すばらしいが、期待したほどでもない。キャラの魅力不足、田舎の雰囲気不足、細かい不満点など・・・名作になれなかった良作です。
「日本らしい爽やかな田舎」で描かれる物語に期待し始めた本作。
非常に大きな期待に、それなりに応えてくれました。だからこそ、「ここがこうならもっとよかったのに」と思う不満点が多い一作です。
大自然に囲まれた村の雰囲気、ひまわり畑、教会。そのどれもが「題材としては」素晴らしかった。そこだけで基礎点50点。
ただしその雄大さ、感動が活かしきれていない。画面の中でのフィクションにしか感じられなかったのが残念。
キャラ同士のかけあいはまぁまぁ面白い。秘密基地づくりや海の家といった色々な出来事も割りと自然。
ヒロインは可愛いけど、しかしちょっと個性が薄いかも。例えば金剛石にはもっと「お嬢様」を感じる描写があってもよかった。聖歌隊も名ばかりだし。
秘密基地もどこか、あの「秘密基地」特有のワクワクを感じられない。お祭りも海も同様。
ペットセメタリーも教会もキリスト教も、背景・舞台としての機能しかなかった。
朧白村という実在の村があって、そこに息づく人々が居て、シンボル的な場所があって・・・という基礎的な部分はとてもいいのに。
例えば戯画の「この青空に約束を―」では、主人公は寮暮らし。海の見える高台に建つボロい寮だ。
夜になると寮の屋上(屋根)に上る。湖風を感じながら、そこで黄昏れたり、悩みを相談したりされたりといった時間を送る。何度も何度も。
そこで流れるBGM(風のアルペジオ)を聞くだけで、その情景やそこで起こったことを思い出す。行ったことがないのに「懐かしい」と感じる。そんな場所が、この作品にはなかった。
「この場所はこんな場所」というシンボル化が出来ていないのだろう。
他の方の感想にちょうど共感できるものが会ったので引用。
確かに夏です。蝉が鳴いています。向日葵咲いています。田舎です。
でもそれだけで、田舎の夏を思わせる空気とか、そういったものが感じられません。
作中主要人物を見ても、舞台である朧白を素敵な空間と感じている(と読み手が思える)のは
陽介と月子だけ。メインヒロイン3人が見ているのは陽介であって朧白ではありませんし、
ヒナに至ってはそれを感じ取れる年齢に達していません。そして達した後も、あるのは
育ての親や周囲の人々への思いのみ。
朧白という田舎やそこで過ごす夏の魅力を、作中人物から感じ取れないのです。
(中略)
そして何より、朧白聖歌隊の団結力がイマイチ伝わってきません。
前述の通り、ヒロイン3人が見ているのは陽介あるいはヒナであり、ヒロイン同士の
絡みが非常に薄く感じられるのです。
みんな昔から仲がいいんだなぁ、程度には感じ取ることができます。しかし
「こんな素敵な仲間達と過ごせる田舎っていいなぁ」と思わされることは最後まで
ありませんでした。
(amaginoboruさん : http://erogamescape.dyndns.org/~ap2/ero/toukei_kaiseki/memo.php?game=17190&uid=amaginoboru )
これに関して、なぜここまでのめりこめなかったのかを考えてみると、ひとつは演出によるところにあり、ひとつはテキストによるところにあるな、と。
例えば夏のビーチなら、波の音がして、カモメの声がして、そして暑い。
例えば向日葵畑なら、蝉の声がして、虫が飛んでいて、うだるように暑い(行動が制限されるレベルで)。
こうした部分をもっと丁寧に、音声・グラフィック、そしてシナリオで取り上げて欲しかった。
ある「空間」に人がいるときに、そこで「良い」「悪い」双方の意味で何かを感じる。その「悪い」部分が描かれなかったために、臨場感が薄れてしまったのではないか。
以下、それぞれのルートに色々とツッコミを。不満コメが多いけれど全体的に満足度は高いです。
金剛石ルートは王道…かと思いきや、謎のお面が登場。突然のファンタジー要素に違和感を感じ、主人公が困難を難なく超えすぎてちょっと味気ない。
瑠璃子さんの感情の変化が描かれるのは非常によかった。また村長に認められるのはなかなか気持ちが良いもの。
シナリオの一番最後のセリフが瑠璃子さんのツッコミってどうなのよ。
ルカルートは初っ端から他人に明確な悪意を向けられるという予想外の展開…と思えば、それはオカルトだったというさらなる予想外に大きな違和感(しばらく美術の先生が犯人だと思った人は多いはず)。
青バラがルカに「自分の感情に正直になれ」的な事を言いたいだけだったら、盗撮まがいのことをしたり、あんなシリアスを演出したりする必要はなかった。青バラの「あれだけ悪者よろしく登場すれば・・・」というセリフだけではどうにも納得出来ない。青バラの「マガイ様によろしく」というセリフもあまり回収されないし・・・。
青バラが消えた後はただただイチャつくだけ。もう1個くらい困難があって青バラ再登場とかしてほしかったところ。
それからこのルートだけ月子ちゃんにオカルト設定がついて大活躍しすぎ。ライターにとって便利だったんだろうなという感じ。
詠ルートは、前の2ルートに突然出てきたファンタジーと黒猫の伏線が回収されるルート。やっと納得。なるほどこの村の不思議は詠みによるものだったのか、と。(それだけではないけど)
しかし詠との恋愛展開が急すぎてまったくついていけない。詠との日々の中で彼女の有能なところ、頼りになるところを評価してゆく。また裸を見て恥ずかしがったりも。ただ愛情的なものはまったく感じられず。初セックスまで好きとか愛してるとか殆ど言ってないだろ主人公。
それと、子供の頃登れなかった木に登れるようになったことへの主人公の驚きのなさ、「今更」という言葉だけに反応して逃げるという微妙なキッカケ、大した恋愛描写もなかったのに残滓と猫の選択を迫られる主人公、そこで猫を選択したこと=告白みたいになっていること、まったく躊躇いも苦労もなく人間になった詠・・・あのへんは無理があったのでは。それでもこのルートでは何回か泣きました。
あっ、尻を叩かれて感じる詠、あれは素晴らしい。
そしてヒナルート。プレイ前にレビューをみて超期待してやったのですが・・・
ここまでファンタジー要素マシマシできたのに、このルートにほとんどファンタジーがないことにものすごく違和感。お面とか青バラとか猫とか、他のルートではファンタジー要素がキーだった(それがなければ物語が成立しない)のに、ヒナルートでのファンタジーはおまけ程度(工事用シートはこじつけにしか感じなかった)。今までのルートはなんだったのという感じ。
ヨミが弱体化していて仕方ないのかもしれないけど、最後まで一度も復活したりしないし、ヨミが居なくてもなんとかなったような感じだし。なんのためのヨミ?ヨミに人間だった頃の詠っぽさが感じられなかったのも非常に残念。
また、陽介とヒナが結ばれ母と仲直りするのは読み手にとって予定調和。その親子から恋人になっていく過程をもっと丁寧に描いて欲しかったのに...何あの突然のプロポーズ。お互いに(ココ重要)許されない恋に戸惑いつつ、相手の気持ちを確認しながら、戸惑いながら、心が揺れながら、恋人になって欲しかった。うっかり欲情したりしてほしかった。あのタイミングで母親のことを解決する必要はなかった。
他の方の感想を引用します。
私は主人公にひとつ尋ねたいのです、「初夜までに雛桜で何回ヌきました?」 秘められた劣情はスリルとして、読者を楽しませてくれるはずでしたのに。
(くるくすさん: http://erogamescape.dyndns.org/~ap2/ero/toukei_kaiseki/memo.php?game=17190&uid=%E3%81%8F%E3%82%8B%E3%81%8F%E3%81%99 )
しかしヒナに関しては、もう少し絵を頑張って欲しかったなと。どうしても絵ごとに顔が違うせいで「あんなに小さかった」「娘として育ててきた」女の子に手を出しているっていう感情が出なかった。
ただ、夏祭りの後の突然のキスのシーンは本当によかった。エロゲで久しぶりにリアルに息を呑んだ瞬間でした。
あと大人になった各ヒロインにはグッと来ましたね。
他に、時間の経過を感じづらいことが惜しい。
主人公は10年間さまざまな苦労をしながらヒナを手塩にかけて育てた。その娘に手を出すのだからこれは大変なことだ。
しかしその10年間の苦労がどうしても感じにくい。ごく断片的なエピソードで語られるが、そこに継続的な時間の流れを感じられないのだ。
せめてもう1段階、或いはもう2段階程度、成長を追って欲しかった。ヒナだけでいい。もっと子供の立ち絵を用意して、少女が女性になっていく過程を追って欲しかった。
ヒナルートは幼児編と学生編に分かれているが、あるいはこれを3部作にして、もう1段階成長後を描いでみてはどうだっただろうか。(PULLTOPの「夏少女」が近い)
まだ幼さ(子供っぽさ)が残るヒナではなく、大人びたヒナと結ばれたかった。
夏祭りの後にキスを「親子のスキンシップ」で無理やり納得し、正式に親子(養子縁組)になる二人。数年後、さらに成長したヒナと再び恋に落ちる、そんなストーリーが見てみたかったな。
或いはせめて、数年後のヒナとのHシーンがあってもよかった・・・
まとめると、やはり期待値の割に満足できなかったというのが正直なトコロ。
すばらしい所が多いゲームだっただけに、どうにも残念です。
さて。月子ちゃんFDはまだですか?
なんで月子ちゃん攻略できないんですか?一番可愛かったじゃないですか。思わせぶりな描写もあったじゃないですか!!!
かませ犬か!!なんだかませ犬か!!!!!!
・・・・と思ってたら、なるほどコンシューマか。通りで脇役ヒロインにしてはスチルまであって豪華だったわけだ。そういう戦略ね。
月子ちゃんの本当のすばらしさはヒナルートで出てたので、今から10年前に戻って月子ちゃんと恋するifというのは・・・あまりやる気が起きません。