僕にとってのホワイトアルバムは半分以上はるかのことなので、他シナリオについてはスルーということで。
男でも女でもなく、作中の表現に拠れば「二人の少年」。
しかし物語の中で、「性の呪縛」は否応なく二人を「男」と「女」に分け隔ててゆく。
冬弥とはるかの関係というのは、多分に猶予期間的なものだったのだろう。
はるかシナリオで描かれたのは、そういうモラトリアム時代の終焉と喪失だったように思える。
はるかの中性的な気質───「少年」性は、その過去に原因を求められる。
両親はもちろん、周囲からとても有望視されていた兄の死。
一方で残された自分は、おそらくそんな「スーパースター」になどなれないであろう。
そんなときに隣で手を握り続けてくれた幼なじみを安息の場所として、
はるかは自分の可能性をすべて放棄してしまったのだと思う。
兄の死を切っ掛けに、はるかは髪を切り、テニスもやめてしまう。
このエピソードはシナリオの核と言えるだろう。
切られた「髪」と「テニス」の放棄を、それぞれ“女性”と“未来(成長)”の放棄と読み替えれば
シナリオ中で「髪」と「テニス」のふたつが、重要な暗喩としていくつも散りばめられているのが判る。
(あと「空」とか「自転車」とか、このシナリオは暗喩的な表現が多い)
少年のままでいられるということ。
自分の未来から目を逸らし、永遠に未完成でいられるということ。
もちろんその安息は偽りであるし、代償には高い利子が付く。
>【はるか】 「…結局、何にもなれなかったね、私」
>【はるか】 「諦めずに何か続けてたら、ひょっとしたら、私でもスーパースターになれたかも知れないのにね」
>【はるか】 「私が死ねばよかったんだね」
>【はるか】 「そう思っただけ。あの時に…」
>【はるか】 「…結局、兄さんは戻ってこない。当たり前だけど…。
> …ただ、私が死んだだけ。…私は私になるのを自分で捨てちゃったんだ…」
>【はるか】 「自分になれなかったのに、スーパースターになんて、なれないよね…」
シナリオ中に出てくる「スーパースター」という言葉は、はるかにとっては“兄のような人間”を指すが、
はるかに共感する冬弥にとっては、また別の意味を持ってその胸を穿つ。
アイドルである由綺と釣り合うような───スーパースターになれない自分。
だから少年のまま、未完成のまま、現状の自分を肯定してくれる幼なじみとの関係は、
スーパースターになれるはずのない冬弥にとって、都合のいい逃げ場所となってしまうのだ。
けれど、その逃げ場所もいつしか喪われてしまった。
気が付けば「二人の少年」は大人の「男」と「女」になってしまっていたから。
成長した自分と向かい合って、自分を認めてあげなくちゃならなくなって、そうしたら気付いたのだと思う。
冬弥も、由綺も、はるかも、ただの人間、それ以上の何でもないことに。
スーパースターになんてなれない自分でも、愛してくれる人が確かにいることに。
自分はスーパースターになれないから、兄の代わりに死んだほうが良かったとか、
自分スーパースターになれないから、アイドルの由綺を愛する資格がないとか、
それはスーパースターなどではない、けれどかけがえのない親友への裏切りではないのか?
>いろんな人に囲まれて、少し疲れたような顔をして、それでもやっぱり微笑んでる、お姫様みたいに見える、由綺。
>再び少し怖じ気づきそうになる。
>だけど…。
>一瞬、はるかの流した涙が頭の奥の方で光った。
>俺は、そう、決してスーパースターなんかじゃないけど、でも…。
>でも、俺はそれでも由綺を愛せる。
>はるかのことは、愛してる。
>だけど、そのことが由綺への気持ちをますます臆病にしてしまうのなら、俺ははるかを裏切ることになる。
>幼なじみの、親友としてのはるかを。
>それだったら、たとえ強がりでも、俺は由綺への気持ちに正直でいてみせる。
>はるかへの気持ちにも正直でいる為に。
ところで、はるかは実の兄に対して、どのような感情を抱いていたのだろうか?
冬弥の主観に拠れば、「彼女が自分の兄を見つめる眼差しには、特別な何かがあったように感じられた」という。
また冬弥はその頃のはるかについて、
「この俺ですら、近づき難いと思ってしまう時があったくらいに、はるかは真摯で、前向きで、そして美しかった」
とも回想している。
このシナリオの主題、というかイメージを言葉で表すのなら、
“未完成”や“未成熟”、そして“未分化”といった表現があげられると思う。
冬弥とはるかの関係が、明確な「男」と「女」に分かたれていなかったのと同じように
この頃のはるかは、兄に対して「肉親」と「異性」への愛情が区別できていなかったのではないか。
冬弥の過去の回想から想像されるはるかは、既に大人のになりかけのミドルティーンだ。
おそらくはるかは、この頃すでに“少年期”の終わりを迎えていたはずなのだ。
これ以降、はるかは冬弥が近づき難いほどにどんどん美しくなっていく一方だっただろうし、
同時に兄に対する幼い恋慕も、成長とともに次第に切り分けて受け入れていったのではないだろうか。
本来なら。
ところが、そうなる前に大好きだった兄は死んでしまう。
兄に対する肉親へのものとも異性へのものともつかない愛情は行き場を失い、未分化のまま、
同じように幼なじみとも異性ともつかない冬弥への愛情を代替にしてしまったのだと思う。
この「兄」と「幼なじみ」との混同が、冬弥への「男」としての認識を拒否させていた、と考えられる。
>【はるか】 「冬弥が、いつも隣にいたから。兄さんがいた場所に…」
>【冬弥】 「…………」
>【はるか】 「兄さんの場所で、兄さんの言う言葉を、言うから…。いつだって…」
>【冬弥】 「でも…」
>
>俺はうつむく。
>
>【冬弥】 「俺は河島先輩じゃないから…」
>
>俺は、あの人みたいなスーパースターにはなれそうもない。
>はるかが、そうなれなかったみたいに。
>
>【はるか】 「判ってる」
>【はるか】 「冬弥が兄さんじゃないって、判ってた。ずっと前から」
>【はるか】 「ただ…ごまかしてた。好きなの、兄さんの想い出じゃなくて、冬弥の方だってことを…。
> …兄さんの想い出で、嘘、ついてた…」
したがって冬弥とセックスしてしまい、冬弥を「男」として見てしまう(≒兄の代替として見れなくなってしまう)と同時に、
それまでごまかし続けてきた兄への想いと冬弥への想いの混同も、強制的に分化されてしまうのだ。
今回、gonさんの「WHITE ALBUM」感想内ではるかシナリオについて語られてるのを見て
衝動的にツールでテキストぶっこ抜いて、はるかシナリオ全文読み直していたのだけれど、
結局は辛抱たまらなくなって、久々に最初から攻略しなおしてしまった。
しばらくエロゲーから離れてたけど、たかがエロゲーに考察だの議論だの無駄な情熱を捧げてた頃の熱が蘇った。
愛してる。やっぱ俺、エロゲー超愛してるわ!
原田さんのシナリオは暗喩が多くて、ぶっちゃけ難しすぎる部分もあるのだけれど、
想像を掻き立てる箇所も多くて、ツボに入ったときの破壊力は絶大だ。
エロゲの場合、ヒロインのトラウマとかに触れる場合がすごく多い。
そういう人間描写の際に、あまりに詳細に分析じみた書き方だと、頭でっかちで興醒めな文章になってしまうし、
逆に曖昧で遠まわしすぎる書き方でも、結局はどうとでもとれる伝わらない文章になってしまう所だが、
このシナリオは難解だけれど、悪戯に遠回しなわけではなく、むしろイメージを膨らませているのが素晴らしい。
難しい文章が名文ではないのはよく言われることだし、それは正しいと思うが、
一方で名文が読み手を選ばないというのは、読み手だけに都合のいい大嘘だと思う。
少なくともホワイトアルバムは、読み手にある程度の読解力だの想像力だのを要求する。
特にはるかがテニスを再開したところを見つけて、ベランダで倒れて、カーテン閉めて、
でもそういった空気に耐えられなくてお風呂場でエッチして、子どものように眠って、
次の朝の色々と取り返しのきかない空気の中で淡々と別れる一連の流れが本当に素晴らしい。大好きだ。
ホワイトアルバムはオカズに向いてないというか、はっきり言って抜くには厳しいのだが、
このシーンは至るまでの流れや終わったあとの空気とか含めて、エロゲ史上に残る名エロシーンだと思う。
僕はこの部分、なんど読んでも涙が出そうになるのだ。
その愛おしさと、喪失に。
ちなみに、gonさんの感想内で語られていた、二人のその後についてですが、
まぁ、僕は普通に由綺に別れを切り出して修羅場になると思ってますが
やり直してみたら確かに冬弥は、由綺とはるかのどちらを選ぶか明言してないんですよね。
ですが、とりあえず結論を先送りにして二股を続けるようなことはないんじゃないかなと。
そういうモアトリアム的な時間は、もう終わってしまったのだと思うので。
というようなことをレスしようと思って書き始めたら、長文だわオナニーだわでレスるのはやめました。
ほとんど自分の書きたいこと書き散らしただけなので、まぁ単発レビューということで。
ところで一度は「(おかずに)全く使えなかった」と評価したホワイトアルバムであるが、
本当にまったく使えないのか10数年ぶりに再試行してみたぞ!
結果は、意外や意外。
理奈嬢のステージ衣装半脱ぎエッチでならわりと余裕で抜けることが判明したのだ。
というか、その気になれば理奈嬢のパンチラや二の腕でもけっこうイケそうなことが判ったぞ。
評価も一ランクアップで「あまり使えなかった」に変更だ。
やったぜLeaf! (WA2はせっかくの中村絵だから狙ってこうぜ!)
さらに禁断の秘技としてアニメ版やPS3版を利用するテクもあるぞ。
そう、もちろん○樹奈々だ! 脳内で理奈嬢と同期させることによって、
理奈嬢のおっぱいを揉むシーンがまるで○樹奈々のおっぱqあwせdrftgyふじこlp