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gomayuさんのeden* They were only two, on the planet.の長文感想

ユーザー
gomayu
ゲーム
eden* They were only two, on the planet.
ブランド
minori
得点
83
参照数
71

一言コメント

「綺麗な物語」を追求した終末系恋物語

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

 本作を一言で表すなら「綺麗な物語」でした。綺麗な物語にするために無駄を省き、特徴的な演出を駆使していました。

〇演出面について
本作では、パッケージ裏にも記載があるように従来の「イベントCG」と「立ち絵」が切り替わる際に没入度が損なわれないように、立ち絵パートを無くしCGを多用していました。また、このCGの多用に伴い、従来は立ち絵と地の文でしていた状況説明をCGのみで行うということもしていました。2024年の今でも非常に新しく感じたこの演出方法ですが、2009年時点ではより挑戦てきな演出だったことが伺えます。本作のようにイベントCGを多用する演出方法は2020年発売の「マルコと銀河竜」と似たものを感じましたが、個人的には全体のプレー時間が短くなってしまうという難点はありますが、一つ一つの場面を美麗なCGで丁寧に表現することができて非常に好きな演出なので、普及していってほしいと思います。

〇シナリオについて
 演出面でも触れたように、CGの多用により全体的なプレー時間の長さは確保できないということでルートを一つに絞りシオンと亮の心の動きや葛藤を濃密に描いていたことは非常に好感が持てました。確かに、エリカやラヴィ少尉はキャラとして非常に魅力的で彼女たちのルートを見てみたい気持ちもありますが、もしルート分岐があれば、シオンと亮の深堀りができていなかったと思うとルートを絞ったことは英断だったと思います。(FDで保完されているようですし)

〇気になった点
 本作で私が気になった点はなかったのですが、一般論を言うならば物語に意外性や起伏が少ないというのはマイナスポイントになりえるのかもしれません。しかし、そもそもこのedenは超展開が魅力のSF作品というわけではなく、あくまでSF要素は設定で、ラブロマンスを描きたかったという作り手の明確な意思が感じられたので良かったと思います。オチが分かり切っていたということはありますが、亮がシオンの元に残る決断をする過程も、EDへの入り方も文句のつけようがありません。恋愛作品としても、癒し作品としても非常に完成度が高い作品だと感じました。