奇跡なんか、いらない。
※本感想では創作彼女の恋愛公式についてのネタバレを含みます。予めご了承ください。
久々に良くも悪くも心を揺さぶられる作品をやったなぁって思います。
自分は体験版未プレイのまま前情報なく本作品を購入したため、制作スタッフさんのメンツを見てどちらかといえばCampusっぽいゲームを想像していました。
しかしながら、いざ蓋を開けてみるとあかべぇ色にテイストがデフォルメされていて、今後はこういう方針で行くのかなと楽しみが増えましたね。
いや、まぁ雰囲気で気づけよって話なんですがそれはそれで。
まずは本作品をプレイして自分が良いなと思った点について触れていきます。
本作はかなりテーマ性が強い作品で、最初から最後まで徹頭徹尾「クリエイター」というものにスポットを当てて物語が進行していきます。
印象深いのは個別ルートですね。逢桜以外の全ての個別ルートにおいて、ヒロインを恋人として見る前にクリエイターとして扱っています。
「絵を描くお前だから好きなんだ」とか生ぬるい表現ではなく「創作活動をしないただの女の子であるゆめみは好きではないと」はっきりと告げるゆめみルートなんかはかなり衝撃的でしたね。
この時代にここまで主人公に言わせるのはなかなか冒険しているなと感じました。
それと、賛否両論ありそうなラストシーンでも根幹が揺るぐことがなかったことがかなり好印象です。
逢桜の死に対しては多くを語らず、「ASのシナリオを完成させること」をベースにして個別ルートを締めることでテーマを一貫させていました。
そんでもって、エピローグ前の手を使えなくなった逢桜とトシくんが共同でシナリオを執筆するシーンがこの作品の答えなんじゃないかなって思います。
以下、本編より抜粋
慎一郎「この結末はハッピーエンドだと思うか?」
愛姫「それを決めるのは私たちだよ」
愛姫「少なくとも私はさ」
愛姫「この結末で幸せだったよ」
桐葉ルートでASのヒロインたちはそれぞれモチーフとなった人物がいると書かれていました。
愛姫はいわば逢桜の分身のような存在であり、このセリフこそが逢桜としての本心なんじゃないかって思います。
傍から見ればビターエンドに見えるシナリオでありますが、彼女たちなりの精一杯のハッピーエンドで締めくくっていることは非常に美しいと感じます。
自分も逢桜と同じハッピーエンド至上主義者ではありますが、最後の最期で芯がぶれてしまったらそれまで培ってきた作品の土台が崩れ去ってしまいますからね。
一応補足しておくと、自分はラストシーンでは逢桜が生きていたという解釈ではなくトシくんが逢桜の想いを背負ったクリエイターとして踏み出す第一歩。という認識でいます。
共通ルートで逢桜が作品はクリエイターにとって子供のようなものだと説明しています。
またトシくんと逢桜の二人で作った合同PNで「子供の名前」を例にして自分たちの名前から一文字ずつ取ったPNを提案しています。
以上の2点から、逢桜が亡くなる前にトシくんへと残したものは二人にとっての「子供」のようなものであり、その紐づけがクリエイターである二人らしいと妄想してニヤニヤしたりしています(キモい)
次に何と言ってもサブキャラクターが魅力的であること。これが一番だと個人的には思います。
結菜や紫音は良き友人でありライバルとして、先生をはじめとする才華学園のOGたちは創作活動の指針を示してくれる良き先輩として非常に良い味を出していました。
これは共通ルートの描写に尺を割いて非常に丁寧に描いていたことによるものが大きいと感じています。
通常の学園を舞台にした美少女ゲームでは、関係が出来上がった2年生あるいは関係をこれから構築する1年生の時系列で物語が進んでいくことが多いです。
しかしながら本作では入学から進級を2度経て3年生に上がるまでを共通ルートとして描いており、キャラクター同士の関係性の変化や日常の積み重ねというものを感じました。
これによって、キャラクターが別のキャラクターに対しての持つ思いや言動に対しての土台がしっかり作れていたと思います。
特に印象的なのは姫ちゃんですね。
彼女は奇抜なファッションセンス故に個性的なキャラクターかと思いきや、しゃべり始めると普通に生徒思いな教師であることが分かります。
ですが、個別ルートに差し掛かると主人公やヒロインに対して「身を削ることでクリエイターとして昇華することができる」という信念の元に創作を促します。
それは天才であるクリエイターの背中を追い求め続けた自分のクリエイターとしての矜持からそうアドバイスしているわけですが、なんだかんだいって結局のところ彼女は「教師」に落ち着いてしまいます。
逢桜ルートにてクリエイターとしての側面を尊重しつつも、逢桜に生きていてほしいとの本音を漏らします。これこそが彼女の本質であり彼女は命を賭して創作を行った逢桜とは違い「凡人」であるわけです。
といったように、日常パートにウエイトを置くことで描写の積み重ねを作り出しキャラクターのイメージが二転三転するといった楽しみができるという事が本作一番の魅力だと私は感じました。
というかマジで結菜も紫音もOGたちも好きすぎるから追加でのエピソード絶対アペンドにつけてね。これなかったら俺マジでキレちゃうから。
まぁ天現寺(名前うろ覚え)さんに関するエピソードがほぼなかったからその辺りの補完がされるのではないかなーと勝手に思ってます。(希望的観測)
と以上の2点が個人的に本作品を評価しているポイントです。
てかマジで一刻でも早くアペンド読みたいです。早くしてくれ頼む。
ネガティブな要素も書こうかなーと最初は思っていたんですけど、
正直数が多すぎて書いてるだけで疲れそうだし、そもそも好きな部分についてかきこんでいたら満足したのでこの辺で感想を締めくくりたいと思います。
マジでアペンド早くしてくださいね、お願いしますよ(しつこい)