純粋なものは時として受け入れがたい
ずっと前から気になっていた本作をやっとプレイすることができた。結論としては、非常に短い作品ではあったが、綺麗にまとめられていて、作品のテーマ性も感じることができ満足のいく作品だった。20年以上名作として語り続けられている意味がわかる。
本作は、脚本の虚淵玄氏がジャンルを「ホラー」と定めている。ホラー作品独特の迫ってくるような恐怖感とテンポの良いシナリオがマッチしており非常に没入度が高くなっていた。作品とはまた別の話になるが、自分で物語を読み進めるノベルゲームという媒体においてホラーシーンにおける迫ってくるような恐怖感は、怖くて中々クリックが進められないといったようにゲームへの没入度が格段に高くなる。ホラー×ノベルゲームの組み合わせであればある程度の面白さは保証されて、今後は安心してプレイできるジャンルだと思った。
また、今作のテーマについても触れたい。今作の開花エンドの中の丹保女医の語りの中で、
この自分が、毒に冒されたというのならー真実こそが毒なのだろう。
純粋な酸素が生体にとって有害であるように、剥き出しの真実は、ヒトの精神を破壊する。酸素は5倍の窒素で包まれてはじめて、大気として許容される。同じことだ。戯れ言で希釈された片鱗だけの真実を呼吸することで、人は健やかなる心を維持できるのだ。
という語りに本作のテーマを感じた。純粋な酸素や純粋な真実が有害であったように、沙耶と郁紀の純粋な愛も二人以外の世界にとっては有害となった。純粋さは時として受け入れがたいものになり、純粋ではないからこそ安定していることもあるという新たな視点を虚淵氏は示したかったのかもしれない。