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gomayuさんのサクラノ刻 -櫻の森の下を歩む-の長文感想

ユーザー
gomayu
ゲーム
サクラノ刻 -櫻の森の下を歩む-
ブランド
得点
95
参照数
27

一言コメント

言葉の一つ一つが魂に響く。名作であることは疑う余地もなし。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

前作『サクラノ詩』の待望の続編となる本作は、ネット上でも非常に高い評価を得ており、私自身も大いに期待してプレイに臨んだ。その結果、予想をはるかに上回る面白さであった。プレイを開始すると、瞬く間に物語に引き込まれ、時間を忘れてのめり込んでしまった。

本作には、前作『サクラノ詩』や『素晴らしき日々』と共通する魅力がある。それは何よりもテキストの面白さにある。読者の心を捉えて離さず、クリックする手が止まらない。各章ごとに、心に突き刺さるような言葉の数々が散りばめられており、読む者の魂を震わせる。すかぢ氏の文章には、まさにそうした力が宿っている。

特に第四章以降の展開が素晴らしい。夏目圭の回送では、彼がなぜこれほどまでに直哉を慕っているのか、その背景が丁寧に描かれており、深く共感することができた。また、第五章では長山香奈との対決がとりわけ印象に残る。中でも「私の美は必ずお前らに届く。私の美はそういう美なんだ!」という台詞は圧巻であった。これは公式キャラクター紹介PV第2弾でも使用されていた場面であり、私は本作をプレイする前にこのPVを観て、強く心を揺さぶられたことを今でも鮮明に覚えている。

声優陣の演技力も秀逸であるが、何より長山香奈というキャラクターが、凡人としての幾度もの挫折を経験しながらも諦めず、美に対して最も純粋であり続けたことに強く心を打たれた。居酒屋でノノ未に作品を褒められ、思わず涙を流す場面や、身体が限界を迎えながらも最後のステージに立ち続ける姿は、本作でも屈指の感動的な描写であった。

トゥルーエンドでは夏目藍と結ばれ、娘が生まれ、幸福な家庭を築くという結末が描かれており、物語の締めくくりとしても非常に美しく、申し分ない内容であった。

本作を95点とした理由は二点ある。一つは、続編となる『サクラノ響』の制作がすでに決定しており、私は続編が予定されている作品に対して満点を与えない主義であるためである。もう一つは、稟および雫の描写があまりにも少なく、その側面の掘り下げが不足していた点である。次作における補完に大いに期待したい。

本作は本当に楽しく、かけがえのない時間を与えてくれた作品であった。心から感謝を述べたい。ありがとう。


試験勉強しなきゃなのに、時間解けちゃったよ…。