シャノンに始まり、シャノンに終わるゲーム。
個人的に、このゲームの全てと言ってもいいキャラがラスボスであるシャノン・ワードワーズです。ゲーム開始からして彼の独白で始まります。
「夢を見て、夢を叶える。それは人間だけに許された罪であり、報酬である」
いきなりのインパクト。声がいいから余計に。
このシャノンというキャラはラスボスとして珍しいです。その高すぎる知性と、コミュニケーション能力、そして心の奥に燃える果て無き夢など、魅力的要素がたくさん詰まってますが、特筆すべきは「待つ」ことが出来るところ。
彼は人類を滅ぼしたいのではなく、人類の進化する果てを見たいという、学者気質な男です。力の行使は手段でしかなく、暴威を振るう以外に方法があれば、そちらを試します。
カラミティモンキーズが崩壊する一因を担ったのはシャノンですが、彼は別段崩壊を狙ったわけではなく、「困難な状況こそ人間を進化させる」という自分の哲学に沿った行動をしたにすぎません。
そして、それ以後は100年待ち続けた。直接語られていはいませんが、彼が「カンパニー・マン」として人々に鑑干渉し、今の火星世界を築いたことは間違いありません。フォーサイスを創立した人物など、どうみてもシャノンです。
そして、火星に住む者たちがより良い世界を作ろうと試行錯誤を繰り返していたのなら、彼は行動を起こさなかったでしょう。しかし火星の人間は与えられた安住に満足し、現状維持以外をしなかった。
そこへかつて自分たちを封印した2人が目覚めたことをきっかけ(むしろシャノンが目覚めさせた感じがありますが)に、彼は「災厄」として再び人類に「試練」を与えます。
また、かれはごく自然に自分が優れた人間出ることを自覚しています。それ故にパッチという高エネルギーと融合したのなら、もっとも限界進化に近づけるのは自分だということも理解していた。その上で自分の限界を悟り、「困難な状況こそ人間を進化させる」という哲学に基づき自身を困難な状況へと追いやる相手を待っていた。それが自身の教え子である不知火義一だったことも彼は予想していたのでしょうか。予想していたのでしょうね。
前作Bullet Butlers や前々作あやかしびとではあった、「ルートによっては敵が味方になる」という展開も、シャノンには適用されません。ドミトリたち他の災害たちには適用されますが、シャノンだけは一貫して主人公たちと対立する立場をとります。
その上で、最初の2ルートはあくまで「カンパニー・マン」の姿でしかなく、本当のシャノンが登場するのは最終ルートのみという、東出作品として異色のキャラでもあります。
余談ですが、物語序盤で生徒の一人が読んでる「人類進化学」の著者がフラスト・ワードワーズであり、東出さんのラノベ「ケモノガリ」に出てくるCIAの女工作員が「シャーリィ・ワードワーズ」であることから、そういう家系なんでしょうね。
作品語りではなくシャノン語りでしたが、シナリオの細部は忘れても、シャノンというキャラを忘れることはない、そう思わせてくれたゲームでした。採点もシャノンに対する点数のようなものですね、