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geek_agentさんのかりぐらし恋愛の長文感想

ユーザー
geek_agent
ゲーム
かりぐらし恋愛
ブランド
ASa Project
得点
69
参照数
872

一言コメント

パンチ力不足…

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

笑いでエロゲー界を牽引する ASa Project の最新作。

終始軽いノリで話が展開するので、シリアス系や恋愛過程を重視する人は要注意。
(山あり谷ありではなく、ずっと平野を走る感じ)
体験版で確認してからのほうがいいかも。











前作「スキとスキとでサンカク恋愛 」よりは遥かに良くなった。
(世界観がオタクコミュニティー限定ではなく、狭く寒いパロネタオンパレードではなくなった)

ヒロイン声優のキャスティングも、前作よりは新鮮味があって面白かった。

システム面については、くっそ使いづらかったセーブ&ロードから普通の仕様に戻った。
シーンジャンプから選択肢ジャンプに変更され、ようやくジャンプ機能が意味を成すようになった。

個別ルートに入ってからも、理兎以外のルートで他のヒロインがフェードアウトしない所に、
メーカーの成長が感じられた。

幕間のアイキャッチなども凝っていて良かった。




ただ、笑いの双璧メーカー SMEE と比較すると、明らかに見劣りする点が多い。

SMEEの作品(特に~ピュア×コネクトぐらい迄)は、主人公がヒロインと惹かれあう過程が
明確に理解でき、また、それぞれが恋愛に向かい合う姿勢をしっかり描いている。

正直本作からは、主人公がヒロイン達から好かれる理由が全く理解できなかった。
「 Treating2U」の伊之助のようなイケメン(性格)なら、女が夢中になるのも理解できるが、
作中すべてに目を通しても、そんな魅力は皆無だった。
ヒロインの好感度を幼馴染の一言で片づけたいなら、しっかりと過去の思い出話でも導入すればよかったのに。

また、各ヒロイン&家族に対する主人公のやや上から目線の態度も、
各家に無償で居候させてもらっている身であることを考えれば、えぇ…?と思うことが多かった。

特に本作はフラグをへし折りながら分岐する形だが、選択肢そのものが、
お前、結局誰でもいいんじゃん…と思える恋愛をおざなりにした思い付きの様な選択肢なので、
一層、主人公に対して違和感と嫌悪感しか抱けなかった。

ジャンルが「かりぐらしADV」なら問題ないが、仮にもジャンルに「恋愛」と刻むのであれば、
その過程や、向かい合う登場人物の心情をもっと丁寧に描いてほしかった。

またテキスト(ギャグ)の中身ついても、声優の演技力でクスっと笑える個所もあるが、
「おっぱいしか取り柄のない女」や「乳首に一本毛が生えている」など、
頻繁に繰り返される低俗なネタを笑えるかどうかは、読み手側の感性と教養によるだろう。
私には少々厳しかったが…。

ついでに言えば、「高校生」の舞台に縛られ続ける ASa Project と、
既に「大学生」や「社会人」をテーマに作品を作り始めた SMEE とでは、
挑戦する姿勢や作品そのものの完成度も含めて、レベルの階層が一段階違うと個人的には感じている。




以下、ネタバレ雑記(ヒロイン毎)
















理兎
自分のルートよりも杏・ひよりルートでの賑やかしで輝く不憫な子。
ヒロインの中では常識人で甘えんぼ属性持ちだが、
前述の主人公への違和感からか、どうしても付き合いや好意が浮いて見えるのが残念。
CGと立ち絵のバランスが最も悪く、更には回想シーンのテキストのレベルが
他のヒロインに比べて極めて低いという不幸属性も完備。
中の人は演技の幅が広くて好きなんだがなぁ…。
(こいのす☆イチャコライズとか)




ビジュアル(+声)以外の魅力が皆無のヒロイン。
最初から最後まで、いいところ無しでだらしないまま終わる稀有な存在。
そもそも何で「汚部屋」属性にしたのか。
汚部屋はねーわ。
マジでねーわ。
二次でも三次でもチンコ勃たねーわ…w
恋人とか絶対無理だわ…。
セフレにしかなんねーわ…。
他のルートでもピリっとしたツッコミも見せ場もないから、正直、ヒロインである必要性を感じない。
旅館のエロシーンだけは唯一評価できるかも…。
キャラとしてはスゲー駄目だけど、中の人の声は一番安定して上手だったかな。




ひより
母親のインパクトが強すぎて影が薄くなりがちな可哀そうな子。
顔芸とは真逆に、実は一番まともなヒロイン。
ちなみに、序盤の選択肢でみよりさんばっかり追いかけると、たとえ髪留めイベントが発生しても、
フラグ分岐の選択肢さえ発生せずに、次の理兎のターンまで行ってしまうので要注意(笑)
主人公と恋愛関係に発展しても、普段の絡み方から一番違和感がなく受け入れられる。
ただし、流石に他人の家、しかも友人のベッドで初体験をするのは頭おかしい。
あと他ルートも含めて、みよりさんがしつこすぎて、食傷気味になるかも。
中の人の演技は比較的安定。




絢花
本編ではむっつり属性扱いだが、下ネタよりも弱ヤンデレ属性の立ち絵や
中の人の演技力で笑わせてくれるヒロイン。
弟がノック無しで入ってきたときのギャップや、ひよりルート時の反応など見どころが多い。
なお、ブロッコリーはアフロ部分が好きらしい。
メガネ属性も搭載しており、プレイ前は正直全く期待していなかったが、
作品を終えてみると一番気に入ったキャラ。
突然ドS化したり、頻繁に見せるドヤ顔も可愛い。




丸&奈々子
おまけ的なシナリオで、最後がぶん投げ気味。
奈々子ルートの場合、キレた理兎が少しだけ面白い。
丸ルートの締め方だと3Pがないのが不思議。





総評
色々惜しい作品。
主人公の魅力が薄く、借りぐらしの特色が映えない。
また、いくら何でも杏の設定がヒロインとして酷すぎる。
売りである笑いも、シルキーズプラスの「なないろリンカネーション」級の笑撃がなく、
全体で見れば、過去作の「恋愛0キロメートル」よりキレがない。


そろそろ ASa Project には「学生」という殻を破って、一つ飛ばした作品を作ってほしい。