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fk14さんのもののあはれは彩の頃。の長文感想

ユーザー
fk14
ゲーム
もののあはれは彩の頃。
ブランド
QUINCE SOFT
得点
79
参照数
1663

一言コメント

ご都合主義の塊である琥珀を除けば想像以上にシナリオが面白かったが、絵から想像するようなイチャラブはないに等しいので注意

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

【シナリオ】
絵と世界観のみ見て大して期待せず予約購入したが、予想に反してまさかの練りこまれたシナリオゲー。
数ある盤面のうちの一部である共通√では伏線を散りばめしっかり回収、
盤面を生かした展開で先もなかなか読めず大いに楽しめた。
最終局面で御都合主義が入り混じる展開になってしまっていたのは残念だが、
双六世界をトータルで見ればなかなかの完成度だったのではないだろうか。

ただ、主人公と物部の関係に関しては理由が弱く感じた。
シナリオの根源となる設定が強固でない為、ラストの説得力が弱くなってしまった点は残念である。

ちなみに、一本道シナリオにありがちな各キャラの√がおまけになる現象が
この作品も当たり前のように当てはまる。
特に悲惨なのは双六世界で恋仲になることのなかった京楓。
急にお互いの大切さに気づいてセックスしたと思ったら即終了という、
最もぞんざいな扱われ方をされていたヒロインと言っていいだろう。
ヒロインと恋人としての絡みに期待していた私含むユーザーにとっては、とても残念な作品となっている。
FD作る前提の作品というのは正直好きではない。

ご都合主義の塊として特に目に付いたのは琥珀。
なぜか人間のまま現実に戻り、性、衣食住を含む人間の知識が平然と身についている。
お前ネコだったのになんで普通に人間として生活してるんだよ、と。



【キャラ】
それぞれのキャラが物語において意味を持っており、
捨てキャラが存在しなかった為、全員が存在感を示していた。
当初は琥珀と縁、攻略対象が逆ではないかとも思っていたが、大誠の最大の見せ場をそこに用意しているとは……

好きなキャラを挙げるとすればクレア。
といっても、ヒロイン達の真の魅力が発揮されるであろう個別ルートが悲惨なことになっているため、
全員に入り込めなかったのは非常に残念である。



【ボイス、BGM】
ボイスはそれぞれのキャラの喜怒哀楽を表現し、物語に華を添えていたと思う。
BGMは前半は和風テイストを前面に出していたが、後半に向かうにつれて
それが薄まっていったのは少々残念だった。物語の展開上しょうがないのだが。
ちなみにエロシーンのBGMも和風テイストである。特に意味はないだろうが。


【絵全般】
そもそも絵と雰囲気を見て買ったわけなので、ここに関しては満足。
みさきの和服が地味にエロい、よい。
背景もなかなか力が入っており、ここも文句なし。
個人的には、主人公家のリビングの掛け軸で遊びまくっているのが面白かった。
はいバリア



【システム】
目立った誤字脱字、バグ等は特に見受けられなかった。
ちなみに、エロシーンを見るまでにだいぶ時間がかかるため、
救済処置として開放ボタンが用意されている。全部終わってから気づいた。



【総評】
キャラゲー的要素を期待していたユーザーは間違いなくがっかりしそう作品だが、
シナリオは十分面白いといっていいのではないだろうか。
FD……もし出たとして、買うかは少し迷うところではある。