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gggrrrさんのリズベルルの魔7 完結篇 ~はてしなき ほんとうの物語~の長文感想

ユーザー
gggrrr
ゲーム
リズベルルの魔7 完結篇 ~はてしなき ほんとうの物語~
ブランド
TOKITETO
得点
90
参照数
182

一言コメント

シリーズ完結。見事に話を纏めました。伏線も概ね回収され、堂々のエンディングを迎えます。やはり王道はよい。虚無を断ち、天舞う音色、ヴィルフォーナ! 

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

「ほんとうの物語」シリーズは以降も続いていますが、「リズベルルの魔」シリーズは堂々の完結。

これまでの1~6章の感想で、7章のこともネタバレで書いていましたので、書く事がそこまであるわけではないのがなんとも。

しかし、これまで登場してきた人物全てに役割があり、みんなそれぞれの役に準じて頑張ってるのが非常にGOOD、とくにボルダナたちが太陽の舟のクルーに抜擢されたあたりは好みのシーンです。シズマが復活したあたりもいいし、剣主の宝剣を託されてヴィルフォーナが完全体になるシーンも印象深い。

個人的にはグレンが好きだったので、もっと彼の出番を増やして欲しかったです。



リズベルルとノルアードについて。

2人の恋愛模様は1章から描かれており、周囲に人間から見ればバレバレなのに、お互いだけが相手の気持ちを測れないというもどかしいカップル。しかしこれも成長したフィオがリズベルルに告白したことがきっかけとなり、ついに二人も結ばれます。そして結ばれてからは見事にイチャイチャしまくるバカップルへと約束された変貌を遂げました。

いつまでたっても行動を起こさなかったノルアードをヘタレと見ることはできますが、私はそうはみませんでした。むしろ彼は誠実であり、大人であるとも思います。1章のころのリズベルルはまだ13歳。この歳の少女に恋愛の告白を大人の男性がするのは、やはり白眼視されることも仕方ないでしょうし、この時のリズべルルはまだ肉体的にも子供でした。エロゲーの常識では小学生であろうと手を出しますが、この物語はそういうジャンルではないので、子供に手を出すのはNGです。ノルアードが告白したときリズベルルは17歳。ノルアードはおそらく26歳くらいになってるので、26歳と17歳ならば、外聞的にもそこまで問題ないように見えます。身も心もリズベルルが女性になってから、ようやくノルアードは動きだしたのですね。

まあ、ヘタレと言われても仕方ないでしょうけど。


ネムリーとボルダナについて。

私としては意外だったのがネムリーとボルダナの関係です。正直2人が結ばれるとは思わなかった。この2人は両親とも同じ兄妹ですし、ボルダナはネムリーを大事に思ってましたが、それは兄としての感情でした。ネムリーの方はやや度を越えて兄に甘えるシーンが多かったですが、肉体関係を結ぶほどに行くとは思わなかった。しかし今見直すと確かにネムリーの方は結構前から異性として見てることが分かりました。

なので、この2人の関係は、互が互いを異性として求めていたリズベルルとノルアードとは違い、ネムリーの求愛にボルダナが応えた形です。おそらく、この未曾有の脅威である虚無の襲撃が無ければ、2人がこうした関係になることはなかったでしょう。ボルダナ自身もそう思っています。しかし、それはそれとして、ネムリーの愛に応えたことを後悔はしていないのがボルダナです。これまで妹として愛していた感情を、異性に向けるモノへと彼は変化させました。彼にもネムリーほどではないにしろ、そうした下地はあったのでしょうが、それが吹き出るようなものではなかった。しかし虚無に立ち向かう剣主としての重責が、まだ若いネムリーのキャパシティを超えたとき、ボルダナを求める気持ちが決壊した。そしてボルダナもありのままの妹を受け入れた。これが2人の関係です(私見)


ジンとユフィーユについて

実は月の舟のコンダクターの因子を受け継ぐ存在という、物語の重要なファクターだったユフィーユ。確かに、他のコンダクターたちの特徴である、紫の髪と金の瞳の持ち主でした。この伏線は気付かなかった。そして彼女とジンの関係は、本編では明らかになってません、EDの一枚絵で2人並んでいたので、予想はできますが、前述の2組とは違い、直接的な肉体関係の描写などはなく、名言されないままです。まあ、あの流れでくっつかないことはないでしょうから、心配はないでしょう。


エイフォンについて

彼の立ち位置は実にクトゥルフ神話的でした。最初は叡智の探求を求めていただけなのに、触れざる知識に触れてしまったためにSAN値が削られ、不定の狂気に陥ってしまった状態なのが7章の彼です。ミルゥの献身による正気を取り戻した彼ですが、全体としてもう少し彼関係は掘り下げて欲しかったですね。この物語の欠点として、唯一そこが挙げられます。彼はクトゥルフを復活させようとして、クタニドとして眠ってるこの神を、サニドの銀鍵を抜くことでクトゥルフとして反転させようとしていましたが、これはこの地に封印されてるクトゥルフの眷属たちの精神汚染によるものでしょうね。私が大好きな作品である「Dear My Abyss」でも、クトゥルフ自身は望んでいないが、その眷属たちは彼を復活させようと躍起でしたからね。



永遠のメルディラージェについて

この話は、このエンダージェンを支えている「龍脈」となっているクタニド=クトゥルフが、地球上ではどういうことやってたかというお話。

舞台となる「メイリュウ学園」とは即ち「冥龍学園」であり、それはクトゥルフを意味している。そしてこの世界は一種の死後の世界であり煉獄。この学園から卒業できなかった物は、「サニドの銀鍵」によってドリームランドに封じられ、卒業したものは輪廻転生を迎えるというシステム。

物語の内容的には、双子の愛の物語だが、この関係はネムリーとボルダナの関係と似ている。同腹の双子の兄妹であり、妹のほうが熱烈に兄を求めているという点も同じ。だが大きく異なる点は、ネムリーはこのメルディラージェのヒロインのディナのように病んではいないということ。

作中で主人公ルナの親友だったハルカが、ディナに想いを寄せておりその思いが拗れて、ディナを殺害したことが語られますが、実はそれこそがディナが仕組んだこと。システム的には不明な点が多いですが、メイリュウ学園ではプリンシパルという力の象徴があり、学園の象徴となるのが12の力の内で時計盤で言えば12時の位置にある「メルディラージェ」。ディナはこれを手にすることで、人魚の姿となりメルディラージェとしてルナを待ちます。そしてルナをそこに連れてこさせるために利用したのが、ハルカという存在。ディナがどうやってメイリュウ学園のことを知ったのかは分かりませんが、双子の兄妹という関係上、現代日本でルナと結ばれることは不可能。ならばどうすれば自分がルナの「唯一」であり「永遠不変」になれるかを考えた結果が、ハルカに自分を殺害させて、夢の世界でルナと結ばれることです。

このディナの存在は、ニトロプラスの「鬼哭街」における孔 濤羅、孔 瑞麗、劉 豪軍の3人の関係を彷彿させられます。瑞麗も兄の濤羅とひとつになるために、豪軍を唆して画策し、最終的に目的を果たし兄とひとつになりました。ルナと濤羅に共通するのは、彼らは妹が殺されるまで、恋愛対象として妹を見ていなかったことです。そしてディナと瑞麗の共通点は、初めから恋愛対象とて兄を見ていたことです。そしてハルカと豪軍の共通点は、恋した女がイカレてることを理解しながらも、いや理解していたからこそ彼女の傀儡となったところ。

ディナにとってハルカはどうでもいい存在でしたが、ハルカがいるとルナが笑うから、その存在を許容していました。彼女にとってあらゆるものの価値はルナにとってどう映るのかで決まるため、ルナが好む人物は、自分が気に入らなくても笑顔で応じます。しかしルナが近くにいない場合は、どうでもいい存在に戻るので対応は酷薄です。