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fqd46qvvさんのスターメロディー ユメミドリーマーの長文感想

ユーザー
fqd46qvv
ゲーム
スターメロディー ユメミドリーマー
ブランド
工画堂スタジオ
得点
70
参照数
215

一言コメント

端的に言うなら、駄作

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

何が問題か。主人公を男性に設定し、ギャルゲテンプレな展開をやろうとした事が一つ。ニチアサ女児アニメに寄せた作風じゃなければ問題は無かったが、主人公が異物として浮いてしまっている。彼個人はよくある無個性型の良識的少年なので不快感は無いのだが、設定上サポート役として必須とされているだけの、居ても居なくてもいい存在。彼を視点人物にした事により、女の子達に守られ、助けたいのに力が無い無力感を味わう事ができる。NTRゲーだったら優秀な人材だったかもしれない。

次にメインシナリオの不必要なまでの重さ。まどマギがヒットして以降、残酷な魔法少女作品が増えた気がするが、本作の重さには抑圧からの解放が無い。延々と陰鬱な展開、不安、一瞬の勝利からの悲劇が繰り返される。具体的に言うと全12話中、2話後半から12話まで重い。

普通の中学生には荷が重すぎる設定
①敵が強すぎて見逃して貰って生き延びる
②敵に倒された人々は、その敵を倒しても目を覚まさない
③ヒロインの一人は学校でいじめ、家で虐待を受けている
④後半まで気付かれる事なく敵に利用され続け、多くのルートで死を迎える存在がいる

とまぁ、どれか一つでも日常に影を落としそうな設定をこんなにてんこ盛りにしたらどうなるか。ギャルゲー的要素として、デートしたり海へ行ったりというイベントはあるものの、プレイヤー視点呑気に遊んでる場合ではなく、風呂に女の子3人が乱入なんてしてる暇があったら特訓しろと言ってやりたくもなる。

迷いを振り切って強くなり大逆転はこういう作品のお約束ではあるが、ほぼ、それでしか勝てない上に戦闘が終わると大抵何かしらの犠牲、不穏な予兆を見せつけられるのはさすがに。抱えている問題が大きすぎて、振り切るには無理があるとも言える。特に虐待されてた子は環境が改善されたからといって即座に明るい性格になれるはずもなく、周囲の応対に過敏に反応して苦しみ続けていてリアルに辛い。

敵を弱くすれば日常パートの説得力は増すし、平穏な日常から非日常への転換も出来た。敵を倒せばみんなが助かるなら、今は辛くても頑張れば何とかなると希望を持てた。重い設定がこれらの希望を打ち砕き、メリハリ無く常に重苦しい上、間に挟まるラブコメパートを空虚なものにしてしまっている。

シナリオ以外も褒められたものではない。戦闘パートは存在価値を疑うレベル。数ターン防御し続けて気力を溜めて必殺技、もしくはひたすら何も考えず攻撃を選び続けるくらいしかやる事がない。たまたま負けたらそのまま進んだのでもしかしたら勝つ必要もないのかもしれない。

音ゲーパートは背景がビートマニアよろしくアニメーションするでもなく、画面の指示通り押していくだけのシンプルなもので、曲数も極めて少ない。

ニュース番組の匿名希望さんボイスの敵が登場した時は乾いた笑いが浮かんだが、概ね声優陣の演技、楽曲には満足している。場当たり的に展開する物語、最後まで遊んで振り返ってみると特に必然性を感じなかった重い設定が足を引っ張り、購入ターゲット層をどこに置いているのかすら分からない作品に仕上がった印象。子供が遊ぶには重すぎるが、大人が遊ぶとシナリオから重さより安っぽさを感じ取ると思う。元々声優陣目的の自分みたいな人間以外は買うべきではない。

長々書いたが洲崎綾さんの悪役が好きなので満足度は高かったです。