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folsetyさんのそこに海があって…の長文感想

ユーザー
folsety
ゲーム
そこに海があって…
ブランド
mirage
得点
65
参照数
593

一言コメント

海に流れ着いた少女をザッピングにより多角的に見る話・・かと思ったのだが。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

一言で言えば完成度が不足しています。
キャラクターは決して悪くないし、ザッピング(主人公以外の人物の視点になる)は、そのときそのとき何を考えていたかわかりづらい相手を理解するのにうまく使えます。
特に夕凪(あまりしゃべらないので何を考えているかわかり辛い)、と美奈萌(なぜ同じものを見てあれほど違う理解をしていくのか)などは、ザッピングをしているとき結構面白かったです。

ただ、平和な日常が壊される時がほとんど脈絡なく出てくるのは異常といえば異常だし(まぁ天災も人災も唐突に来るのが当然なのでこれは良いとしても)、終わった後にやや物足りなさも感じました。
しかし、このゲームの大きな欠点は3つ。
一つは話が「幸一・夕凪・碧唯・美奈萌」組みと、「緒方博士・夏海子・理沙」組みでほぼ完全に独立していることです。
確かに前世代3人がいたからこそ(正確には佐川もいるが、彼は完全に脇役)夕凪達姉妹がいるのですが、基本的に二つのグループは独立しています。
前世代のことを語らないのはどう考えてもゲーム的に不自然になるため背景を語るのはいいのですが、二つのグループがかみ合っていないために途中から完全に別のゲームと化してしまいます。(特に美奈萌視点では理沙や夏海子にザッピングできるため、まったく違う話を二つ見ている気になってしまう)

二つめは消化不良なこと。
たとえばなぜ彼女が夢に出てきたか、というストーリー上の問題から、選択肢の意味などゲーム上の問題(選択肢はゲーム中数えるほどしか存在せず、しかも主人公視点ではどの選択肢を選ぼうが結末は変わらない)、など、まだ不完全なゲームといえます。

三つめ、一番気になったことが、オープニングです。
オープニングでは東南アジア系の雰囲気を出しつつ、衣のような服?を着てヒロインたちが儀式のように踊るのだが、これがストーリーと全くこれっぽちも関係していない。
ゲーム中外国に出るシーンは一つもなく、ヒロインも全員、私服or制服or水着(美奈萌のみ巫女の服も着る)位しかきることがなく、オープニングが何を表現しているか、製作者以外理解している人間はいないと思われます。


と、いろいろ書きましたが、キャラクターは良く、ザッピングは効果的、ストーリー上何ヶ所かはいいタイミングでアニメーションが入り、結構楽しんだのも事実です。
誰が何を考えているのかがわかるのは面白いものでした。
他にもよかった点としては、サブヒロインは完全にサブヒロインと化していて、事実上夕凪ルートのみであった点(これは人によってはまずいでしょうが、あの流れでほかのヒロインがメインとなるほうに話が転換するほうがよほどまずいので)
また、あの人が死んだ!?という、流れ上あってもおかしくなくても「まさか本当にやるとはなぁ」といった構成は驚きを与える意味では優秀でした。

一つ欲を言えば、全ルートを制覇した後に、もう一度夕凪ルートが新しい選択肢を伴ってできていたらいい作品になれたのではないかなぁ、と感じました。

とりあえず次の作品のための実験作という印象の作品でした。


あぁ、あと最後に、最大のネタバレでもありえますが、
美奈萌=マナマナです。