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fk14さんのルリのかさね ~いもうと物語り~の長文感想

ユーザー
fk14
ゲーム
ルリのかさね ~いもうと物語り~
ブランド
ねこねこソフト
得点
76
参照数
524

一言コメント

評価すべき点以上に評価を下げる点が多く、総合的にみると良作とは言えない。そこをスルーして光る点に魅了されれば楽しめる作品であるのは間違いない。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

ぶっちゃけパッケージの絵を見てドン引きしていてプレイするという選択肢すらなかったが、
数人の知り合いからひたすら推されて購入。
いいちこ→佑咲→ルリ√2、3、1の順番でプレイ。



まず共通までのシナリオは文句なし。ルリとの距離の縮まり方はうまく書かれていた。
そしてルリ√1とルリ√2の差である、あの時こうしていればというかき分けられたシナリオも
ルリと主人公の考え、そして距離感をよく表現していて確かに評価されるのも納得できた。
ルリ√1の積み重ねた上での距離感の変化は見ていて心が痛くなり、心の底から
ルリと主人公に真の幸せを、ルリ√2のような未来を歩んでほしかったと思わせられた。

また、挿入歌を突っ込むタイミングが素晴らしい。憎らしいほどにうまいタイミングで
入れてくるので、さらに感情移入が進む。歌自体はしっかり聴いていないが
絶妙なBGM的な役割を果たしており、印象に残るユーザーも多かったのではないだろうか。



さて、本作の問題はそれ以外である。

まずルリ√3、改めて考えても分岐としておかしいことになっている。
1と2で見せていたいい兄であろうという主人公はどこへ消えたのか。このルートは
オナホ花瓶のくだり以外は苦痛でしかなかった。オナホ花瓶は正直笑ってしまった。

続いて佑咲√。個人的にキャラが好きだったのでどんなシナリオになるのかと多少は期待していた。
主人公を石段で待ち続ける中、自身との葛藤で揺れ動く心情描写はよくできていた。
が、それ以上にルリの不自然な程の精神的成長だったり、佑咲を認識して間もない主人公が
長い付き合いだからと連呼している部分が嫌というほど目についてしまった。
商店としての付き合いはあっても、お前つい最近存在を認識しただろうと何度突っ込んだことか。
個人的に一番残念に感じた√だった。

いいちこ√はまぁこんなものだろう。主人公が肩入れしてしまう理由をしっかり描写しており、
シナリオ単体で見れば及第点と言える。本作のシナリオとしては完全に蛇足レベルだが。
ルリを割と放置しているのが目についたのはもう突っ込まないことにする。



続いては絵。個人的に絵はそこまで好みではなかったが、そこは個人による好みなので
特にそれで評価を下げるということはしない。
ただ、ルリの立ち絵、イベントCG。いくらなんでも、6歳と14歳で立ち絵や着る服が
そのままなのは手抜きとみられても仕方がない。あまり身体的に成長していないという
描写もあったが、さすがに6歳から8年間ほぼ同じ体型は人間の構造的にあり得ないし、
小学校1年生と中学校2年生の服装が同じなのも普通あり得ない。いや、一応ブラは着けていたか。



そしてシステム。どうやら修正パッチを充てるとCGが回収できないということらしいので
充てることなくプレイしたが、主人公の漢字が間違っている個所もあったが、それ以上に
名前欄で主人公となっている個所の多さにがっかりである、途中から慣れたが。
細かい突っ込みにはなるが、主人公の家が引き戸なのにドアを開けるSEが使われる、
服を散らかして寝ていたルリが寝ぼけて起きた立ち絵で服をしっかり着て、
その直後服を着ろと言われるなど、デバック不足が目立つ場面も多くみられた。

また、分岐の段階で同じテキストを何度読まされるのか。特に他のルートに入ろうとする度に
主人公の親、ルリの両親が死ぬ場面をスキップできず再び読むのは面倒だった。
初見だとあのシーンは心に来るものがあったのだが、そう何度も見せられるとさすがに飽きる。

更に、私が最低限どちらかは追加してほしいボイスカットとバックログジャンプがない。
10年前ならともかく、割と最近のゲームにも関わらず両方搭載されていないのは非常に残念だ。
さすがに同じねこねこのスカーレットのような古いゲームなら私もそんなことは言わない。



総評としては、ルリ√以外の部分にお粗末な部分が多く、良作と言えないもったいない作品。
もっと丁寧に作りこまれていたら、それこそ文句なしの良作になりえただろう。