ウォレス博士とフィンチにひたすら感動した
本編よりも点数が高いですが、それほどにウォレス博士とフィンチの関係に感動させてもらいました。
普通狂気の科学者と言えば、際限なく人体実験を繰り返し、何人もの犠牲者を出していくものですが、ウォレス博士は違います。
理論が完璧ならば被験者は一人で十分であり、その被験者に不具合が起こればそれは自分の理論が未熟だっためであり、被験者に問題はない、という考えの持ち主。
それどころか、無理をしすぎて倒れたフィンチを勞ってあげています。
ウォレス博士は「結社」の幹部で、幹部連中は皆「回路」と言われる術式を用いて不死の肉体を得ています。しかしそれには相当の精神力が必要で、幹部連中は大抵狂気でいることが当たり前みたいな感じで、「回路」の維持にはなんら問題ありません。
しかし、ウォレス博士だけは常に意識して狂態を振りまかないと、「回路」を維持する精神性を保てない。そして狂気にないときは被検体であるフィンチを気遣う、そういう人物です。
そんなフィンチへの優しさを捨てきれない彼だからこそ、狂気を保てずに死んでしまう。そしてそんなウォレス博士に救われたフィンチは、彼と共に消えていきます。
狂気に陥ることが出来ずに優しさを捨てきれなかった科学者と、その偽りのない慈悲に救われた少女の話、実に素晴らしかったです。