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folsetyさんのBALDR BRINGERの長文感想

ユーザー
folsety
ゲーム
BALDR BRINGER
ブランド
戯画
得点
61
参照数
1494

一言コメント

BALDRシリーズで評価すべきはシナリオのレベルの高さとゲーム性。そしてその2つの調和、だったのだが…。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

ゲーム性で言えば「悪くはないがBALDRではない」これが1番しっくり来る。
主に違いをあげるならこんな感じ。
過去作
・多数の武装のうち12個を装備し、状況によって使い分けたり、あるいは多数を組み合わせてのコンボゲー
・敵を全て倒した時点で終了
・武装は使うほど強化され、その強化に応じて新しい武装を開発する
・ストーリーが進むのに合わせて戦闘が発生

今作
・全11武装のうち、3武装を装備。それぞれ選べる武器は決まっている(メイン3種、サブ4種、近接3種)
・非常に敵が多く、近接メインは難しい。基本は距離を取りつつの遠距離戦。
・提示された条件をクリアするまで複数のマップを行き来し、道中・または条件に関する箇所で出現する敵と戦う
・武装はストーリーに応じて前述した11種が手に入る
・装備している武装ごとにレアリティが設定されたアイテムがドロップする
・一本道のストーリーは存在せず、何度でも選べるミッションを選ぶごとにシナリオ&戦闘が展開される

戦闘システム自体が失敗作だとは言わないが、これはBALDRとは呼べないシステムだった。なぜシリーズ最終作でこんな別物にしたのか。今後もチームバルドヘッドが新しい作品を作り続けると明言しているのだから、新シリーズでやるべきだっただろう。別の作品(コンシューマ)でも「名前は継いでいるけど別物になってしまった作品」を見てきているだけに、こういった変更は悲しいものである。
一応ハクスラが好きなプレーヤーには相性がいいとは思う。

シナリオ面で言えば、過去最悪と言って良いだろう。
悪い点をあげると以下の通り。
・ミッション選択式のためストーリーがぶつ切り
・メインストーリーとは別に各ヒロインのストーリーがあるが、過去の身の上話はともかく、戦闘が絡むものはほぼ全て「ドローンが大量発生しました、倒してください」「メンテナンスしたいので、マップ上のコンソールをタッチしてください」と味も素っ気もない上に全員似たようなもの
・色々な組織や人の思惑が絡んでこそのBALDRだったが、今作登場するキャラクターは主人公・ヒロイン11人・敵・黒幕(過去編のみ)だけ(黒幕のみ立ち絵なし)
・当然登場するキャラクターが少ない上にサブヒロイン10人は主人公と最初対立して以降はべったりなので話に広がりも何もない
・サブヒロイン同士の会話がほぼ皆無のため、「主人公・メインヒロイン・サブヒロイン」「主人公・黒幕・メインヒロイン」くらいしか会話パターンがなく、これも世界の狭さを感じさせる

良い点をあげるなら
・メインストーリーはそれなりにBALDRらしい裏のかき方
・サブヒロインを形作った元データは過去作のおそらくBADENDの世界にいた人のため、過去作を別視点・別状況から見られる
・全ての知性体がいなくなった世界という閉塞感は十分感じられる

過去作でプレイしたのは
FORCE→BULLET(リメイク)→SKY→ZERO→HEART
なのだが、時代が進む毎に徐々に強まってきた閉塞感が、極まった感がある。しかし、その閉塞感のために話に広がりが少ない。主人公勢力・敵勢力(1人)・黒幕勢力(過去編のみ)のため、展開できる話がほとんどない。そのため、水増ししたミッションが多く(上記の各ヒロインのストーリー)非常に作業感が強い。
他の人も書いているが、全てにおいてソシャゲ感が強い作りで(アイテムドロップ制、複数ヒロインの絡まないストーリー・ミッション制・複数原画etc)、今後のソシャゲBALDRの叩き台というのが本作の位置付けだろう。
いちばん重要なシナリオライターもそっちに回しているのがまた・・・。

本作は「BALDR最終章」「BALDRであってBALDRではない」と銘打たれているが、その言葉に偽りはない。ゲーム性・シナリオ共に「BALDRの名前はあるがBALDRとはいえない」し、「BALDRシリーズ最後の作品(集大成とは言っていない)」であった。
まあ発表時点で戯画マインとしか思っていなかったし、死に水を取るつもりで買ったので後悔はないが、これが愛したシリーズの終わりかと思うと非常に悲しい。
というか結局バルドシリーズでちゃんと面白いのってFORCEとSKYくらいだったな・・・、FORCE以前はわからないが。

最後にまとめとしてこの言葉を記そう。
「もう・・・終わりにしよう」