主人公ビジュアルはギャグ要素満載だが,シナリオはまさかの純愛作品!?
本作は,今更言うまでもないですが,エロゲ界の老舗メーカー「elf」が
解散前に最後に制作した「麻呂の患者はガテン系」シリーズ3部作の
第1弾作品です。
本作の特長としては,主人公である「彦麻呂」という奇想天外な人物が
ヒロインである咲美にアプローチしていく様をコミカルに描きつつ,
NTLに向けて着々とヒロインとの関係を構築していくシリアスな展開を
ミックスさせた点ですね。NTR作品では,寝取られる主人公が無個性で,
その存在感が作品途中から希薄化する作品がほとんどですが,本作では,
終始主人公の言動が珍妙で,シナリオを進めていると仄かに愛着さえ感じる
印象的なキャラとなっています。
多分,前作のように胃がキリキリするようなシリアス展開を期待している方
には,ギャグが滑っているように感じられると思いますので,過度な期待はし
ない方が楽しめると思います。
また,本作は,本番のシーンと比較して診療行為に扮した性的悪戯のシーンの
ボリュームが非常に大きく,その点はNTL作品に何をユーザーが求めているか
で評価が分かれると思います。
私は,まっさらの関係から始まった二人が医者と患者という立場ながら,徐々に
咲美が麻呂に心を開いていき,それに比例するように性的悪戯がエスカレートして
いく展開が,前作同様,心と体の相関性を上手く表現していて面白かったですね。
そして,本作には,医者と患者という関係に終始する√と,そこから父娘の
ような関係にシフトする√の2つがありますが,その√間の対比も興味深いですね。
前者の√では,最後にカーテン越しに咲美を夫の前で犯しているわけですが,
三者の関係は最後まで
マー君
麻 呂 ↓ ↑(心=体)
咲 美
のままなんですよね。これは,当然と言えば当然ですが,夫は勿論,咲美も犯され
ていることを最後まで気づいておらず,二人仲睦まじく診察室を去っていく様子を
麻呂は眺めているだけですからね。麻呂の咲美への感情も性欲の対象でしかありません。
それが,この√の最後の
「間違ってた。もはやそう認めざるを得ない状況。こちらの一方通行では得られない
何か。その温まる宝物を麻呂は望んでたんだ…。」という独白がすべてを物語って
います。
一方,後者の√では,咲美が献身的な介護をすることで麻呂に情が移っていくともに,
麻呂の方も咲美に愛情を抱き,後腐れのない関係など糞喰らえとばかりに夜這いという
行為にまで及んでいます。咲美の心は依然として夫に向いていますが,体は段々と
麻呂の方に移りつつあるんですよね。
マー君
↓ ↑(心)
麻 呂 ← 咲 美
(体)
本作では,おそらく意図的だと思いますが,前作の二番煎じにならないように咲美が
寝取られる展開までは描かれておらず,麻呂は咲美以外の女性と前向きに結婚する道を
踏み出そうとし,咲美は麻呂との関係を完全には断ち切っていない様子が最後に描写さ
れています。
本作には,「2」「3」という続編があり,本作は主人公とヒロインの出会いを描いた
導入作品ということなので,続編をプレイした後で再プレイすると違った感想になるかも
しれませんね。