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gambiさんのそして明日の世界より――の長文感想

ユーザー
gambi
ゲーム
そして明日の世界より――
ブランド
etude
得点
50
参照数
1485

一言コメント

美しい物語・・・本当に?

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

日常シーンがあまりにかったるかったのと、個別ルートもそれほど面白いとは思えなかったので、御波ルートだけ終わらせて1年以上放置してました。
で、今夏シュタゲが延期になったことで夏休みに時間が空いたので、オールクリアに価値があるという評判を聞いて残りのルートをプレイしたのですが、残念ながら感動も爽快感も清涼感も感じることはなく、残ったのは違和感と不快感だけでした。
これ以降、ルート毎の自分の感想を書いていきたいと思います。

御波ルート:眠くなる話だとは思いましたが、特に悪い印象はなく、かといって良い印象もなくといったところでした。で、この後1年以上の中断に入ります。

青葉ルート:1年の中断を経て、かったるかった共通日常シーンの大半がスキップできる状態でプレイしたので、眠くはなりませんでしたが、主人公の思考にイライラしっぱなしでした。もうあれはよくある「ギャルゲの鈍感主人公」とかいうレベルではありません。青葉が真正面から女性としての好意をぶつけてきているのに、それを認めずに以前の自分の知っている友人としての青葉を求めて逃避を続ける場面で、イライラは最高潮に達しました。残りわずかな時間の中で好意を向けてきている女性と向き合わないでどーする!これは、青葉への侮辱以外のなにものでもないでしょう。
最後は綺麗にまとめたつもりかもしれませんが、途中の印象が最悪だったせいでなんともすっきりしないまま終わってしまいました。

夕陽ルート:青葉ルートでの主人公の印象がかなり悪かったので、このルートで払拭されるかと期待したのですが・・・結論からいうと、余計に悪くなりました。
まず、このルートでの昴君、勝手に結論を出して自己完結して一人で納得し、その自分の考えに基づいて行動します。で、それに対して夕陽が反応を示し、それが自分の意図したものと違うと困惑したり怒ったりします。自分にとって最善の方法が夕陽にとっても最善であると信じているわけですね(夕陽のためにはとか言ってますが、つまるところはそういうことでしょう)。もうね、アホですかと言いたくなりました。残りわずかな時間の中で、大事な人が本当に望んでいることが何かをどうして考えてやれないのかと。
夕陽も夕陽で昴に対する依存があまりにも強すぎて(互いに支え合ってと作中では述べられていましたが、依存し合っての間違いでしょう)、気持ち悪さとイライラがどんどん募っていきました。途中からは昴をシェルターに行かせるために依存するのをやめようとしますが、あんな様子を見て安心できるわけがありません。本当に安心させたいのなら、「さようならドラえもん」ののび太でも見習え!
そして、朝陽ねえちゃんが終盤で漏らした言葉にいやな予感を感じながら朝陽ルートに入ることになります。

朝陽ルート:夕陽ルートでの言葉で、「これは、朝陽と昴が依存し合って夕陽が切れる展開になるのでは」と危惧していたのですが・・・はい、全くその通りになりました。
このルートで自分がそれまでも漠然と感じていた違和感と気持ち悪さの正体が分かりました。日向姉妹と昴の関係性についてです。夕陽の昴への度が過ぎた依存は、共通ルートからもうっすらと感じながらも夕陽ルート以外では顕在化することはなかったので、個別ルート特有のものなのかと思っていたのですが、違いました。彼女は共通ルートの時点ですでに病的なレベルで昴に対して依存してしまっていたのです。他の2人のルートでは、他の人を愛しても昴は自分のことを常に考えていると思い込んでいたので(実際は全くそんなことなかったと思うのですが)問題にならなかっただけなのですね。
そして、姉の朝陽も実は昴に依存していたことが分かります。ただ、彼女の依存は夕陽のような病的なものではなかったので、この点はあまり気になりませんでした。問題は二人が付き合っていることが夕陽に発覚してからです。お互い愛し合うことすら妹に配慮しなければならないのは一体どうしてなのか。これが亡くなったお母さんとの約束、自分への誓いを守るためだというのならば、それはもはや誓いではなく呪いと呼ぶべきものです。ですが、普通の母親ならば娘たちが同じ人を愛して、その想い人が選んだのが姉だった時、妹のために姉に身を引けというでしょうか?そんなはずがありません。
ですが夕陽は引きこもり、朝陽と昴は誓いを破ってしまったといって自分たちを責めます。
そして、エンディングで昴は二人のものってなんですか?これはエロに特化したゲームではなくシナリオに特化したゲームだったはずですが。このエピローグの部分でついに耐えきれなくなり、ctrl長押しを使うことになりました。

ノーマルルートとアフター:この二つに関してはよくまとまっていて悪くなかったと思います。ですが、ここに至るまでのマイナス要因を打ち消すほどにはなりませんでしたので、特に感想はありません。

総論:とにかく主人公と日向姉妹との関係が歪すぎて、とても綺麗な物語とは呼べませんでした。○校生になってまで風呂を含めた日常の世話をして、同じ部屋で眠っているような異性の幼馴染が存在している人がいて、その関係を美しいなどと思えるでしょうか?自分には到底無理です。
そもそも、姉妹のお母さんが亡くなったことが昴と姉妹の今の関係の始まりだったといいますが、そんなものは(言い方は悪いですが)現実でもフィクションでもよくある悲劇です。もちろん、その後の心のケアなどで近しい人たちの助力を請うことはあるでしょう。ですが、それは過度の依存を肯定する根拠とはなりえません。それを「夕陽を守る」という名目で昴と朝陽が肯定してしまったために、この3人の関係が歪んだものであると自分は感じることになったのだと思います。
ところで、もし星が落ちてこないで昴が自分以外の女性と結婚することになったら夕陽はどうするつもりだったのでしょうか。夕陽は昴が傍にいないと生きていけないようですが、姉妹以外のルートで明らかになったように昴はそんなことはないですからね。気になります。

長々と書いてしまいましたが、CGと音楽に関しては文句のつけようがないほどに高レベルです(朝陽の髪型はもうちょっとどうにかしてほしかったですが)。ですが、肝心のシナリオが自分には全く合いませんでした。多分これから先は健速氏のシナリオのゲームをプレイすることはないでしょう。