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fpattyさんのサクラノ詩 -櫻の森の上を舞う-の長文感想

ユーザー
fpatty
ゲーム
サクラノ詩 -櫻の森の上を舞う-
ブランド
得点
92
参照数
193

一言コメント

次回作前提だが面白い

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

結論だけ先に述べるとシナリオゲーとしてはトップクラスに面白かった。

ただ、序章から1章までだと評価は正直微妙。面白いのは2章から。
明石が自らを中心として櫻達の足跡を作った後に放った「もう俺が作者である必要は無い。」という台詞がとても格好良かった。

3章の個別ルートはどちらかというと本筋の為のシナリオ補完がメインな感じを受けたが、そのなかでも雫ルートはとても良かった。

4章以降の物語終盤に関しては本当によく出来ていて、序盤の微妙だった部分が実は伏線だったりというところも判明していった。
芸術家「草薙健一郎」「夏目圭」の生き様には直哉だけでなく、我々も考えさせられるものがある。

最終章である6章では、直哉が2章の時点では理解って(わかって)いなかった「芸術」について、2章の明石との対比で描かれているシーンが印象に残っている。
一介の美術教師としての物語なら「綺麗に締めたな」という感想なのだが、6章で稟が「まだ、なおくん(直哉)の中で炎は燃え続けている。」という発言をしている。
ここで言う炎は「芸術家としての魂」を示しており、草薙直哉はまだ芸術家として死んでいないことを意味している。
直哉が芸術家として再び作品を描いてこそ、物語が「完結」したと言える為、本作を評価するならば次回作が予定されている未完の作品として扱う必要がある。
単体として作品を作るなら、圭と共に今後も切磋琢磨しながら作品を作り続ければよかったはずだからだ。

単体の作品としても面白く、次回作も絶対に読みたいと思える内容だったため、シナリオ面はシリーズものの第一作として最高の評価として得点を付けた。

続編では、芸術家「草薙直哉」の生き様を見せて欲しいところだ。


曲の話に移ると、op曲「櫻ノ詩」は、エロゲ史に残るレベルの神曲。
BGMも好きなものが多く、特に好きなBGMは「月の眼球譚」。


また、本作の体験版は10時間程度と無料ではあり得ないボリュームとなっている。
体験版時点で一本のシナリオとして纏まっていて周りに勧めやすく、これが本作を評価する上で大きな加点となっている。
先述した「話が面白くなっていくハズ」の2章までプレイできるため未プレイの方は是非とも体験版のプレイをお勧めしたい。

逆に体験版をやりきって面白いと感じなかったら購入しないほうが良いかと。





以下は減点要素。否定的なことしか書いていないので読みたい方だけどうぞ。


・話の難解さ
芸術家の物語という作品の性質上、芸術や哲学の話出てくるのはしょうがないとは思うが、少し多すぎるせいで難解な作品である印象を受けた。
本筋とは関係ない部分はもう少し省き、必要なプロットについてはバカにも分かるようにもう少し丁寧な説明が欲しかったというのが正直なところ。
個人的には、よく分からない部分は右から左に流したのでそこまでは気にならなかったが、全部理解しようとする層はキツく感じそう。

・イラスト面
作画の良いCGと悪いCGがどちらも存在するのが気になった。
テイストの違い程度なら他のゲームにもよくあるし受け入れられるのだが、個々のイラストレーターに明らかなレベルの違いを感じた。


・システム面
2015年発売のゲームとしてはあり得ないレベルで悪い。
開発に10年以上かかっているからか、システム面が00年代後半くらいの印象を受けた。
キャラボイスが極端に大きい等はユーザー側で調整可能なため目を瞑るが、「タイトルに戻る」がconfigにしかないのとかは本当にイライラ要素。
最も気になったのはギャラリーでOP・EDや背景などが見れない点。高水準なだけに非常に残念。
技術的にそんなに難しくないため意図して入れてないと思うのだが、それが本当に謎。

・待たせすぎ
「開発の背景は点数には含めるべきではない」との考えで点数を決める際の考慮には含めていないが、ユーザーを待たせてもなんとも思ってないメーカーとライターの姿勢には少し思うところがある。

・水菜
おい、水菜のHシーンはどこだよ。竿役が健一郎になろうが良いじゃねえかよ。