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garuda3521さんの絶対幸せ宣言っ!の長文感想

ユーザー
garuda3521
ゲーム
絶対幸せ宣言っ!
ブランド
eighthnote
得点
85
参照数
262

一言コメント

七鳥未奏ワールド全開でした

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

StarTrainが好きで七鳥未奏作品もやらねば。という使命感から購入を決意
私がプレイした七鳥作品では本作が2作目となるのですが、七鳥作品らしさというんでしょうか青臭さをこれでもかと詰め込んだ作品だったと思います

タイトルの通り「幸せ」をテーマにしたシナリオなのですが、
とにかくくどい、あまりにもくどい、めちゃくちゃくどいですこの作品(褒め言葉
登場人物たちが持っている幸せについての価値観がそのままシナリオに反映されているのですが
他のエロゲと違い、とにかく登場人物の語りが多いです。特に終盤は
それがこのライターさんの個性ですから、合わない人にはとことん合わないんだろうなぁと思いました

先ほど本作のテーマは「幸せ」と述べましたがもうちょっと細かいことを言えば幸せを通た「人生観」もまたこの作品のテーマなのだと感じました

というわけで本題に入ります

本作が掲げる「幸せ」ですが、面白いことに登場人物である彩と秋代のもつ幸せ背についての価値観が真逆なんですよね。どちらが間違っているとか正しいとかではなく、どちらも正しい
その多面的な幸せの見方が本作一番の魅力だと私は思いました

まずは彩という人物について触れていきます

彼女には「人間は本質的には弱い生き物だから、誰かが幸せにしてあげなくてはいけない。誰かが誰かを幸せに、そうやって干渉しあっていけば幸せな世界が出来上がる」
こんな感じの価値観があります。おせっかいといえばそれまでですが、彼女なりの正義なのです
また、キャンディーポップという困っている人に飴玉を配り元気を与えるヒーローがいます。某国人的アニメのあのヒーローに似ていますね
このキャンディーポップこそ「誰かを幸せにする存在」の象徴として描かれています
彩の場合、自分が辛かった時に手を差し伸べてくれたキャンディーポップに扮した恵に感動し自らも誰かのキャンディーポップになろうとする。というわけですね



一方の秋代はと言いますと、
「人間とは本質的に強い生き物である。自らが幸せになろうと努力を続ければ、いつか幸せになれるはず」こんな感じの価値観を持っています。
両親に愛されず、難病を背負いながらも売春でお金を稼ぎ強く生きる
そしていつの日か幸せになって自分と同じ不幸な人間に勇気を与えたいと。そう思っている不器用ながらも心の優しい娘です


この二人は対照的なヒロインではあるのですが、本作においての幸せの価値観は彩が持つ「誰かが誰かを幸せにする」ことで生まれることをメインに置いていると思います
なぜならば、グランド(?)ルートである冬子シナリオで彩の価値観が尊重されているからです
冬子が恵にとってのキャンディーポップであり、恵が彩にとってまた冬子にとってのキャンディーポップになる。そうやって幸せになるというシナリオなのですが、じゃあ秋代の掲げている幸せはどこへいったんだと、そう疑問を抱くわけです(実際にぼくは思いました)
これこそがこの作品のミソで、あくまで”この作品”及び”七鳥未奏”が掲げる幸せは彩の価値観と近しいけれども、それが答えではないから自分で探してくれっていうことをクリエイターは言いたかったのではないかなと
その根拠となる部分がいくつかありまして

まずは、冬子という存在。彼女は自らのことを「俯瞰症」という自身の作り出した病にかかっているといいます。この「俯瞰症」というのは文字通り物事を俯瞰的に見てしまうことなのですが、
物語を俯瞰的に見る=ユーザー
としてとらえることができます。
冬子は幸せについて悩んでいるわけですが、恵の剣道で5人抜きしたら幸せになってくださいというそれなりに無茶苦茶な約束を守り一時は恵の元から去りながらも自らの在り方を見つけて恵の元へと帰ってきます

またこの作品の隠れたコンセプトとして「影響」があります
例えば自殺したみーちゃんが秋代や彩の幸せの在り方について、例えば彩の作った紙芝居が団長の妹の生き方に、例えば冬子が恵に恵が彩へと飴を与えて、例えば恵が冬子に剣道を通じて幸せを考えさせたように人の想いや行動が互いに影響しあい人を変えていくのです。
そんな描写を大事にしていました
その一例として、冬子が部屋に大切にしていた本
本棚以外は乱雑である部屋なのに、冬子は本棚だけは大切にしていました
それは、本というのは誰かが完成させた価値観であり冬子自身は自分の考えや幸せがぐちゃぐちゃになっていたことの現れなんじゃないかなって思ったりします(深読みしすぎかも…
作中では本の様な創作を自分のに取り入れることで、自分の価値感が形成されていくと述べられていました
先ほど述べた冬子=ユーザーということと合わせて
このゲームを通してユーザーに何かしらの影響を与えたい(主に幸せや人生観について
それが七鳥さんなりのメッセージなのだと思いました

先ほども述べましたが、秋代の存在がいい味を出しているなぁと思います
彩の価値観だけでは不幸な人は本質的には報われないのですなぜなら不幸ではない彩には不幸な境遇にいる人の気持ちはわからないから。そうやって不幸からの逃げ道を与えないよう、秋代という不幸の象徴を作り出すことで幸福だろうが不幸だろうがちゃんと幸せと向き合えよと、七鳥さん持ち前の説教臭さを駆使して伝えているように感じました

総評

めちゃくちゃライターさんの色が出ていた李、ヒロインが売春していた李、キャラクターがみな人間臭かったりと人を選ぶ作品であるのは間違いないです
同時に我が強い分、楽しみ方がわかる人には深いところまで楽しめるのでしょう
私は深いところまでとは言いませんがなかなかに楽しめました
StarTrainと合わせて七鳥作品が癖になりそうです(笑)
またOP曲の「あの日の願い」を筆頭に作中で使用されている楽曲は非常に良いです
ただ、原画に関しては良いと思う部分はほぼありませんでした、強いて言うならここがマイナスポイントでしょうか
阿修羅マンはイカンでしょ…


近いうちに、Nega0やすきま桜もプレイしたいですね~