ErogameScape -エロゲー批評空間-

gomayuさんのさくら、もゆ。 -as the Night's, Reincarnation-の長文感想

ユーザー
gomayu
ゲーム
さくら、もゆ。 -as the Night's, Reincarnation-
ブランド
FAVORITE
得点
80
参照数
346

一言コメント

最も評価が分かれる名作

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

 今作は、今現段階で「最も評価が分かれる名作」なのではないかと思う。本作は、2024年11月7日現在で中央値が90を超え、データ数500以上の作品の中で標準偏差が17と最も高くなっている。(次点素晴らしき日々、サクラノ刻の15)サクラノ刻については未プレイのため評価できないが、素晴らしき日々に関して言えば電波、グロ、ホラーといった要素を多分に含んでおりそもそも万人受けではないので高めの標準偏差も理解できる。しかし本作は、重めの話ではあったが、ジャンルとしてはファンタジー、泣きゲーという比較的受け入れやすい部類である。データとジャンルを鑑みたうえで評価が最も分かれている話題作と言っても過言ではないだろう。
 その評価を分けている最大の原因は漆原雪氏の独特の文章表現だろう。一つの物事を説明するための表現がかなり回りくどい。本作の話自体が時間軸も大きく飛び、ややこしいため説明的な文章が大きくなってしまうのはわかるが、盛り上がりどころで文章のまとまりがないのはどうしても気になってしまう。特にハルルート。ハルが母親と夜の世界で再開し、「さくら、もゆ」が流れるという感動的な場面。曲全体が4,5ループするぐらいずっと話していた気がする。ノベルゲームをプレイしていると瞬間的に感動したり、ハラハラドキドキする場面というのが存在するが、それは「瞬間的」であるからこそユーザーの心に響くものだと思う。本作は全体を通して盛り上がりどころの場面自体がかなり長く、どうしても物語としての起伏が少なく感じ、本作のプレイ時間が長いことも相まって長時間プレイするのがつらいと思ってしまった。
 しかし、肝心のシナリオは良かった。物語のヒーローにはなれなくても、その人を献身的に応援する人達が必死に生きて、願いが成就した時は感動して、プレイしていてよかったなと思った。シナリオが良かったからこそ評価が難しい。本作の文章表現については特段気にしていないユーザーも感想を見る限りはいた。個人的にはかなり没入感を削ぐ要素ではあったが、そればかりに気を取られ肝心のシナリオを評価しないのはいかがなものかと思った。さんざん悩んだが80点という評価が妥当だと思う。