世界や文化が違えど、生き方は変わらず。
【どんなお話】
この世界には、人間と、超能力を持った"天狗"という2種族のヒトが存在する。
天狗と人間。互いに共存しあえるように、天狗特区を設けた。その特区で天狗達は彼らの文化を維持し生活していく。
通常の人間も体内に保有するPTKの値が一定の水準を超えれば、天狗として認定され"特区行き"となる。
本作は、望んでもないのにPTK値が超過し、"特区行き"が決まった美鈴の物語を描く。
【感想】
人間の国から天狗の国へ。世界が変わり、環境と文化が変われど、根本的な生き様は変わらない。
そしてこの生き様には、正解がない。
祐太郎はこう述べる、「本当に大切なものを守るためには、逃げなくちゃいけない。人間は自分が思うよりも弱い生き物だから」
ヒマワリはこう述べる、「自分を信じて。"自分はできる"と思わなければ、できるものの出来ない。諦めてはいけない」
これは生きていく中で壁にぶち当たったときにどうするか。違う立場から述べられた意見だ。
彼らの台詞を読んだときに、どちらも納得してしまった自分がいた。
どうしてもどっちも間違っているとは思えないのだ。
結局、美鈴は祐太郎とヒマワリの声を聞いて、彼女なりの"答え"を導き出すのだが、
彼女の答えも遊太郎やヒマワリよりも優れている、正しいとは思えなくて、白黒つけることが出来なかった。
本作は間違ったことを一つも述べていない。
そして、複数の角度から見た主張は提示するけども、正解を指し示さないのだ。
プレイしている僕らにただ、「こういう意見があるけど、どう思う? ちなみに美鈴はこれを選んだよ」と広げた風呂敷に意見を並べるだけ。
並べられた意見はどれも非常に共感ができる、なにかを気づかせてくれるようなもので、
きっとどの道を選んでも、それなりの幸せを手にすることができるだろう。
でもどれが一番とは言わない。
それがすごい不思議な感覚で、独特な読み応え、味わい深さを引き出していたと思う。
プレイし終わった後、そののことについて半日ずっと考えてしまったくらいには。
静かな水面にぽんと一石を投じるような作品。
という曖昧な感想になってしまったが、
作品として、物語の構成、展開流れの完成度は高く、拾えてない要素があるにも関わらず、とても満足感を感じるクオリティだと思ったので、残りのシリーズ作品も引き続きプレイしてみたい。