしっかり活かした物語の構成は面白い。
一番印象に残ったのは、初代さくや(天女)でしょうか、救いがないですね。自分を牢獄から救い出してくれた娘が愛しい人と自分の妹の子孫。裏切れられたと思いながらも、それでも主様と慕い続けた彼女の一途な想いと、人にそして自らの血族に対しての怨念。コレには心響くものがありました。人の不老不死への憧れと言うのは、何と業深きモノなんでしょうね。
そして件の次女なんですが・・・ コヤツはある意味勝ち組なんでしょうね。姉の旦那を寝取り、自分だけ天界に帰り暮らす。一番得したのは彼女なんでしょうね・・・
追いかけられたから私帰る!!
私の率直な意見としては、「貴方は逃げ帰れて良かったですね。貴方達を取り逃がしたおかげで初代さくやは悲運を辿る事になりましたがww」という皮肉しか出てこないですが・・・
ですが、この次女に対する嫌悪感を薄れさせているのも、彼女の子孫達。初代さくやを救った娘であったり、皐月や翔子の行いであったりするのですよね・・・
次女の心根が本当は優しいからこそ、生体データを受け継ぐ彼女の子孫達はこの様な優しさを持ち合わせているのでしょうから。そう考えると、次女に対する嫌悪感と言うのもそこまで意識しないで済みそうです。
そしてシンセミアルートをトゥルーと考えるならば、もう一人報われないのは銀子なんでしょうね。姉達の尻拭いの為、下界に残り山童退治を何百年もの間繰り返してきた彼女。そして故郷の天界には戻る事が叶わない。自身の選択故と言ってしまえばそれで終わりですが、銀子の責任感の強さが素晴らしいと思う反面、物悲しく見えてしまいます。(銀子ルートでは幸せそうなので、ある意味救いはありますが・・・ 優しい子孫に囲まれて暮らしていって欲しいと切に思いました)
ハッピーエンドは存在せず、どの結末においても何かしらの寂寥感は残る。不完全であるからこそ、この物語を美しいと感じるのかもしれませんね・・・
私個人としては、シンセミアルートのボリュームをもっと増やして欲しかったという願望はありましたが(何だかんだであっさり気味に終わってしまったので・・・)総じて素晴らしい作品だったと思います。そんな感じで、それではまた・・・