未完成の名作。しかし作品の面白さは平均値80超えしていてもおかしくないモノ。ではなぜ評価が低いかというと…
一番大きな原因は、なんと言っても後味の悪さであろう。
シナリオの構成を考えると、【涼→くるみ→帆月】 という順番でのクリアを推奨したいが、
ラストの帆月シナリオの後味の悪さといったら尋常ではない。
なまじシナリオが良かっただけに、この報われなさは心を激しくブルーにする。
別に、皆笑っている文句なしのハッピーエンドじゃなければいけない、といっているのではない。
世にはバッドエンドな超名作は星の数ほど有り、それらの作品には百年単位で支持されている作品も多い。
しかしやはり私は蛇足であろうがなんだろうが、この物語に、この主人公に救いを求めずにはいられない。
モンタギュー家とキャピロット家が手に手を取り合うハッピーエンドなロミオとジュリエットがこの世から消えない事と同じ気持ちであろう。
さて、一番言いたい事を書いたので、次に評価が低い理由をさらに分析してみよう。
箇条書きにすると、
①主人公が救われきれてないED
②非フルボイス
③シナリオの非整合性
④ルートの不足
⑤収束シナリオの無
①については上記を参照の事
②非フルボイス
主要女性キャラにしかボイスが付いていないというのは如何なものであろうか。
予算と時間と容量がいくら足りなくとも、サブキャラクターを軽視してはいけない。
「勝敗は副将が握る」ではないが、
高い評価を得る為のキーはサブキャラクターが握っていると言っても過言ではないだろう。
主人公に声をつけるかどうか?
これは難しい問題で、声が合えば高評価の礎となるが、
合わないと悲惨で、物語の評価がサブプライムローンの如くとなることすらあり得る。
さらに主人公は発言数が多く、製作コストや容量の問題もある。
だからこれについては声が付いていなくとも納得がいくのだが、
主人公以外の男性キャラや非メインキャラの音声が省かれていると、
「手抜き作品」とのイメージ、不満が噴出する。
これはフルボイスがデフォルト、
さらに「アンチ紙芝居」が叫ばれ、口パク、立ち絵の動きもデフォルトの仲間入りを果たしかけている昨今、
ボイスすらケチる事に対するイメージの悪化はさらに進行しているものと考えられる。
③シナリオの非整合性
ライターが複数人で書いているので、ある程度は仕方ないのであろうが、
弊害が如実に現れてしまっている。
共通シーンと分岐ルートの整合性が上手くいっていない上、
キャラクターの性格・特性が微妙に食い違っており、違和感を強く感じさせている。
これはもう、「各ルートは量子力学的他世界解釈・別世界の話なんだね!」などと、脳内補完せざるを得ないレベルである。
④ルートの不足
多くを語る必要は無い。
桃ルート。それだけだ。
⑤収束シナリオの無
3つのシナリオがあり、推奨攻略順を
【涼→くるみ→帆月】
とした訳だが、これはシナリオ上帆月は最後にするべき、
しかしくるみを最初に回すと訳がわからないことになりかねない。
そういった理由で組み立てた順序であるのだが、
どんなルート順でプレイしようが、主人公は結局救われきれてないので
後味が良くないことは変わらない。
若干涼シナリオで希望がチラリと見えた気がするが、
それでも全シナリオにおいて主人公死亡説は拭い去れない。
そんな中、3つの物語を収束させる真ENDを求めるのは自然な流れだ。
全てを説明せず、疑問点は読者の想像に任せる。
これは、本、映画、アニメ。古今東西あらゆるメディアで用いられてきた手法であるが、
この類の物を楽しむには「想像させる材料」が十分にある事が前提であり、
そうでなければただモヤモヤさせるだけだと思う。
そして当作は残念ながらその材料が足りていないと言わざるを得ない。
だから収束させるシナリオを書くことで、問題の解決、または材料の提供を図って欲しかった。
と、5点について論ぜさせてもらったが、皆の低評価の理由付けにはなっただろうか?
以下、極めて主観的な垂れ流しを。
※たまソフトについて
世界ノ全テで一躍注目を浴び、lost childで過剰な期待と広告に押しつぶされてしまったたまソフトであるが、
この永遠の終わりにを完成形に昇華させることで是非多くの者がメーカー買いをする会社になって欲しいと思う。
※絵について
立ち絵キャラの目が凄く良い。
長浜めぐみさんという方が描かれているようだが、今後の作品にも大いに期待がもてる。
背景も細かく描かれていて、壁の染みやエアコンの老朽化にまでキチンと手が加えられている。
※声について
流石。素晴しいの一言。
ベテラン声優さんの場合、技量の高さは折り紙つきなわけであるし、
アフレコ(*1)ではなくプレスコ(*2)に近い感じで会話などを収録すれば、
アニメ「紅」や「夜桜四重奏」(*3)のような流れるようなシーンが収録できると思うのだがどうだろうか。
勿論、その場合はフルボイスが前提条件になってしまうが、
エロゲの会話シーンに「相槌」が使える。
これは画期的でクォリティを跳ね上げるように思えてならない。
プレスコとたまソフトの未来に乾杯。
(*1)アフレコ:絵に声や音楽を当てる手法。現在のアニメ界の主流作成方法。
(*2)プレスコ:声を収録してから絵を作る手法。会話などにおいて相槌など驚くほど自然な流れが生み出せるが、反面、製作の非効率化や参加する全声優に技術を要するなどデメリットも多い。
(*3)「紅」「夜桜四重奏」:
プレスコを用いたアニメの成功例。
シナリオが面白いだけでなく、どちらも驚くほど会話がリアルなのでまだ鑑賞されていなければ是非拝見なさって欲しい。