ひたすら天然で幼な可愛い主人公を愛でるゲーム。赤い人のルートがもっとよかったら80点を超えてました。
純然たるキャラゲー。年を取るとガッツリとした重いシナリオを消化する体力がないので、このくらいの短さのミドルプライスがありがたくなる。
このゲームの魅力の大半はキャラクター(かつその7割が主人公)で、シナリオはキャラを魅せるための背景程度。実際、ブランド過去作の設定流用激しいです。
「花と乙女に祝福を」からは、姉との双子入れ替わり設定。
「乙女が奏でる恋のアリア」からは騎士模擬戦設定。
ですが、ミドルプライスな分、フルプライスだった過去作と比べて、シナリオがあっさりな分、キャラクター魅せに配分をグッと寄せています。そしてむしろそれが良い方向に作用してます。2番煎じでしかないなら、そこまで盛り上げる必要ないだろうという、潔さを感じます。
結果として。「花と乙女に祝福を」ではあった嫌なキャラクターが出てこないので、この話の世界観には合致した感じ。だけど、赤い人こと天音さんのルートだけ、このあたりの弊害が出てる感じはあります。(後述)
では、メインキャラやそれぞれルートの感想でも徒然と。
桐谷 紗綾
作中No1で可愛い子。
私は女装ゲーが好きです。その理由は、「物語の主人公は、何らかの『特別』を持っていないと話にならない」という考えが根底に有るからです。一番重視するのは外見よりも精神性で、何らかの目標や夢があり、それに向かってひたむきに頑張る主人公が一番好き。次に夢や目標はないけど、安定した精神性を持ち、メンタルがタフなタイプ。その後に外見の善し悪しが来ます。
簡単に順位付けするとこのような感じに
1 外見が優れ、精神が強い
2 外見は平凡だが、精神が強い
3 外見は優れるが、精神が弱い
4 外見も平凡、精神も弱い
私が女装ゲーを好むのは、1の条件の一つを確実にクリアして、絶対に4には成りえないからです。女装ゲーの主人公は、ほぼ100%容姿が平均より遥か上ですからね(メタ的にも、作中内設定的にも)
そして、様々な女装ゲーをやり、多くの女装主人公を見てきた私から見て、この「桐谷紗綾」という主人公は、あまり見たことがないタイプでした。
作中で「天然」と評されることが多い紗綾ですが、私は「天然」というよりも「幼い」という印象が強かったです。これが新鮮に感じた理由です。
可愛い、綺麗、美しい、格好良い、情けない、女々しいなど、女装ゲーの主人公たちには様々な感想を持ってきましたが「幼い」は初めてでした。ですが「幼稚」という訳ではありません。
「花と乙女に祝福を」をセルフオマージュしているのか、心理描写の一人称も「私」となり、女言葉で表現されるほど姉に成りきってる紗綾ですが、「花と乙女に祝福を」の晶子の時は『女々しい』『情けない』と感じがちだったそうした点も、紗綾の場合は一切感じることがありませんでした。
その理由は、私が感じた紗綾の「幼さ」にあると思います。作中で紗綾は、人の話をとても素直に鵜呑みにしたり、大好物の甘味を食べる時に満面の笑顔をこれでもかといわんばかりに全開にするなど、感情表現がとても率直で明け透けなんです。純粋、純真、と言い換えても良いかもしれません。
まだ男と女の性的な区別を明確にしていない、小学生の時のような精神性、紗綾にはそれが感じられました。
飾ることなく自分の感情を表現するそのさまは、まさに小学生の高学年くらいの精神年齢に見えました。でも頭は悪くなく、かつ考え方も前向きで頑張り屋なので、とても好感が持てます。子供が一生懸命になってるところを見てると、自然に応援したくなる心境ですね。
なので「幼稚」ではなく「無邪気」な印象を持たせる「幼さ」を感じたという訳ですね。
実際、紗綾の性的な反応は、小学生レベルであると思います。興味がない訳ではないけど、それより恥ずかしさが勝るお年頃。Hな画像見ると恥ずかしさと興味で揺れ動く、そんな時期。実際水澄ルートの同人誌の下りがそんな感じでした。Hな絵に対してまず恥ずかしさが来て、顔を真っ赤にしながら、徐々に興味を惹かれていく、そんな青い少年時代。
というか、エロ漫画(けっこうディープな)をスタイルの良い女の子と一緒に読んでてながら鑑賞会だけで終わったって、完全に同性のムーブですよね。ついでに言えば沙綾は裸の立ち絵あるのですが、それが完全に女の子の体型(腰にくびれがある上に、男性器が無い…… もしかしてアレは超リアルなペニバンなのではと勘ぐり)で、どう見ても貧乳の女の子でした。
この子の笑顔は「にぱー」という効果音が似合いそう。それと敬語が多かったのも個人的にツボに入りました。
過去にプレイした女装主人公の中では「オトメ✝ドメイン」の『飛鳥 湊』くんに類似してる点(見た目の可憐さ、敬語の多様、女子力の高さ)があると個人的に思う紗綾ですが、その「幼さ」「精神的年齢の低さ」という点で、まったく違うキャラクターに見えました。湊くんには、高校生男子らしい性欲を持て余してましたが、紗綾には性欲が湊くんの1/3も見られなかったです。
性欲が見られない女装主人公には「月に寄りそう乙女の作法」の『小倉 朝日』さんがいますが、あの人はむしろ性欲が「皆無」なので比較対象にはならないかも。
ですが誰かに悪感情を持たない、という点では朝日さんに似てると言えます、しかし朝日さんが『聖人』という印象を持たせるキャラなのに対し、紗綾は『無邪気』という点で異なります。朝日さんが「人を疑うのは良くない」と自分を戒めてるのに対し、紗綾はその発想がそもそも生まれない、悪く言えばポケーっとした子。
そのためか、性的なシーンでの紗綾は基本「受け」です。ほとんどのシーンでヒロインの方から誘ってきます。沙綾から言い出すシーンは貴重。
それと、声優さんの演技が見事に、この幼く天然ちっくな紗綾のキャラにマッチングしてました。この声優さんは、本当の紗綾、女装してる紗綾、女装してない紗綾(綾斗)の3種類の演技を見事に使い分けていて、本当にすごいと思う。
紗綾という主人公がとても気に入ったので、このゲームの評価が高いです。
雪代 ちとせ
白い子こと雪城ちとせ。同級生のヒロインです。センターヒロインであり、シナリオの流れを考えると、この子のルート以外考えられない感じの構成となってます。
というか、この子のルート以外「姉の身代わり女装しているので絶対バレるけにはいかない」という、紗綾の目的とヒロインの目的が合致する流れになってないので、このルート以外は話の流れとして「不自然」になってしまう。
ちとせのみ、共通ルートで正体がバレてるので、ちとせは紗綾の正体がバレないようにするため、ひいては紗綾と一緒にいる時間を少しでも長くなるために奮闘します。競技の勝者は生きたトロフィーであるラビットとなった紗綾と一夜を共にする権利(意味深)を与えられるので、紗綾の正体を知ってるちとせ以外が勝者になると、紗綾の正体と貞操のピンチ。
そのため、ちとせは何としても勝者になろうと頑張る、とても自然なストーリー。
しかし、絶対強者たる赤い人こと天音さんには勝てないことが練習試合の時に嫌というほど分かったので、ちとせは作戦を思いつく。
競技の内容は、
10名ほどの競技者であるハンターが、競技場になる森にバラバラに配置されスタートする。
トロフィーのラビットは、競技場の中央でスタートし、開始30分は競技者は立ち入り禁止
ラビットはハンターから逃げなくてはならないが、ハンターが最後の一人になると逃げるのを止める
勝利するには、最後の一人になるか、逃げるラビットを捕まえるかのどちらか
ハンター同士が出会った場合、決闘となり、逃げてはならない
などが基本ルールです。しかし、ラビットはハンターから逃げてなくてはならないというのは、あくまで「心得」で「わざと捕まるのはとてもはしたないこと」という暗黙の了解的なところがあります。
なので、ぶっちゃ盛り上がれば問題なしです。
ちとせが取った行動がまさにそれで、彼女の作戦は、私の好きな某ゲームのキャラ風に言えば
「勝てないならな、戦わなきゃいいんだよ」
でした。つまり「誰よりも早くラビットを捕まえる」方法を取ります。勝負を避けた手段ではありますが、ちとせにはそれをやる、絶対に負けられない理由があったので、見てる側は納得できる行為でした。個人的にルールの穴を付く方法は好きですし。
ちとせ個人もとてもいい子だし、紗綾とも性格的な相性も抜群なので、一番気に入ったルートです。
暁 天音
赤い人こと天音様。この人はキャラはとても魅力的に描かれていたのですが、ストーリーが残念でした。
すでに最強である天音さんなので、順当に勝利できる立ち位置にいます。そのため、競技が盛り上がるためには「意図的に配置した障害」を作る必要があります。
そこで用意されたのが、ルールの穴をついて3人組で襲いかかるトリオなわけですが、ちとせの作戦と違い、こちらは完全にグレーというよりアウト。
ハンターは逃げることがルール違反なので、「剣を収めていないから逃げてない」というのは少々無理があり、一回ならまだともかく、何度も繰り返すのは反則でしょう。それに何より、見ていて盛り上がらないし、事前に打ち合わせての行動だと分かるので、例えそれで勝ったとしても、栄光を受けることはできるのでしょうか。その上その3人の中でも実力差は見えてるので、他を倒したとしても、残った3人での戦いだと八百長みたいな結果になってしまいます。
なによりも、この3人にそんなことまでして勝ちたい「理由」が語られないこと。ちとせは絶対負けられない理由があったからこそ白に近いグレー的な戦法で勝ちましたが、この3人は黒に近いグレーの戦法。それで勝利したとしても学内から賞賛が受けられるハズもないでしょう。
この競技は栄誉を得るための戦いなのに、栄誉なき勝利を掴もうとしてるんですよね。だから展開がかなり無理矢理な感じが強いです。
そのため、どうしてもこの展開には無理が生じてしまってます。なのでいっそ、『このままでは3年連続同じ人物が勝者ではつまらないから、最後の一人になっても逃げ続けなさい』、と前ラビット杏樹さまから言われたなどのギャグテイストな展開にしたほうが良かったと思う次第。
また、せっかく親友キャラなのに、杏樹様の出番が少ないのもこのルートの欠点。むしろ杏樹様がヒロインの方が話作りやすかったんじゃないかなー。
ついでに、前述の紗綾の「幼さ」のせいか、天音さんとのやりとりはおねショタ感もありましたね。
黒峰 水純
黒い子こと水純ルート。この子のルートも話的には特に盛り上がりがあるわけではないですが、キャラクターのぶっとび具合が凄かったです。清楚で奥手そうな見た目とは裏腹に、自分の性欲に忠実なド淫乱(失礼)という、まさかのHENTAIでした。
よもや憧れの先輩の部屋に忍び込んで、服の残り香を嗅ぎながらおっぱじめる子だとは……
終始ギャグテイストなストーリー進行なので、「ああ、こういう話なんだな」と変に納得して、細けえとはいいんだよっ! のノリで読むことが出来るルートです。
ひたすらネジが飛んでる脳みそピンクな水純と、それに振り回される紗綾のやり取りを愛でるルートでした。
まとめとして、キャラゲーとして以外に楽しめないゲームですが、キャラの魅せ方はきちんと出来てる、軽い気持ちでやるには最適のゲーム。幼可愛い主人公がひたすら愛い。女装キャラ好きならやってみて損は無いと思います。