良くも悪くも「key作品」
※サマポケと他のkey作品のネタバレを含んでいるのでご注意ください。
【評価点】
・全体的に今までのkey作品をリスペクトした設定や世界観になっており、原点回帰でkeyファンを満足させる内容になっている(ただし後述するようにこの部分はマイナス点もあり)
・共通ルートのテンポが良く特別不快な登場人物もいないので、スムーズに進められる。
ヒロイン攻略もしやすく、ギャグもkeyらしくて小気味良い。
・卓球ゲームや島モンファイトのような過去作にあった感じのミニゲームが充実しており、本編以外でも楽しめる要素がある。
・BGMの「Sea,You&Me」と「Sea,Your Memory」は、同じく夏が舞台のAIRのBGMと並ぶくらいのクオリティで、さすがは麻枝准だと思う。
【マイナス点】
・評価点で述べたようにkeyの過去作を強く意識して作られたからか、見知った設定や展開が非常に多い。
そのためどうしても展開が読みやすく、二番煎じ感が否めない。
それでも過去作と肩を並べられるようなクオリティなら納得だが、シナリオボリュームが少ないせいか、個別ルート、ALKA、Pocket含めて二番煎じの言葉通り『薄い』と感じる。
以下、総評までいくつか過去作と比較した記述あり。
・具体的にはALKA編うみちゃんの幼児退行と、AIR編観鈴の失われていく記憶。しろはが亡くなってからの羽依里とうみ、渚が亡くなってからの朋也と汐の関係。
過程は違えど、似たような設定でもサマポケ側の方がその後の展開含めてクオリティが低い。
・上記のBGMを除いて全体的に音楽に力を感じない。
出来は悪くないのだが、「夏影」「旅」「Little Busters!」のような心を鷲づかみにされる楽曲はなかった。
曲作りが常に高水準なkeyだからこそ期待が高かっただけに残念。
・羽依里が島に移り住んでからしろはが死に、うみちゃんが絶望して過去へと旅に出るまでの過程が簡略的。
そのためPocket編ラストの感動的なシーンになっても、物語への没入感が足りなくいまいち。
主人公の過去も含め、もう少ししっかり描写するべきだと思った。
【登場人物・各ルート評価】
・サブキャラ&モブキャラにインパクトの強い人物が多かった。
・個別ルートは、設定は過去作と酷似。他の部分は可もなく不可もなく。せっかく島という狭い舞台なので、ヒロイン同士の繋がりを強くしてほしい。
過去編であるPocketでも、幼い頃の天善達などが見たかった。
・リトバスの筋肉ルート、Rewriteのおっぱいルートのようなネタルートを入れてほしかった。
今作は良一がそのポジションなので、裸祭りルートのようなものを。
・主人公の男友達が、過去作の春原、リトバスの男メンバー、ウルフ吉野と比べると主人公との絡みが少し淡白。島で初めて出会った設定なのでこの部分は仕方なしか。
【嬉しい?ファンサービス】
・うみちゃんの声優が田中あいみで、『うみ→UMI』なのは偶然か中の人ネタか。
・鴎の『はだかのひと』とリトバス小毬の『は○たのしお』
・「さま~あばんちゅ~る」とリトバスEXの「Sha La La Ecstasy」
・他にも細かいところでkey作品の小ネタ的なセルフオマージュが多数。
【総評】
・『7年ぶりのkeyのフルプライス新作』という重すぎる看板を背負うのは相当のプレッシャーがあったと思われる。
Rewriteがkeyらしくないと酷評され、ある意味徹底的に過去作をリスペクトした今作は制作者とファン、共にリハビリともいえる作品に感じた。
しかし無難な作品作りに徹したせいか、目新しさを感じない力不足な作品と言わざるを得ない。
正直ここまで過去作と内容を被らせたものは、『新作』と言えるのだろうか?
前作のRewriteは難解な考察もあり、内容も確かにkey作品といえないようなものだったが、恋愛ADVとしてのクオリティは高いほうだった。
・今作のサマポケは鍵信者と呼ばれる人たちにとっては満足する作品だったと思う。
しかし麻枝准がシナリオから身を引き、いたるや都乃河もいなくなった今、今後過去の作品たちと肩を並べられるような作品作りは難しい気がする。
『新しいkey作品』作りとそれを受け止めるファンがいることを願って、次回作に期待したい。